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445:探すべきダンジョン

【第三層群屋上展望台・世界樹】


 昨日召喚した山師を即座に調査に派遣。とはいかない。

「マスター、最も好ましいダンジョンは、近代的な工業製品を産するダンジョンです。中でも工作機械が入手可能なダンジョンがあれば、大幅な技術の底上げになるでしょう。」

「輸入に頼っている反物とか小間物とかは?」

「嗜好品ですし、人工的に生産された物を買えば良いので優先度は低いですね。むしろ、このダンジョンで生産しない食品、干物や海苔などの方が優先度は高いでしょう。」

「海が無いから海水魚は飼育できないのか。」

「技術的には養殖は可能ですが、巨額の設備投資と高度な技術が必要ですから、敷居は高いですね。鮮魚が必要なら、(ふさ)飯沼(いいぬま)ダンジョンのような魚を産するダンジョンから運ぶ方が良いので、そういうダンジョンを探す方が速いでしょう。ダンジョンの仕様の制約で活魚は入手出来ませんが。」

「ああ、普通のダンジョンモンスターは生きてはいない訳だったな。」

「ダンジョンからエネルギーを供給されていますから、生きてはいませんし、自分で何か考えることもありません。ダンジョンで本物の魚を養殖しているなら別ですが。」

「本物は、このダンジョンの米みたいなものか。」

「はい。このダンジョンの農作物は本物の生物ですね。家畜もダンジョンモンスターではなく生きたものを連れてきて増やします。ただ、牛馬は繁殖力が人間以下ですし、この世界の人間は基本的に牛馬は食べませんから、鶏以外は無理に増やすことは無いでしょう。」

 江戸時代同様、この世界の人間は基本的に肉は食べないが、別に菜食主義では無く、魚介類や鶏は食べる。


「必要性が高いのは工作機械か。」

「工場系のダンジョンが見つかれば最善ですが、もし今後、大学工学部や工業学校の図書館以外の備品、つまり実習工場などの設備。あるいは科学博物館や産業博物館の図書室以外の展示品が入手可能になる可能性があるならそれでも補えます。今は建物はまるごと複製召喚出来ますが、図書館以外の備品は入手出来ません。」

「そもそも前世紀水準のダンジョンすら海豚池と商都梅田の2つしか見つかっていない。いっそ作る方が速いのでは?」

「工業製品は『無ければ作る』訳にはいきません。」


「マリーさん、そもそも技術というのは神仏から与えられた物では無く、誰かが発明したわけで、図書館に十分な文献がある以上、機械だって再発明は可能なのでは?」

「マスター、『車輪の再発明』は容易ではありません。もちろん工場ダンジョンが見つからない場合は、図書館の文献を参考に技術を再発明する必要がありますし、将来技術力が図書館で入手可能な文献を超え、ダンジョンでも入手出来ないなら、完全に自前での開発が必要になりますが……。」

「やはり難しい?」

「はい。無理に自前で開発するより、技術力の高いダンジョンを探す方が圧倒的に効率的です。異世界でも、技術を無理して自前開発するよりアメリカから製品を輸入する方が効率的です。もっとも、異世界の場合は外貨の不足が問題ですが、この世界の場合、外貨以前に、そもそも技術を持つダンジョンが存在するか。というのが最大の問題です。」

「マリーさんは、無い可能性が高いと見ている訳か。」

「この世界のダンジョンを見る限り、あまり期待できませんね。そして、月や星系内の他の居住惑星にダンジョンがあるかは不明ですし、このダンジョンの技術では宇宙は手が出ません。月に関しては、少なくともこちら側の半分には大々的に照明を使う都市はありませんね。ですから自前で大学を運営すべく準備を進めています。名前有り一般(ネームドモブ)モンスターを教員として何百人か召喚できれば速いのですが、そうもいきませんし。」

 世界と月は常に同じ面が向き合っているため、月の裏側は見えない。

「ダンジョンモンスターはダンジョンエネルギーを使うだけだし、そんなに多数召喚出来なくて良いと思うが。」

「逆に修羅でも人間でも畜生でも、住民含め『侵入者』なら感情エネルギーを得られますからね。餓鬼はどうにも相性が良くありませんし、地獄の亡者はおそらく感情も無く、天人は見たこともありません。」

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