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432:後始末(本打刑)

【越の国・頸城郡・転送陣315末端】


 図書館都市ダンジョン影響圏の端は、(こし)国府・今池から80kmも離れている。捕虜の処刑はダンジョン影響圏内で行わないとダンジョンエネルギーは得られないが、今回被害を受けた(こし)の住民も処刑を見ないことには気持ちが落ち着かない。このため、ダンジョン影響圏で最も(こし)国府に近いこの地が『本打刑』の刑場に選ばれた。

 「王」という漢字自体が処刑用の斧に由来するように死刑は統治者の権限であり、図書館都市ダンジョンでは死刑は全てマリーが行う。異世界の『石打刑』は、観客が参加することも多かったが、このダンジョンではマリー以外が直接死刑に参加することは無い。


図書頭(ずしょのかみ)どの、首を刎ねればよいものを、死罪にしては大がかりではないかな。」

 被害者代表、(こし)国主の佐藤越守(こしのかみ)が言う。

実城(みじょう)殿、このダンジョンの特徴として、死刑は本により行うのが好ましいのですが、本を1冊づつ投げつけていては日が暮れますし、わたしの体力も保ちません。ダンジョン構造物を使用して本を死刑囚の上に一挙に落下させ圧死させます。」

「確か、焚き付け用の安い本だったかの。」

「はい。一番安価に入手出来る本ですね。いろいろな種類がありますから、並べれば本棚っぽく見えるでしょう。」

「普通の書物と多少見た目が違うのは気になるが。」

 この世界の本は和装本や巻物。

「ダンジョンにとっては問題ありません。そして、衝突で戦死した武士・足軽(あしがる)中間(ちゅうげん)下男(げなん)の家族や、田畑を荒らされた農民のためにも、わたしが責任をもって捕虜を処刑しなければなりません。」

士分(武士)には敵討ちくらいさせてやる訳には行かなかったのか。」

「わたしと同じく修羅ですからね。名誉より生命を重んじますから、敵討ちするために相手にも武器なんか持たせたら、それで逃走しますよ。」

「そういうものか。」

 ずいぶんと卑怯だな。と思う国主。マリーがダンジョン構造物を解除すると、大量の本が捕虜達に降り注いで押しつぶした。



【第三層群屋上展望台・世界樹】


「マスター、三角草野の捕虜を公開処刑することで、わずかにダンジョンエネルギーを補充するとともに、住民への娯楽を提供しましたが、根本解決にはなっていません。それに、このダンジョンでは最も効率的な処刑法である『本打刑』と言えども、一介の蚊帳吊草修羅では大したエネルギーは得られません。」

 罪人に大量の石ならぬ本を投げつけて処刑する方法で、石打刑以上に非人道的なため住民の犯罪には適用されない。

「このダンジョンでは殺人は皆無に等しいから、公開処刑も少ないな。」

「ダンジョン影響圏内は全部監視可能ですからね。それでも人を殺すのはギロチンを覚悟した者だけです。それにしても、人間は公開処刑が好きですね。特にこのダンジョンのように冤罪の危険が無いなら、住民は自分が処刑される危険を感じずに純粋に娯楽として公開処刑を楽しむことになっています。」

 なお、江戸時代と異なり、図書館都市ダンジョンでは死刑は殺人のみ。

「あまり高尚な娯楽とは言えないが。」

「異世界では、司法制度の整備により徐々に見せしめの効果が薄くなり単純な娯楽となったため、風紀上良くないと前世紀には概ね公開処刑は廃止していますが、この世界ではすぐにやめるのは無理でしょうね。」

「処刑に代わる娯楽を十分に普及させないと一揆が起きるか。」

「さすがに、その程度で一揆までは起きないとは思いますが、細かい不満の蓄積は暴発に繋がりかねませんし、得られるダンジョンエネルギーがわずかに減るだけでも、このダンジョンは人口が多いので影響は甚大です。もっとも、今回は見物客の過半はダンジョン外の住民ですが。」


「三角草野に関しては、当面は防衛体制の強化かな。」

「ダンジョンの利益にならないので、あまり気は進みませんが。ダンジョン影響圏外でも西の交易路なら、まだ利益になるのですけどね。」

「商都梅田より西にも人口が多い国々があるんだったな。」

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