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427:三角草野、襲来する

【第三層群屋上展望台・世界樹】


 三角草野は異世界で言うところの深海平原に位置し(こし)より数km低いため、山の上にある見張り台からは300km彼方まで見ることが出来る。もちろん解像度の制約があるため、いくら望遠鏡を設置しているといっても確認出来る距離はせいぜい100km程度に制約されるが。

「マスター、おそらく三角草野の草鞋(わらじ)と思われる物体が千以上、分散してこちらへ向かってきています。」

「一カ所に、では無いか。」

「はい。どうやら(こし)の国境500kmに一斉攻撃する模様です。」

「まさか、これほど分散して攻めてくるとは。」

「対人地雷だって生産能力の問題がありますから、まだ詰め所付近にしか埋めていません。」

「マリーさん、草鞋に敵兵は何人乗っていそうか。」

「この距離では分かりませんが、さほど大きくは無いので、多くて4~5人程度でしょうね。おそらく総数は1万といったところでしょう。ただ、既に(こし)に入り込んでいる『行商人』が1万人くらい居ます。」

「なら、(こし)の兵隊には10人以上まとまって行動するよう伝えてくれ。全員に無線機を持たせれば良かったが。」

「そんな生産力はありませんし、操作を覚えさせるのも大変です。さらに、武士は読み書きはできますが、足軽あしがるはともかく中間ちゅうげんには文字が読めない者はいくらでもいます。」

「このダンジョンでも義務教育は導入していないからな。」

「無理強いしたら学制反対一揆が起きるだけですからね。教育は人口抑制には有用なので、中期的には必須ですが、今は義務化まではしません。」

「何をやっても一揆か。」

「異世界の江戸時代は少なくとも3,000件以上の一揆が起きています。もちろん大部分は示威行為で、筵旗を掲げ農具を持ち出すだけで、刀や鉄砲は使われません。ですが、そこで対処を誤ると大名は統治の資格無しと改易されかねません。一方、この世界には幕府はありませんから、一揆を放置すると暴動や革命にまで行き着きかねません。」


「ともかく、これでは防衛線を突破されるのは不可避か。」

「マスター、斜面を登るのに、1日では厳しいでしょうから、猶予は2日。しかし、2日でなんとかするのは困難です。とはいえ、種を播かれてしまうと埋土種子(まいどしゅし)といって、雑草の種は何年も残り、少しづつ発芽します。広範囲に種を播かれると数年は収穫に悪影響が出ます。」

「かといって(こし)を放棄する訳にも行かない。不足分は図書館都市で増産し、貸し付ける。……担保が取れないな。」

「土地で、といっても人が住んでいる土地は影響圏に組み込めませんし、資源で、といっても資源を産するのは他のダンジョンですからね。」

「とにかく、できる限りの事はすべきだ。ウサギ(USA G.I.)と狂犬隊・火豚隊などを総動員し、少しでも多くの敵を狩る。」

「可能なら生け捕りにして公開処刑ですね。ダンジョンエネルギーになりますし、住民の不満解消にもなります。」

「ギロチンか。」

「いえ、侵入者ですから住民の殺人犯みたいに最低限人道的に処刑する必要はありません。わたしは捕虜は取りません。そして、このダンジョンの本質は図書館ですから、本による処刑が最も効率的にダンジョンエネルギーを獲得できます。やるなら石打ち刑ならぬ本打ち刑ですね。」


「本が傷んだり血……草の汁で汚れて使えなくならないか。」

「召喚コストが極端に安い本がありますから使い捨てでかまいません。最期は『どんど焼き』で焼き払ってダンジョンで吸収すれば片付きます。」

 いつものことだが、酷いことを平然と言うマリー。

「ああ、いつもの。」

「単純に、より多くの異世界で大量に出版された本が低コストになるため、例えば一部の異世界にしか無い赤い本とか、消耗品では無いためさほど出版数は多くは無いコーランとかは、召喚コストでは『ドン・キホーテ』や『星の王子さま』などの一般のベストセラーよりも高く付きます。ですが、多くの異世界で大量にばらまかれた本は図書館の備品のトイレットペーパーより安く入手できます。」

浅草紙(安物の再生紙)より安上がりなので、大量に出荷されて落とし紙(トイレットペーパー)にも使われているな。」

「その本には『罪なき者のみ石を投げよ』と書いてありますが、罪がある者が本を投げつけていけないとは書いてありませんね。」

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