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517:進まぬ技術開発

【第三層群屋上庭園】


「知識はあります。本でも論文でも教科書でも。でも技術が無いので工業製品を作ることが出来ません。なかなかこの問題は解決出来ませんね。この世界にも江戸時代並の職人は居ますが、近代工業となると難しい問題が山積みです。」

「文明開化は容易ではないな。」

「分冊百科で入手可能な工作機械は、卓上NC旋盤と3Dプリンターで、いずれも小さい物です。3年前、これを元に工場サイズの工作機械を作るとともに、人材育成のため大宮市の大宮工業学校を複製召喚、その後、川口と川越の県立工業学校も追加していますが、図書室以外は備品が無い状態で始めました。残念ながら、現状、結果は満足できるものではありません。」

「備品もそうだが、教師が足りないのが致命的だな。」

「はい。ダンジョンモンスターもマスターの眷属も召喚可能数自体が足りませんからね。一通り最低限の数だけ召喚したのが2年目の夏ですから、3年あまり前です。いくら修羅が人間より頭が良いと言っても、3年で教育する側に廻るのは難しいですね。」

 マリーは生まれつきの(ナチュラルボーン)差別者(レイシスト)

「普通のダンジョンは、ボスモンスター以外は生きていない名無しで、そもそも知能がある者は少数で良いから、仕様として名前付き(ネームド)モンスターの大量召喚は想定外なんだろう。」


「異世界では実業学校は5年(高等小学校卒なら3年)ですが、この世界は小学校が未整備で算数や理科の基礎教育が不十分ですから、5年はかなり詰め込みですね。多くの生徒は6~7年必要でしょう。元からの職人に工作機械を使わせることは可能ですが、きちんと生活出来る職人はわざわざ移住しませんから、数が揃いません。」

「技術者の量産まで、あと数年か。もっと教師を大量に入手して学校を増やすことが出来れば良いが。」

「異世界日本で、御雇外国人が3,000人弱。それくらいの数を用意出来ればだいぶ違いますね。無理ですが。」

「無理だな。しかも完成品の輸入も出来ない。」

「異世界なら、アメリカは全ての工業製品を潤沢に生産していますから、外貨の問題さえ無ければ工業製品は何だってアメリカから輸入すれば済みます。ですが、このダンジョンでは備品や分冊百科等で入手出来ない工業製品は全て作らないといけません。組成と形状が単純な部品はダンジョンの機能で生産出来ますが。」

「精度が今ひとつ。だな。鉄パイプによる原始的火箭(ロケット)は生産出来ても、銃や大砲は困難だ。」

「わたしが作るため、いわゆる『職人技』の精度は出せませんね。生産量の方は世界樹の演算能力である程度自動的に処理できますが。」


「あるいは、何かしら精密加工が可能な魔法でも持っているダンジョンを見つけ出して制圧するか。魔法はダンジョンから出たら消えるけど、魔法で加工した結果は物理法則に合致していれば残るだろ。」

「確かに、固有法則はダンジョン内でのみ有効ですが、固有法則の産物はダンジョンから出しても残りますね。ベトン級戦艦はダンジョン影響圏から出たら泥に戻りますが、アスィエ級とアッチャイオ級はただの鋼船に戻るので影響圏外でも使えますね。ですが、現在の所、工作制度的に江戸時代の腕の良い職人を越える加工系の魔法は知られていません。」

 もちろん、設計自体に工学的問題があり、鋼材の強度が足りなければ壊れる。

「確かに『魔法で動く絡繰り人形』は技能的に優れている訳では無いな。」

「結局、ただのゴーレムですからね。額に平仮名で『しんり』と書いておけば固有法則によりダンジョンエネルギーで動く。というだけです。ロボットみたいに電力によってモーターや高分子素材を使い動く訳ではありません。」

 ヘブライ語なら1文字消せば停止するが、日本語なので2文字消す必要がある。なお、英語をはじめ「真理」の一部が「死」にならない言語ではゴーレムは動作しない。

「このダンジョンのロボットはゴーレムでは無いな。」

「図書館の蔵書管理用のロボットですから、電気で動きます。そもそも商店の商品管理システムの応用ですが。」

「ああ、スーパーで適当に商品を袋に入れて持ち出せば、自動的に口座から引き落とされる、あれか。」

「そちらは図書館だと貸出し管理ですね。商品管理はロボットが店内を撮影し、在庫数を調査するものです。」

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