503:ダンジョン構造物そして
【第三層群屋上庭園】
「二番目に、ダンジョンの機能として入手可能なダンジョン構造物。比較的単純かつ均一な組成の物質なら、相応のダンジョンエネルギーを投入すれば生成可能です。つまり、石壁は生成可能ですが、木材は死んでいても生成出来ません。木製の本棚はダンジョン構造物では無く備品ですね。」
「妙な制約だな。いくら、この世界では木材は貴重品とはいえ、冒険者がダンジョン構造物を壊すことは出来ないから、ダンジョン側が意図しない限り木製品の材料には出来ないはずだ。」
「それが、ダンジョン構造物の解体は案外簡単にできていますね。要はダンジョン影響圏から運び出せば済みます。」
「だからベトン級戦艦は運用が制約されると。」
「ダンジョン影響圏から出たら狸の泥船ですからね。あと、転送陣や罠などダンジョン特有の機能もその仲間ですね。このダンジョンでは『罠』は施錠や警報装置になりますが。」
「そのダンジョン『らしい』物だけが入手出来るんだったな。」
「はい。図書館に落し穴はあってはなりませんから、そういう物はダンジョンのシステムとしては入手できません。ダンジョンモンスターも同様ですね。そのダンジョンに居て『不自然』なモンスターは召喚出来ません。紫蘇科修羅とマスターの眷属も、図書館に全く行かないような人種は設定できません。もっとも、異世界の図書館は職員も利用者も『図書館猫』のような例外を除き基本的に人間しか居ない。という違いはありますが。」
図書館猫は、元々はネズミ退治用だった。別にキツネでも猛禽類でもヘビでも良いが、飼育が容易かつ利用者に忌避感を持たれにくいのが猫。
「鉱山タイプのダンジョンだと、異世界の鉱山をそのまま複製召喚するのではなく、ダンジョン構造物で坑道を作るんだったか。」
「そこはいろいろですね。鉱脈ごと召喚した場合は鉱石を掘ることが出来ますが落盤の危険があります。坑道がダンジョン構造物の場合、掘ることはできませんから、宝箱に鉱石を入れたり、モンスターを倒すと鉱石を産する。などの方法が必要です。」
「そして最期に、ダンジョンを動かす電力や魔力。そして水と空気。」
「電力はあるが、灯油は無いな。」
「このダンジョンでは、設備は全て電気で動きます。一方、名前の無い『生きていない』ダンジョンモンスターは、いわば『魔力』と言うべき力で動いています。一時期、獣人の餌用にネズミを生産していた程度ですが。」
「大抵のダンジョンでは多数のモンスターが居るものだな。」
「電力が無く、全て魔力などで動くダンジョンもありますが、魔法はこの世界の自然法則に存在しないため、ダンジョン影響圏の外では使用できません。一方、電力は電線を繋げば、ある程度は遠くまで引くことができます。……もしかしたら、世の中には石油や石炭で動くダンジョンもあるかもしれません。残念ながら、そういうダンジョンを探すためには石油が必要と言う問題がありますが。」
「確か、何と言ったか。」
「はい。『服を買いに行くための服が無い』ですね。」
「良く聞くなぁ。」




