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514:外の世界、世界の外

【第259層群・プラネタリウム】


「マリーさん、他の天体のことはだいたい分かった。だが、この世界のほとんどは不明なんだな。」

「はい。現状ではそうですね。」

 マリーはそう言うと、この世界の映像を拡大した。このダンジョン付近のみ表示され、ほとんどは灰色。

「この星系に居住可能天体は5つ。異世界の文明は5つだったか。」

「文明は4つか5つですね。中華文明、インド文明、中近東文明、西欧文明、あえてまとめるならアフリカ諸文明です。」

「もし、天体と文明が一対一対応していて、この世界が中華文明なら、世界の裏側は中国やベトナムということだろうか。」

「さぁ。インドも中近東もアフリカも暑い地域ですが、暑い惑星は土星だけですね。土星が暑い砂漠、この世界と月が涼しい砂漠、木星が涼しい多島海、金星が冷凍庫です。そうなると、文明と惑星は対応していなさそうですね。」


「なら須弥山世界的に見たら?」

「暑い南贍部洲(インド)が土星、東勝身洲(中国)がこの世界で、月は西牛貨洲(中近東)、木星が範囲外の欧州になって、寒い金星が北倶盧洲(モンゴル草原)、さらに少陽の惑星がアフリカや新世界……その方が対応関係はきれいに見えますが、何とも言えません。それこそ他の惑星どころか月すらベムの巣窟かもしれません。」


「ともかく、技術的には月も世界の裏側も到達不能というのが問題だな。」

「ダンジョン付近ならともかく、世界の『裏』を観測するとなると衛星軌道に乗る必要が出てきますから、世界の裏も月や他の惑星も技術的難易度は大差無いでしょうね。」

「それで結局、振り出しに戻る。か。」

「軌道に乗るためには第一宇宙速度、8.3km/sが必要ですが、転送陣は時速600km、真空中でもせいぜい1,000km/h、0.28km/sと桁違いどころか3桁違いの運動エネルギーが必要です。ただ、高さ142km分の位置エネルギーの節約効果は大きくなります。」

「やはり、既存の火箭(ロケット)より桁違いに高性能のロケットが必須か。」

「ジュール・ヴェルヌの『地球から月へ』では大砲を使用しましたが、大砲の加速度では人どころかカメラすら潰れます。労農ロシアの世界初の人工衛星は重さ100kgありませんでしたが、300t近いロケットが必要でした。」

「重すぎるか。」

「重すぎますね。大きすぎて転送陣に収まりません。」

「衛星の小型化が必要だな。」

「機能を割り切って、普通のカメラで地上を撮影しダンジョン上空に来たらデータを送信する。10日かそこらで電池が切れて廃棄。とするなら、1kgかそこらの小型衛星で十分と思われます。高度300km程度の超低軌道なら、100m程度の物を識別可能でしょう。偵察衛星としては全く不十分ですが。」

「ただ、衛星もロケットも未だ影も形も無いな。何十年、いや技術の蓄積が必要なので何百年かかるか。」

「可及的速やかに。ですね。ダンジョンの機能か図書館の備品を使用できれば短縮できるはずです。ダンジョン内が火気厳禁なのでロケット製造中の爆発事故が避けられる。というのは利点ですね。」

「ただ、打ち出してダンジョンの影響圏を離れたとたんに爆発四散して、高度142kmからロケットの部品を地上にぶちまける。という危険はあるな。」

「上空で爆発したのなら、大気圏でほとんど燃え尽き、残りはダンジョンの機能で対処できるでしょう。別の異世界では鎌倉に墜落しましたが、あれは地上からの打ち上げ失敗です。」

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