502:あれも無い、これも無い
【第三層群屋上庭園】
「マスター、あれも無い、これも無いでは、何も出来ませんね。知識はともかくとして、実体のある部品や工作機械、何が入手出来て何が開発可能で、何が不可能なのか、はっきりさせないといけません。」
「この世界に元からあるもの、このダンジョンで入手可能なもの、他のダンジョンから購入可能なもの、か。最期は技術という面では、あまり価値は無いが。」
「まず、この世界に存在する技術。概ね江戸時代に存在した技術はこの世界にもあります。」
「唐箕とか機織り機とかその辺だな。あまり普及していないが鉄砲も製造可能だ。」
「ちなみに、鉄砲は治安維持のため、ダンジョンへの持ち込みを規制しています。入鉄炮ですね。江戸時代の関所と異なり、出女の方は特に規制していませんが。」
「畜生や修羅の一部は雌雄同体だが、男なのか女なのか。」
「別に、どちらでも良いと思いますけどね。紫蘇科だとシマムラサキくらいでしょうか。男女が別れているのは。あと、雌雄がある畜生でも外観では男女差が無い種類も居ます。カラスみたいに違いが紫外線域の色だけで照明の種類によっては分からない者もいますね。」
「次に、このダンジョンで入手可能なものか。」
「ざっくり分けると3種類。まず、異世界から複製召喚される、ダンジョン本体の図書館と備品・蔵書ですね。」
「このダンジョンの特徴。と言っても良いか。」
「図書館は、他の施設との複合施設であっても建物は丸ごと複製召喚出来ますが、図書館部分以外は備品が無い状態です。図書館の備品ならば、事務機器や空調機から休憩室の冷蔵庫、さらに公用車まで複製召喚出来ます。」
「第58層群のバスターミナルでバスが入手出来たら便利だったんだが。」
「タワーマンションやショッピングモールや病院などの備品が入手出来れば楽なのですが。」
「改良が進んだ異世界の作物が入手出来るだけでも有用ではあるが。」
「本来、後で述べる『付録』という抜け穴以外、ダンジョンで本物の生物は召喚出来ません。ですから観葉植物や花壇の草木は入手出来ませんし、植木鉢の土には微生物も居ません。」
「名無しのダンジョンモンスターは生きていないからな。」
「蔵書の中でも、ダンジョン都市の発展に特に有用なのが、書籍や雑誌の『付録』。野菜の種やバケツ稲栽培キットなど作物、工作機械の卓上NC旋盤と3Dプリンター、ドローン、部品取りに有用な電子工作や模型ですね。」
「普通は図書館には付録は収蔵されないが。」
「場所を取りますし、種子などは何年もは保存出来ませんからね。」




