510:金星・白銀に輝く氷の惑星
【第259層群・プラネタリウム】
「居住可能惑星の一番外側、白い惑星なので『金星』と呼ばれます。五行の金行の色は白ですね。1年は1.8年と異世界の火星程度、太陽光は異世界地球の1/3。ほぼ完全に凍結していますが、酸素を含む呼吸可能な大気を持つため、おそらく何らかの酸素供給システムを持ちます。」
「ダンジョンだろうか。」
「でしょうね。限られた火山地帯を除き植物が生育できる環境ではありませんが、ダンジョンがあるということは、やはり知的生命体が生息していると思われます。」
「つまり、月人・土星人・木星人・金星人は、ほぼ確実に存在すると。」
「はい。そうなります。この世界と同じ生物か、全く異なる種族かは不明ですが。なにしろ異世界でも地球外文明は発見されていませんから、前提となる資料が何もありません。」
「異世界火星より太陽光が弱いとなると、温めるのも至難だな。」
「何より、スノーボールプラネットは反射率が高いため、何かしても余計に温度が下がります。温室効果の強化だけでは溶けないでしょうね。そう考えると本格的な入植は困難かもしれません。」
「それでも天体が4つあるなら十分か。」
「あと、木星、この世界、土星、金星の1年は、0.75:1:1.3:1.8年、つまり隣り合った惑星の公転周期は全て3:4の軌道共鳴ですね。」
「この世界で知られている惑星は5つで、他に火星と水星があったはずだが。」
「それらは地球型の惑星ではありません。この世界では、別に赤くは無い『火星』と、他の惑星より暗いだけで別に黒くは無い『水星』が知られていますが、これらは外惑星の木星型ガス惑星と天王星型氷惑星で、きわめて低温です。ちなみに公転周期は火星が12年、水星が18年なので2:3です。」
「そしてさらに外側に海王星みたいな……。」
「無さそうですね。この星系は『少陽』との連星系ですから、あまり遠い惑星は軌道が安定しません。外側の水星が太陽から約10億kmと異世界の土星よりも内側ですが、それより外側だと少陽の影響が強くなります。つまり、この星系は彗星がかなり少なくなります。」
「逆に内側は?」
「木星軌道が1.2億kmと異世界の金星より少し外側ですが、それより内側にある惑星は異世界の水星よりもずっと恒星に近いため観測困難で、『惑星』としては知られていません。ですから、この世界の惑星は7個ですが、5惑星と太陽・月・少陽を指して八曜とか八卦とか言いますね。なお、サイズだけなら、外惑星の衛星には惑星サイズのものもあります。」
「でも、住むには寒すぎる。」
「おそらく石油の海があるので採掘できれば役立ちますが、この世界まで運んでいては到底採算が取れませんね。」
「またしても『服を買いに行くための服が無い』か。」




