501:やっぱり酒はダメだった
【第三層群屋上庭園】
「これまた難問です。」
航空技術者のメリッサが言う。」
「メリッサ、予想される問題点は何でしょうか。」
「まずエンジンの問題ですが、自動車用エンジンは航空用より大幅に重くなりますし、アルコール燃料用への改造も必要です。さらに自動車用エンジンは回転数が高いため高強度で精密な減速ギアが必要です。」
「異世界には国によっては最初からアルコールで動く自動車はあるけど、異世界日本の図書館の備品には見当たりませんね……。」
「次に機体自体の問題。入手可能な材料で機体、特に主翼を製造するのも難題でしょう。ダンジョン構造物は組成の単純な物しか製造出来ません。」
「今の飛行機は全部複合材ですからね。ダンジョンで生産可能なのは、せいぜいアルミ合金、無人機だからマグネシウムも可能でしょうが……。」
「複合材が無いならそれ以前、20世紀中頃の軽飛行機に準拠した機体でしょう。幅12m、重量1t、100kWから150kW程度……それなら、巡航速度200kmで航続距離は半減し500kmといったところです。」
「メリッサ、結局、最初から飛行機用のエンジンを用意しないと、お話にならない。ということでしょうか。」
「あるいは、自動車規格のガソリンを入手し、20世紀ではなく21世紀の高性能エンジンを図書館の公用車から入手して、性能を最大限に発揮させるか。さすがに年代が1世紀違えば、20世紀中頃の航空用レシプロエンジンよりは、21世紀中頃の自動車用ガソリンエンジンの方が軽量になります。減速ギアの問題は残りますが。」
「21世紀の航空用レシプロエンジンと航空用ガソリンを直接入手出来れば良いのですが、どちらも図書館の備品にはあれませんからね。でも、そういう進んだ高度なエンジンは特定の規格の、自動車なら自動車、航空機なら航空機用ガソリンに最適化されていて、アルコールは使用出来ないどころか他の種類のガソリンですら故障するんですよね。」
「工場で最初からアルコール対応で製造すれば別ですが、エンジン工場ダンジョンは無さそうですし、ガソリンを入手する方法を考えた方が良いでしょう。」
「五條は油田ダンジョンを探すのは非実用的と言っていましたが。」
「油田であっても、異世界で一般的な藻類が合成するガソリンと同様、エンジンで使用するなら高度な成分調整は必須です。」
「図書館の備品ならば、移動図書館だけでなく普通の公用車でも入手出来るのですから、消耗品でガソリンくらいあれば良いのですが。それこそホームセンターダンジョンはどこかに無いでしょうか。ホー■ディーポとかロ■ズとか。」




