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467:識字率の現状

【第三層群屋上展望台・世界樹】


「分かりやすく言うと、ダンジョン影響圏内で誰かが本を読むと効率的に感情エネルギーが得られます。難しく言うと知的活動がどうとか言う話になり、別に本を作っても良いのですが。」

 マリーは空中に仮想窓を投影する。

「ダンジョンエネルギー獲得効率の改善だったな。」

「はい。この秋、ようやっと近隣の需要を満たすだけの米が収穫できそうです。これで、飢えた難民がダンジョンに押し寄せて破滅する危険は少し遠のきましたから、今後しばらくはダンジョンエネルギーの収入を増やしていきます。」

「知行や商人への支払いは米だが、ダンジョン自体の運営にはダンジョンエネルギーが必要だな。」

「特に、このダンジョンはきわめて規模が大きいので、維持に必要なダンジョンエネルギーは膨大で、余裕が乏しくなっています。本来、ダンジョンは世界のコアからのエネルギーだけで維持出来るよう運営するのが定石ですが、このダンジョンはとっくにそれを越えてしまっています。」


「人間牧場の住民からの感情エネルギー収集量を増やしていく必要があるか。」

「はい。効率的にエネルギーを得られる感情はダンジョンにより異なりますが、ここは図書館なので、本を読ませるのが一番効率が良くなります。『図書館都市ダンジョン。それは、様々な異世界から億を超える書籍や無数の雑誌・新聞等を召喚するダンジョンであり、この世界の神話・伝承・冒険記から創作物語や詩歌まで様々な情報を集積・書籍化する図書館であり、学者達をはじめとする多数の住民が生活する都市である。』という訳です。」

「現状は関八州随一の農業ダンジョンだけどな。」


「生きるためには食料が必要ですからね。中国では『衣食足りて礼節を知る』と言いますが、まず生活できないことには話になりません。それで、今後住民に本を読ませるにしても、重大なのは、識字率の問題と国語の問題ですね。」

「世界自体が江戸時代並、中世だからな。」

「まず、この世界は江戸時代同様、武士・商人・自作農は概ね読み書きが出来、識字率は数の多い人間では5割程度です。中世封建時代としては高いですが。」

 ただし、江戸時代の場合、農村でも商業化が進んでいない地域は極端に低く、鹿児島では名前を書ける者すら2割に満たない。

「半分か。」

「問題は、布告や農業書を読み手紙を書く程度は出来ても、小説などを読むほどの読解力はあまり普及していない。ということです。実際、江戸時代の『ベストセラー』は1,000部が目安で『千部振舞』と言いました。江戸時代には貸本屋が普及していたと言っても、読者の数は人口3,000万人に対して数万人でしょう。最も売れた偐紫(にせむらさき)田舎源氏(いなかげんじ)が各巻1万冊ですから、10万人は越えないと思われます。」

「人口の300分の1か。」

「これが明治期の『学問のすすめ』と『西国立志編』は100万部ですから人口の30分の1。20世紀後半の異世界日本では(第二次世界大戦が無く台湾を含むため)人口1.8億人に対し最大のベストセラーは500万部程度と、やはり人口の30分の1ですね。ほぼ10倍と言うことになります。」


「なら、欧州諸国みたいに義務教育を完全適用する所から始めるべきか。」

「性急な義務教育制度の導入は、学制反対一揆が頻発するだけです。また、文章の意味を理解出来ない『機能的非識字』の問題もあります。異世界日本でも小学校進学率は前世紀初めには97%に達しましたが、結局の所、年1冊も本を読まない人が半分くらい居るので、人間の実質的な識字率が半分。というのは、なかなか解決困難な問題だと思います。」


「つまり、識字率は現在の5割を前提とする。ということか。」

「人間に関しては、大々的な人種改良でも行わない限り難しいでしょうね。」

 人種改良とは、「馬匹改良」を参考に、産児制限による人口抑制と移民の導入、要は子供を減らして移民で置き換えるという主張。マルサス・ダーウィン主義政党の「進化党」が「人種改良を国策に」と主張している。

「なら、畜生に期待するか。」

「マスターには言いにくいですが、畜生も……畜生です。」

 英語の入門書(101)すら読まずにダンジョンをこんな状態にしたのはダンジョンマスター。

「つまり、マリーさんは修羅こそが高等種族だと言う?」

「言いません。蘭(ファミリー)は『高等種族』を自称していますがアレですし、菊(ファミリー)は『最も進化し、最も分化している一族』と言っていますが、頭に花が咲いています。これを頭花(とうか)と言います。つまり、実際には六道全て大差無いと言うことです。」

福沢諭吉も中村正直も死後70年経っています。

大昔の作品なのに著者が相当長生きしている例もあるので要注意です。二次創作とはいえ許諾が必要な物は面倒なので避けるようにしています。

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