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461:調査隊出発

【西方面転送陣末端・読書村】


 図書館都市ダンジョン影響圏西端読書(よみかき)村。木曽谷は地形が険しく、村の北、転送陣275の末端にある高さ1.6kmのサイタマイルタワーから観察することは出来ない。


「現状、未だに地図はきわめて不正確ですが、目標となる森林ダンジョンまでの道は無人車で確認しています。ですが、不測の事態が起きた場合は即座に調査を中断し帰還して下さい。また、ダンジョンとの接触も慎重にお願いします。特に山猿隊の皆さん、深入りは禁物です。」

 マリーは探検隊のメンバーに挨拶する。この山猿隊、属名のマカク(Macaca)がマカカ(真っ赤っか)と読めることから、装備を全部赤色に統一している。この世界には火縄銃程度しか無いから良いが、もし他にも近代兵器を持つダンジョンがあったら目立つ軍服は好ましく無い。



【第三層群屋上展望台・世界樹】


「あとは待つのみ。ですね。交渉可能なダンジョンならキンラン(コリウス)がうまくやってくれるでしょうし、それで駄目な相手の場合……ダンジョンを制圧して皆伐した方が良いかも知れません。」

「マリーさん、交渉不調でも那須塩原(なすえんげん)は放置しているが。」

那須塩原(なすえんげん)は、まず、向こうからは別に手を出してはきませんし、次に、制圧せざるを得ないほど魅力的な産物は産しませんし、最期に、一度滅ぼしたらそれっきりですからね。異世界の那須塩原(なすしおばら)も牛の産地でこの世界ならば微妙ですが、この世界の那須塩原(なすえんげん)は茄子(ファミリー)修羅の支配するダンジョンで、確かに茄子や馬鈴薯(ジャガイモ)は、この世界の江戸時代並みの品種より優れた物を産しますが、生活に必須とまでは行かない植物です。」

「確かに、この世界の主食は大麦であってジャガイモでは無いからな。」

 米は公称4割(実際は1/4程度)が年貢、残りは種籾と換金用で、庶民が食べることは滅多に無い。

「異世界の労農ロシア西部地域やイギリス・ポーランドではジャガイモの消費量は年間1人あたり100kgを越え、事実上の主食ですが、昔の埼玉と同様、この世界の主食は麦ですね。」


「この世界でも鬼はジャガイモが主食なのか。」

「鬼はジャガイモも食べますが、ライ麦のパンやお粥が主食ですね。そこは天狗も似ています。一方、河童は米を多く食べますがタイ米に近い種類です。外道種族相互で大きく異なるのは酒で、鬼は餓鬼が好むような蒸留酒、天狗はビール、河童はワインですね。」

「妖怪でも狐狸とはまた違うか。」

「狐狸は外道では無く畜生道ですから、食性は元の動物に影響されます。それで、話を戻すと、名称不明のダンジョンと思われる地域は木材を産する可能性がきわめて高いと思われます。木材は必需品ですし、もし生きた樹木ならダンジョンを滅ぼしても材木は残ります。水の供給が断たれるので再生産は出来ませんが。」

「可能性か。マリーさん、判断基準は?」


「先日マスターに説明したように、ダンジョンの植物は3種類、造花とダンジョンモンスターと生きた植物がありますが、訪問者は少ないと思われる地域で大規模な森林を維持しているなら、おそらく、生きた植物でないとダンジョンエネルギーの収支が合いません。」

「断言は出来ないと。」

「断言は出来ませんね。森の奥または地下に大規模な人間牧場があって感情エネルギーを収集している可能性もあります。あるいは、()から(しな)のあたりはホットスポットが点在していると思われますから、地熱エネルギーが多い場所という可能性もあります。」

「ホットスポット……犯罪とか紛争では無く、火山だよな。」

「はい。この世界は異世界と異なり海が無いため、プレートテクトニクスは存在せず地殻は『スタグナントリッド』と呼ばれる1枚の板で構成されます。火山活動は低調で地震もめったに起きませんが、マントルの対流により一部の場所では地熱が高くなります。」

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