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516:諸悪の根源

 図書館都市ダンジョン。砂漠の中にそびえ立つ天にも届く塔と地平線まで拡がる農地を持つ農業ダンジョン。ダンジョンマスターである図書館猫獣人のマスターと、名前付き(ネームド)モンスター、紫蘇(ファミリー)ロスマリヌス・オフィキナリス、ローズマリー修羅のマリーは、今日もダンジョン最上層で何年も進まない話をしていた。



【第三層群屋上庭園】


「つまり、名前付き(ネームド)名前有り一般(ネームドモブ)モンスターや眷属の設定上の学歴の基準が、最初に召喚した大学図書館、この第三層群となるため、司書課程が無く司書を入手出来ません。おそらく当初の仕様ではチュートリアルのどこかで図書館講習所そのもの、または司書過程を持つ大学の図書館を複製召喚出来たと思われますが。」

 そもそも、最初の最初にダンジョンマスターがlibrarian(司書)を競走馬の名前と誤認した挙げ句、ヨシ!と、ダンジョンシステムを誤作動させたことは誰も知らない。

「急いで医者が必要だったから仕方ないが、急ぎすぎたか。」

「当時の情勢では仕方有りませんね。この第三層群は、入手が容易な型落ちした比較的古い(21世紀初期までの)大学図書館としては異世界日本で2番目に床面積が大きく、私学を除く理論的に召喚可能な図書館としては最大。かつ帝大ほど知名度が無いため当時のダンジョンエネルギーでもぎりぎり入手可能、さらに医学部を持ち医者の召喚も可能。という理由ですね。」

「私学は権利的な問題もあり理論的に入手出来ず、帝大は当時はダンジョンエネルギーが到底足りない。だったな。」

「選択肢はありませんでしたからね。ついでに言うと、第三層群は地上10階地下3階で2.7万m2、東京帝大総合図書館は地上5階地下4階で2.4万m2。当時は建物の高を稼ぐ必要もありました。ちなみに、私学なので入手出来ない日本最大の大学図書館は、地上5階地下3階で2.8万m2ですね。」


「そして、ダンジョンの仕様として異世界転生が出来ないと。」

「正確には記憶・知識を保持した転生ですね。輪廻転生は、おそらく異世界とも普通に行われています。このダンジョンで召喚出来るのが修羅と畜生のみであり、どちらも記憶・技能を保持した輪廻転生に向きません。つまり、修羅は最初は脳が無く、畜生も脳容量が不足しています。」

「人間を名前付き(ネームド)モンスターとして召喚出来るダンジョンを探す。という訳にも行かなかったんだよな。」

「人間を召喚可能な『図書館ダンジョン』などが必要ですね。商都梅田は『鉄道により死亡した鉄道員』を異世界『転移』、正確には元の世界には死体が残り、こちらの世界で物理的な肉体を生成させますが、鉄道員以外は無理です。」

「鉄道で? トラックではダメなのか。」

「ダメですね。商都梅田は、そういう仕様です。確かに、普通は異世界転生と言えばトラックですが。」

「これ、例えば『図書館により死亡した図書館職員』なんて居るのか。」

「天災や戦乱では無く直接的に図書館そのものが死因となるのは、おそらく労災、集密書庫の操作ミスや脚立からの転落など、それこそマスターの得意分野かと思われます。その点も考慮した最初の設定だった可能性もありますが、そもそも転生も転移も、このダンジョンでは出来ない以上、今は考慮する必要は無いでしょう。」

 飲酒して溺死するのも不安全行動だが、「労災」では無だろう。

「難しい条件ではあるな。」

「フマーユーンは『図書館により死亡』ですが皇帝であって図書館職員ではありませんし、ヒュパティアはカルト教団による殺害なので該当しませんね。ついでに、どちらも複数の言語を使用できますが、わたしと共通のものは無いので会話出来ません。」


「マリーさん、このダンジョンは民間の図書館は入手出来ないが、商都梅田は箕有や阪姫など私鉄の駅や電車も入手しているが、違いがあるんだろうか。」

「その辺はダンジョンにより違うのでしょう。海豚池も時代は制約されますが民間施設も複製召喚しています。一方、このダンジョンでは民間の建物は、公共図書館等を建物内に含む場合のみ複製召喚出来ますね。」


「司書の件に戻ると、残された唯一の方法が死体憑依召喚だが、やり方が不明と。」

「邪法に頼らずとも、このダンジョンが『図書館として完全には機能しない』だけですから、無理に方法を調べてはいませんね。」

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