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051:防衛作戦(2日目午前)

【コアルーム】


「敵の到達は明日夕方。このままダンジョンで籠城したら、せっかくの畑が荒らされてしまいます。そこで、不本意ですが城壁を作ることで、畑も守ることにします。」

「マリーさん、植え付けが終わっている丘の部分だけ、それとも整地中の丘の周辺も?」

「丘の麓部分を城壁にすれば、土留め(どどめ)も兼ねますから将来も無駄になりません。丘の部分だけにします。」

 マリーは地図の丘の麓にざっくりと円を書き込む。

「全長6km程か。」

「6km238m18cm5mm……でも、丘の直径は正確に2kmではありませんし、完全な円形でも無いですから……いえ、ここは昔のバグダードみたいに城壁は正確な円形にしましょう。丘を囲い込むなら直径2kmより少し大きいので、全長は約7kmですね。」

「そんな長い城壁、警備員が多数必要だぞ。召喚出来るのか。」

「いいえ、司書がオリジナルモンスター『紫蘇』に置き換わったため、同様に牛頭馬頭であったと思われる警備員も召喚出来ません。人手を要しない方法が必要ですね。いっそ、攻城櫓すら届かない高さにするとか。」

 もちろん、司書も警備員も事務職も牛頭馬頭では無いはずだったが、既に忘れ去られている。



東町あずまちょう】ダンジョン東側・丘陵の麓


「城壁を作ると決めても、木製(チーク材)の本棚を裏向けて並べても、見た目は木だから壊せそうに見えてしまいます。守備隊の人数が少ないので、城壁に寄られるのは困る。登れそうに見えない石垣が一番良いのですが、石なんて召喚できたかしら。ブロック塀なら、それっぽく見えるでしょうか。いっそ割高だけど間知石けんちいしの擁壁にするかな。」

 悩むマリー。間知石というのは、よく道路脇などにある四角い、あるいは菱形の石積み。

「マリー、別に石垣を作らなくても、丘の麓の急斜面を均してダンジョン構造物にするだけで、敵は登れなくなります。むしろ、石垣だと忍者が石の隙間に苦無くないを差し込んで登ったりできますが、ダンジョン構造物になった斜面は崩せないので足場を作れず、忍者でも登ることが出来ません。」

「土の堤防を作る。ということですか。」

「実際、関東では普通、城は土塁です。召喚しないまでも遠方から石を運ぶのは大変ですから。土塁は通常45度ですが、ダンジョン構造物なので崩れる心配は要らないので、もっと急角度も可能でしょう。」

「急角度……いっそ中国の版築やレンガ造りの城壁みたいに垂直にするとか。」

 マリーは、ダンジョン構造物の垂直な土壁の上に本棚を木塀のように並べた城壁を試験的に作ってみる。麓には空堀を配置。

「これ、30mくらいありそうですが、地震でも大砲でも壊れないからと言って、やりたい放題ですね。」

「ドラゴンでも攻めてくれば別ですが、ダンジョンの固有法則無しでは飛ぶどころか自重で潰れます。あとは、明日の夕方までに丘の廻りに城壁を延ばしていくだけですね。これ、もし石を召喚していたらダンジョンエネルギーが足りなかったでしょう。」

 マリーが言うように、ドラゴンが飛行したり炎を吐くのはダンジョンの固有法則であり、例え名前付き(ネームド)モンスターでダンジョンから出ても物理法則には逆らえない。


「でも、こちらから何も反撃しないと、仮設の櫓どころか梯子で城壁を乗り越えることが出来てしまいます。騎士団は20人しか居ませんし、警備員も召喚出来ませんし、入植者から防衛部隊を募集しないといけません。」

「ラージャ、存在しない火縄銃はさておき、入植者のみなさんに弓矢とか使えます?」

「旗指物を動かして多数の守備部隊が居るように見せたり、物見ものみが来たら石を投げる程度で十分しょう。あと、ミントの指示でロケット弾の向きを調整するとか。」

「ロケット弾も命中率低いですからね。どう使うか。使いどころが肝心です。何万かあればスターリンのオルガンみたいに一斉に撃てば良いのですが、今の数では、アメリカ国歌みたいに敵陣は健在。ってことになります。」



【ダンジョン前の畑】


「それで、書記長様は拙者せっしゃに協力を頼みたいと?」

 マリーは、入植者達の代表、岡田太郎左衛門に協力を要請する。

「はい。」

「しかし、拙者せっしゃは武士にはござらぬゆえ、槍働きは出来ませぬが。」

「確かに、兵農分離へいのうぶんりが世の習いとはいえ、相手が小荷駄こにだを徴発し、冒険者までかき集めて来た以上、夫役ふやくをお願いするしかありません。戦争は武士だけでは出来ません。皆さんにも頼みたいことはたくさんあります。」

 なお、この世界、武士以外は、村に住む「百姓」と都市に住む「町人」からなるが、中国の都市戸籍と農村戸籍ほど厳格では無い。村に住む商人は「百姓」、町に住めば「町人」となる。

拙者せっしゃは構わないし、せっかく自分の畑が持てそうなのに、断る者は少ないだろう。ただ、そういう者が居たら、黙って立ち去ることを認めて欲しい。」

「戦わないなら別にダンジョンの中に居れば良いのです。祝勝会への参加は出来ますが恩賞が出ないだけです。……それでも逃げるというなら、入間いるままでの護衛は付けられませんが、それで良ければ。あと、東に逃げるのは禁止です。」

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