480:そしてテラフォーミング(寺作り)
【筑波北方・檀林】
「現在の人口150万に対し最低限必要な僧侶が5,000人、今後はさらに増える。でも、そういった数あわせの論理ではいけませんね。」
「領主様。この檀林は、最高かは分かりませんが、現時点で最善の修行の場を提供する。という方針で進めています。」
夏坊主が答える。
「何がダンジョンの住民にとって最適か。を前提に置くのが人間牧場の基本ですから、檀林はその方針が良いと思いますね。それぞれの村の寺の本堂は複製召喚した小学校の講堂でも流用すれば……かなり大きすぎる気はしますが、何とでもなりますが、ちゃんとした住職を配属しないことには寺として機能しません。僧侶も人である以上誤ることもあるでしょうし、生臭坊主が全てダメという訳ではありませんが、このダンジョンでは寺が統治システムの末端を担う以上、住職にふさわしく無い者は好ましくありませんね。」
「残念ながら、確実に見極めるのは人には不可能だ。」
「そこはダンジョンの機能で補います。とはいえ、数の問題は難しいですね。」
「僧侶だけに、繁殖させて殖やすわけにも行かぬ。修羅なら挿し木が出来るし、肉食妻帯を許す宗派もあるが、子が僧侶に向いているとは限らぬ。」
クローン人間は修羅道の行いだが、修羅は元から修羅道なのでクローン植物を作ることに倫理的問題は無い。
「出家なら五重相伝を受ければ誰でも出来ますが、住職となると、そう容易ではありませんね。密教は荒行があり敷居が高く見えますが、禅宗など他の宗派が容易という訳でもありません。」
「修行も必要だが、一定の資質も必要だ。」
【第三層群屋上展望台・世界樹】
「人材さえ居れば僧侶を供給出来るシステムは確立しました。」
「まだ僧侶はこの世界にも居るからな。ダンジョンで用意出来なくても問題は少ない。」
「第三層群の召喚元の大学には仏教学部が無いため、ダンジョンで召喚は出来ません。ですが、この世界でも異世界でも僧侶に大きな違いはありませんね。」
「医者だとだいぶ違うな。」
「医療技術は全く違いますから、医者は再教育が必要ですね。ただ、医療機器や医薬品の入手が困難という制約はあります。人間の場合、平均寿命は30歳程度ですが、乳幼児死亡を除けば50歳くらいです。これを60歳くらいには出来るでしょうが、現状ではそれ以上は難しいですね。」
「病院ダンジョンでもあればな。」
「異世界日本では医療機器や医薬品は基本的にアメリカからの輸入ですから、究極的にはアメリカダンジョンが必要です。工場自体を立ち上げるなら生産も不可能では無いでしょうが。しかし、この地域で知識や工業製品を産するダンジョンは全て異世界日本由来でアメリカは見当たりませんね。」
「確かウサギが元々アメリカ由来だったはずだが。」
「地理的に日本にあれば良いようです。世界によっては、後清やフィリピン・グアムにアメリカ軍が駐留しているように、日本にアメリカ軍が居る異世界もありますから。……工場は無くとも、輸入倉庫でもダンジョン化していれば入手は可能かも知れません。」
「コンテナ埠頭あたりか。」
「医療関係は空輸が多いですから、東京市飛行場か、渋沢栄一空港(戸田空港)か……。」