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469:読書階級

 「読書階級の人は菊池寛氏を撰べ」という有名な選挙ポスターがある。


【第三層群屋上展望台・世界樹】


「これ、150年前の物だろ。」

「厳密にはダンジョンの機能による複製品なので新品ですけどね。国や地方政府が所有する図書館の収蔵品なら何だって入手出来ます。」

「確か民間のはダメなんだな。」

「現状、企業図書館や私学の図書館は複製できませんね。権利的な問題だとは思いますが。この有名なポスターも、某私学が持っている物は複製できません。何かの解除条件があるのかもしれませんが。」


「このダンジョンは、本は比較的容易に複製召喚出来るが、読む人が足りないな。『読書階級』とやらは居ない。」

「本は発行部数が多ければ多いほど必要なダンジョンエネルギーは少なくなりますね。つまりベストセラー本などは図書館で収蔵して貸し出さなくても、円本みたいに1冊1円、物価換算は難しいですが100文かその辺でどんどん売っても問題ありません。」

「教育だけが問題になるか。」


「結局、社会の下部構造、現状は農業を中心とする封建社会ですが、これを工業化された資本主義にしていかないと本も普及しないでしょうね。マルクス経済学では共産主義へ移行するとされますが、実際には共産化したのは労農ロシアだけです。イタリアやフランスやポルトガルの一部など、かなり共産主義が広まった地域もありますが。」

「ロシア革命は世界大戦の影響が大きいだろう。」

「そうですね。共産主義は選挙では国全体の政権を握るまでは行きませんし、通常は武装蜂起しても鎮圧されますからね。戦争でも起きないと共産化はしないのでしょう。実際、大規模な戦争により東欧・南北中国・北インドが共産化した異世界もあります。戦争があったとしても共産化する地域は、なぜか限られていますが。」


「話を戻すと、一足飛びに社会全体に書籍を広めるのは無茶。まずは少数の『読書階級』を作る所から始めないといけない。か。」

「異世界の歴史の流れを参考にするなら、産業を徐々に効率化して高等遊民(大卒ニート)を増やすことになるでしょう。それこそ、1日14時間程度本を読ませれば、かなりの感情エネルギーを収穫出来るでしょう。この世界は不定時法ですが……。」

「さすがに机上の空論だろう。毎日14時間も本を読むなんて、いくら読書階級でも逆に苦行、地獄の責め苦になりそうだ。」

「大地獄・小地獄・本地獄。書籍という意味だけで無く、本場の地獄、本物の地獄ですか。八大地獄には該当する物が無いので、もし有るとすれば、分類的には小地獄の1つでしょうか。ただ、わたしは地獄に行ったことはありませんから、地獄のことは分かりません。紫式部が嘘を付いて好色を広めたため地獄に堕ちたという『源氏供養』は有名ですが、こちらは読む方では無く書く方ですから、おそらく地獄の内容は異なるでしょう。」

「平家供養は平家を供養するのに、源氏供養は源頼朝や『ただのまんじゅう(源満仲)』を供養する訳では無いんだな。」


「なお、大店(おおだな)が女系相続で婿が継いだ大阪商人の場合、江戸時代でも若旦那はニートでしたが、こちらは、もっと俗な趣味(旦那芸)に走ったようです。」

「封建制のままで生産力だけ増やしてもダメか。」

「異世界江戸時代でも貸本屋によって、それなりには本は流通していましたから、全くダメとまでは言えないでしょうが、読書人口は総人口の300分の1ですね。鹿児島みたいな商業化されていない農村部は除外すべきですから、実質的にその倍くらいでしょうか。」

「このダンジョンの人口は150万人くらいだから、1万人ということか。」

「1920年代の円本でも、当時の人口6,000万人に対し20万冊、同じく総人口の300分の1ですから……あれ、江戸時代と違いは無いようです。となると、『学問のすすめ』や『西国立志編』が例外で、産業の高度化も20世紀初め程度では効果は無いのでしょうか。」

「異世界21世紀だと本を読むのは人口の半分だが、道は遠いな。」

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