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441:その頃、不破関

【不破関】


「進捗状況はどないやろか。」

 ソーライス(ソースをかけた白飯)喰い、つまり商都梅田の偉いさんの1人が前線までやってきた。

「海豚池までの測量は予定通り完了。もうすぐ予定路線案を提出できます。一方、海豚池より東、(たじひ)方面にはトンネルがいくつか必要になりますが、図書館都市が山を丸ごと爆破すると言っているので、海豚池以東は彼らに任せ、線路は海豚池までとするよう提案します。」

「山をまるごと。って。火薬(黒色火薬)はそこまでの威力はあらへんし、図書館でダイナマイトは召喚できへんと思うんやけど。」

「ダイナマイトを産するとしたら、世界標準より技術の進んだ鉱山ダンジョンや飯場ダンジョンでしょうが、そういうダンジョンから入手しているか、材料を産するダンジョンを傘下に収め、人為的に製造しているのではないかと。」

 肥料が爆薬である。というのは知られていない。


「電気の目処は立ちそうやろか。」

「いえ、相変わらず海豚池は生贄を要求しています。海豚池は自立したダンジョンなので、身終(みのおわり)には従いませんし、見通しは立っていません。図書館都市は海豚池との交渉を断念、海豚池の北から大餓鬼の南を通り、この不破関まで線路を作ると言っていますが、交渉再開のための脅しでしょう。」

「ダンジョン外である以上、自然の法則は平等やからな。電気が届くはずがあらへん。図書館都市にダンジョンを不破関まで広げる方法が有るっちゅうんなら別やけど。」

「電車は交流154kVを直流1.5kVに変換して使いますが、この不破関ならともかく、大餓鬼でも遠すぎて電圧が不安定になったり送電が止まったりする危険があります。かといって生贄を継続的に用意するというのも難しい問題があります。」

(かひ)(しな)では老人を山に捨てるそうやけど、そないな親不孝なことはできへん。かといって多すぎる赤子を間引くっちゅうのも野菜やあるまいし。確かに畜生道やと『獅子は他人(前夫)の子を千尋の谷に落とす』ちゅうし、鳥畜生の中には自分の兄弟姉妹を殺す連中まで居る。そやけど、そんなの真似する訳にもいかへんやろ。」

 我が子を……というのは誤認で、ライオンの子殺しは他人の子を殺す。

「人間にも畜生道に堕ちた者がたまに居ます。」

「そういう者は、来世は畜生道不可避やろ。」



【商都梅田・第一層群・箕有百貨店8階】


「そういう訳で、線路は海豚池まで。っちゅうことになりそうなんやけど、電気の問題は未解決や。」

「最悪、電気が届かない範囲は蒸気機関車ということも考えないといけない。」

「蒸気機関車は入手可能やけど、石炭があらへん。」

 1920年代大阪の鉄道も建設や保線用に少数の蒸気機関車を保有していた例があるため入手は可能。

「図書館都市は紙を大量に産したな。」

「燃料に使っとるくらいや。って紙燃料か。」

 死刑にも使用される。(stone)による処刑は石打ち(stoning)だが、(book)による処刑を「booking」と表記すると紛らわしい。

「個人的には図書館都市が海豚池を迂回するというのは、単なる交渉用の脅しでは無いと思う。それこそ、本当に本を燃料とする蒸気機関車を使うつもりなのではなかろうか。彼らが使う予定の『新幹線』という妙な名前の電車も図書館にあった物と言う。蒸気機関車が図書館にあれば入手可能と思われる。そして、ものすごく都合の悪いことだが、彼らの技術は、おそらくこの商都梅田を凌駕している。」

「ほんまかいな……そりゃ不味いんちゃうか。文明開化くらいやと思っとったんやが。」

「ただ、彼らが蒸気機関車を用意するなら、仮に海豚池から電力が得られなくても交易は出来るという利点はある。もし図書館都市が本当に蒸気機関車を使うのなら、不破関以東の運用を丸投げも可能だ。」

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