440:西方への自動車道の今後
【西方面転送陣末端・読書村】
「それで、ミント、アメリカの大陸横断鉄道は、オマハからオグデンまで1,750kmをわずか4年で建設していますが、ドローン測量、モジュール工法、電動重機で、どこまで短縮できそうでしょうか。」
大陸横断鉄道は東側はアメリカ人により1,750kmを4年、1日1.2km。西側は中国人により1,110kmを6年、1日0.5kmだが、中国人の名誉のために言うと、シエラネバダ山脈を抜ける難工事。
「さすがにアメリカの速さは真似できません。異世界日本の実績では、概ね1日に200~300mです。今回、作業は突貫工事で進めていますが、せいぜい倍の1日600m程度、アメリカの半分が限界です。」
修羅は夜勤に向かず、人間でもシフト勤務は健康に良くないため、夜は夜型人間と夜行性や薄明薄暮性の畜生が働く。
「特に山岳地帯とかは無いのですが、上手く行かない物ですね。」
「去年の着工命令以前に着手していた、読書村から大井の町まで200km余りは一応走行可能、さらに150km向こうの朱鷺郊外までは年内、残り600kmは3~4年後あたりでしょう。自動車道は7~8年で完成する予定です。」
「……ミント、やむなく『新幹線』に許可を出したのは、商都梅田への自動車道着工後ですが。なぜそれ以前に着手しているのですか。」
「側近書記殿、炭化水素燃料のトラックが無い以上、資材の長距離運搬に工事用軌道は不可欠です。東北の欧州、西の身終、南西の尽への自動車道は何百kmもあるため当然鉄道を併設することになりますが、このダンジョンで入手可能なのは新幹線と東京市電などの路面電車程度。鉄道省の教習所は官立学校なので、もう少しダンジョンが成長すれば、ダンジョンエネルギーを多く使えば実習用の電車を複製召喚可能になるかもしれません、これも省線全廃以前の旧式電車しかありません。仕方のない選択です。」
「越の今池みたいに鉄道無しでは行きませんか。」
「越国府・今池はダンジョン影響圏の端から80kmで、距離が違います。」
「ダンジョンの法律で、撮影禁止と業務以外での乗車禁止を決めないといけませんが、乗車規制はともかく、ダンジョン影響圏外での撮影は規制困難ですよね……。実効性の無い法規制は単なるスローガンに過ぎません。電話だって電波が届かなければ通話出来ないだけで撮影機能は使えますから。」
「側近書記殿、充電の制約で自動車の活用が制約され、飛行機も無い状況では、新幹線の利用規制は好ましく無いかと思われますが。」
「でもねぇ、東京から名古屋や仙台に電車で行く人は誰も居ないから、省線は廃止された訳です。ダンジョン影響圏内の転送陣なら、ダンジョンエネルギーは使用しますが、作るのは一瞬ですし、飛行機が実用化されれば撤去すれば済みます。ですが鉄道は何年もかけて作った挙げ句に必ず不要になると分かっていますからね。」
「そもそもコンクリート舗装は硬化するのに10~30日必要なので、端から順番に作っていては時間が掛かりすぎます。異世界なら既存の道路がありますが、この世界では工事用軌道で材料を運びながら道路を作るしかありません。また、側近書記殿が大好きなトレーラーがいつ入手出来るか全く分からない状況では、当面は鉄道を使うのが最善です。」




