454:クローン植物
【第三層群屋上展望台・世界樹】
「それで、もし修羅の繁殖では無く、マリーさんのクローンを作ったら、マリーさんと同じ修羅が出来るのかな。」
マリーは生物学的には性別自体が無いため繁殖はできない。もっとも、マリーと同一個体である巨大な世界樹が大繁殖したら、ダンジョンは藪になってしまうが。
「クローン植物は遺伝子は同一ですから、遺伝で決まる部分は同じです。ですが、遺伝で決まらない部分は個々に異なります。このダンジョンには世界樹の挿し木、つまりクローンであるローズマリーがたくさんあります。遺伝的には全て世界樹と同じ、つまりわたしと同一ですが、樹形や成長速度は環境により異なります。つまり、クローン修羅だって目の色や髪の色は同じですが、顔つきや性格は違ってくると思います。ですが、あまり詳しく無い人には見分けが付かないでしょうね。」
「世界樹は大きさが極端に違うから分かるが、吾輩にはローズマリーは全部同じに見えるが。」
「確かに、わたしとクローンならともかく、もし身終・城輪柵・多賀城・太宰府の4方面にクローンダンジョンを作るとして、同時にクローン修羅を4人育てるとなると、環境は同じですから、それこそ双子のように見分けが付かない危険性がありますね。もちろん、ダンジョンがクローンだからと言って管理者までクローンである必要は無いでしょうが。」
「つまり、修羅の繁殖でもマリーさんのクローンでも同じ。ということか。」
「いえ、修羅を繁殖させる場合、今から掛け合わせて植物の種を作り、その植物をある程度育ててから十分なエネルギーを注ぐことで修羅になります。わたしのクローンの場合、2年目の5月、この世界では5月とは言いませんが、その時期に挿し木した世界樹の苗がありますから、3年、実生と挿し木の違いを考慮すると4~5年節約できますね。」
「とはいえ見分けが付かないのも困るな。」
「ダンジョン作りが上手く行くかは全く不明ですし、まずクローンを1人作ってみようと思います。ただ、決断する前に、もう少し情報収集が必要ですね。」
「分からない事が多すぎる。か。それこそ、他のダンジョンからの情報収集が必要かな。とはいえ、話が出来るダンジョンの方が少ないが。」
「それこそ、使者を送り込んでも死者になりかねません。名前付きモンスターは死んでも復活出来るとはいえ、膨大なダンジョンエネルギーが必要です。」
「これ、むしろ復活させずに、新規に召喚する方が得だったりしないか。」
「もちろんダンジョンエネルギーだけ見ればその方が得ですが、仕様上それは出来ません。ダンジョンモンスターに名前を付けると言うことは、もう変更が効かないということです。」
「そうなると、使い捨て覚悟で外交僧を送り込むしか無いか。」
「安国寺恵瓊みたいに斬首される危険はありますが、この世界の事情に通じた外交僧の方が交渉の成功率は高いと思います。」




