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番外:月世界征服計画

「お師匠様、王都から使者です!」

 白く塗られた錬金術師の塔に弟子が飛び込んできた。昼間に月を観察するため、少しでも大気の影響を軽減するもの。

「慌てるな。」

 錬金術師が塔から降りてくると、1人のchevalier(騎士)が従者も連れずに待っている。

「これはシュヴァリエ(騎士)殿、こんな田舎に何用で。」

 騎士が従者を連れていない、ということは、徒歩の従者は同行できない急ぎの用事。ということ。

「単刀直入に言おう。l'Hexagone(王国)lune()の征服を決定した。」

「月とな。月はあまりにも遠いぞ。ガバチョ(豚喰い)でも征服したほうが早いだろうに。アングリーズ(下等民族)ボッシュ(亜人)は手強いから面倒だろうが。」

「自分は文字は読めないゆえに、詳しくは書状を見て欲しい。」

 騎士は1枚の羊皮紙を差し出す。正確には羊では無くダンジョン産の魔獣のドロップ品。

「どれどれ、王国は、月が極めて重大な潜在的脅威と認定した。そなたが王国学士院に提出した論文によると、月では何かが起きている。学士院の推測は、何らかの未知の新技術を持つ政治勢力が誕生した可能性が高い。ゆえに『先制的自衛権』による『予防戦争』が必要と……。」

 錬金術師は頭上の月を見上げる。肉眼でも問題の明かりが見えるような見えないような。

「王国が、より優れた望遠鏡を開発または購入するための資金を提供するので、月を詳細に観測し報告するように。という命令だ。」

 そう言うと、騎士は馬に乗らずに曳いて帰って行った。馬も相当疲れているのであろう。


「お師匠様、まず、どうやって月に行くのでしょう。」

「さぁ。見当も付かぬ。気球では遠すぎるし、もしドラゴーヌ()を飼い慣らしたところでOubliette(ダンジョン)を出ることはできまい。あのような大きすぎるモンスートル(怪物)はダンジョンから出られない。だが、それはこちらの仕事では無い。」

「用意すべきなのは望遠鏡ですか。」

「そうだ。だが、望遠鏡のレンズは大きければ大きいほど指数関数的に作成難易度が跳ね上がり、しかも、どうやっても『にじみ』を解消できない。理論上は鏡を使う望遠鏡もありえるが、あれはダメだ。鏡を正確な『放物面』に研磨した上に正確な位置に穴を開けないといけない。さて、どうするか。」

 鏡を使うのは、いわゆるグレゴリー式望遠鏡。この世界でも数学的な理論は存在するが、制作はうまく行っていない。


「いっそ、月に教えて貰うとか。」

「狼煙を送るにせよ相当大規模でないと月からは見えないし、そもそも合図というのは事前に意味を決めておかないと無意味だ。さらに月人の言葉も分からない。」

「そもそもの問題として、月を征服できるのですか。」

「そこは大丈夫だ。月人は人間では無いから弩で撃っても構わないが、逆に人間を弩で撃つことは神に禁止されている。そもそも神は人間のために世界をお造りになられたと『本』にも書いてある。亜人やましてや月人のためではない。」

 ちなみに王国には本は1種類しかない。

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