460:木曽谷予備調査
【第三層群屋上展望台・世界樹】
「マリーさん、有望なダンジョンは有りそうだろうか。」
「はい。木曽谷の向こう、影響圏の端から約150kmより先に幅100km程度の森林があります。この世界は基本的に砂漠ですから、規模から見ておそらくダンジョンでしょう。遠すぎてドローンは届かないため、近づいての観察は出来ませんが。」
「けっこう遠いな。」
「あと、涸れ川沿いにオアシスがいくつかありますが、もしダンジョンで無いなら、調査時に水の補給が可能かもしれません。」
「ダンジョンだとダメなのか。」
「正体不明のダンジョンは潜在的に危険ですからね。対応困難な固有法則を持つかもしれません。」
「ダンジョンかどうか。は分かりづらい場合があるからな。」
「人が誰も住んでいないのにダンジョン影響圏に組み込めないならダンジョン。ですが、そもそもこのダンジョンの影響圏限界より遠いため、その方法を試すことはできません。」
「影響圏を広げる方法か……。」
「今の距離まで広げたときも、わたしは死にかけましたから、それ以上となると、おそらく、ろくな方法では無さそうですね。今後クローンダンジョンを作るとしても、最大半径は255リーグ、つまり765マイルの1,231kmとして配置した方が良いでしょう。」
「そんなに変わらないな。」
「このダンジョンが現在1,373kmなので1割くらいですね。ただ、その1割が重要なのですが。」
【第三層群屋上展望台・世界樹】
「伐採するにも搬出が問題だな。」
「いきなり伐採は無茶ですね。相手がダンジョンなら、どういうものか直接調査が必要です。歩いて行くには遠すぎますから、途中の山の上などに無線中継施設を設置し、自動運転車を送り込んで自動車が通行可能な経路を確認、調査隊の派遣はその次ですね。」
「手間がかかるな。」
「山脈を直接越えるのは無謀ですし、谷部分は地形が険しい可能性がありますからね。ほんと、ダンジョン影響圏内なら簡単なのですが。」
「木曾義仲ダンジョンとかあったら知行でも与えて飼い慣らして、という訳には行かないか。」
「マスター、木曽とは言いますけど源義仲は埼玉県出身ですよ。あと、育ったのは『木曽』と言っても木曽谷本体、当時の美濃国恵那郡では無く、信濃国安曇郡、木曽の北の方ですね。その後、筑摩郡、松本のあたりに出ています。この世界だと科国府、大村に相当しますね。」
「それで、次は無人自動車での調査か。」
「はい。ダンジョンには近づきませんが、ある程度近くまでは到達します。影響圏側から峠を越えるのと、南側、身終へ向かう建設中の道路から向かうのと、2通り試してみます。」