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509:木星・謎の多い海を持つ惑星

【第259層群・プラネタリウム】


「外側の惑星。この星系では唯一海を持ち青色、つまり五行の木行の色なので『木星』と呼ばれますが、異世界の木星とは無関係です。1年は1.3年、太陽光の強さは異世界地球の半分弱で異世界の火星程度と当然ハビタブルゾーンの外側ですが、涼しい惑星とはいえ、なぜか異世界の火星よりはかなり暖かい惑星で、海も凍結していません。」

「人為的なんだろうな。」

「位置的に温室効果を考慮しても氷点下のはずですからね。おそらくダンジョンの影響と思われますが、手持ちの観測手段ではそこまでは分かりません。あまりに遠いので望遠鏡でも文明が存在するかすら不明ですね。」


「海洋惑星だったな。」

「陸地もある『多島海世界』ですから、天文学的な意味での海洋惑星、深さ何十kmもの海を持つ惑星ではありません。『海を持つ地球型惑星』ですね。ちなみに月は2つありますが、異世界地球のように大きなものではありません。」

「この星系で最も居住に適した惑星だな。文明があるかどうか、いわゆる『火星の運河』みたいな物は見えないか。」

「859層群の70cm望遠鏡でも不可能ですね。異世界の火星の運河も、ぼんやりした模様が脳の画像処理でそう見えただけで、仮に実際に火星に運河があっても手持ちの望遠鏡では観測は出来ません。」

「火星人が居るか居ないか確実に知るには、直接探査機を送り込むのが一番か。」

「この世界では『木星人』ですね。もし彼らが大々的に電波を使用していれば、大型の電波望遠鏡を作れば観測できます。月ならば第三層群屋上のアンテナで十分ですが。ただ、電波を多用していないなら、直接偵察衛星を送り込むのが早いでしょうね。」

「でも、現状では難しいと。」

「はい。概ね20世紀後半水準の技術セットが必要です。また、宇宙開発には莫大な資金と人材が必要ですから、おそらく、人口が億を超える経済圏が必要ですね。異世界でも20世紀に火星へ探査機を送り込んだのは、労農ロシアとアメリカだけです。」

「月みたいには行かないか。」

「マスター、月どころか、この世界の衛星軌道に乗るのも、もし全ての技術の自主開発が必要なら何百年かかるか分かりません。明治維新は欧米から完成した製品や技術を輸入したわけで、別に技術をゼロから独自開発したわけではありませんからね。図書館の知識と備品でだいぶ短縮はできるでしょうし、何らかの有用なダンジョンが見つかれば、現実的な時間で宇宙に到達出来るとは思いますが。」


「最適かどうかはともかく、正解が分かっているのは強いな。」

「『知は力なり』とも言いますね。フランス(フランシス)煙肉(ベーコン)と言いながらイギリス人ですが。」

「無知は力なり。という言葉もあるな。」

「そちらは、同じくイギリスのジョージ・オーウェルですね。若くして亡くなり早くに著作権が切れたので、いろいろと引用されています。このダンジョンの制度は『1984年』を批判しつつも参考にしていますし、この世界の畜生も、おそらく『動物農場』の影響を……。」

「つまり、マリーさんがビッグ・ブラザーという訳か。ダンジョンの監視機能がテレスクリーンと。」

「監視はできますが、テレスクリーンと違って映像の投影はダンジョンの機能としては出来ませんけどね。」


「本を参考にすれば、試行錯誤の過程を大幅に短縮出来るな。」

「何より『概念』そのものがちゃんと存在する。というのが大きいでしょう。創造力というのは普通の人は持たない希少能力ですからね。限られた天才以外は全てが自伝又は二次創作です。要するに、普通の人は自分が体験したか、どこかから引用した事しか書けないので、読書感想文を全部自分で書こうとしたら苦労する。ということですね。」

「つまり、発明でも既存のものの改良は出来ても、全く前例の無い物の発明は難しい。と。」

「はい。特殊な先天的才能を持つ人にしか出来ません。例えば、小笠原プロダクションの爆轟回転(回転デトネーション)発動機(エンジン)も、双子天才航空技師の島田安子・定子姉妹が開発した。とされていますが、あれもアメリカの先行研究を模倣しただけですからね。」

 小笠原プロダクションは、映画の撮影所を転用して飛行機を作っていた会社。


「日本人には想像力が無い。だったか。」

「あくまでも統計的な傾向に過ぎません。とある欧州の建築家の言葉を現実に即して改変するなら、雑に分けると世界には3種類の民族が居ると言われます。まず文化創造種、オリエント諸民族やローマ人、中国人などですね。創造力を持つ人が多く、全ての文明は彼らが生み出しました。例えばアメリカでは科学者や起業家にはユダヤ人が多くいますね。日本でも経済・科学・芸術では中国人が活躍しています。」

「それは良く聞くな。」

「次に文化追従種、大抵の民族が含まれます。そして最期に文化破壊種。要するに蛮族、例えばゲルマン人ですね。世界大戦を起こしたのはドイツとオーストリアですから、ヴェルサイユ条約によりドイツとオーストリアは解体され、特にドイツ、つまり山オランダ諸国は、それぞれに反抗的で面倒な植民地を持たせることで国力を削られました。トルコは不幸な巻き添えですね。」

「いっそ人類のためには根絶した方が良かったのか。」

「ドイツにも人類史に残る偉人は多々いますからね。誰もが知っているアインシュタインとか、航空のリリエンタール、文学ではカフカやハイネ、精神科のフロイト、経営学、結果としてはろくでもないことになりましたがマルクスとか。純粋培養された純血民族ならともかく、現実には全てがダメなんて事はありません。」

「比率の違いだけと。」

「人間なんて所詮はたった1つの種に過ぎませんから、民族の違いなど、わたしから見たら大したことはありませんね。修羅だと、自称『高等種族』の蘭(ファミリー)とか、自称『最も進化し、最も分化している一族』と言いながら頭に花が咲いて(頭花)いる菊(ファミリー)とか多様です。畜生に至っては34億種類いるそうです。」

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