表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
425/461

425:祖国地雷工場

【祖国地雷工場】


 図書館都市ダンジョンから北西80km、(たじひ)と飯沼の間に「祖国地雷工場」はある。

 異なる異世界埼玉県から複製召喚された同じショッピングモールが2棟、3階に中央図書館がある棟と4階に駅西口図書館がある棟が並んでおり、どちらもおよそ100m四方・4階建て。塔屋部分にラテン語で白く「祖国」と書かれているが、もちろんこの世界の住民には読めない。その下には赤く蛇かミミズを意匠化した装飾がある。

側近書記(セクレタリー)殿、地雷の製造は順調ですが、なにぶん500kmの地雷原ですから200万個くらいの地雷が必要です。」

 ミントの分身がマリーを出迎える。分身が12体も居るので、重要な地点には直接配置可能。

「ダンジョンの影響圏に組み込むことができれば良いのですが、遠すぎますからね。1,373.45km。この距離が問題です。」

「地雷は造るのも埋めるのも面倒で、不要になっても撤去は極めて困難。使わないに超したことは無い。」

「そう言っても、春の田植え頃には三角草野が何か仕掛けて来そうですから、それまでに最低限の対応は必要ですね。まず鉄条網、次に地雷、可能なら機関銃を配置。ダンジョンエネルギーも金銭も盛大な浪費です。なにしろ戦争は最大の浪費ですからね。ダンジョンで待ち構えるだけなら、むしろ利益が上がるのですが。」

「さすがに、このダンジョンに侵攻してくる者は居ないだろう。」


「このダンジョンは火が使えませんから、ダンジョン構造物内で製造し、転送陣でダンジョンの外まで運べば、製造・輸送段階の事故は防げる。ですね。でも、化学反応が起きない。という訳でも無いのですよね。」

「化学反応が起きないなら生物は生きられない。」

「ダンジョンの機能については分からない事が多すぎます。固有法則はダンジョンにより全く異なりますから、一般化もできませんね。そもそも他のダンジョンの固有法則を詳しく検証するのも困難ですが。」



【第三層群屋上展望台・世界樹】


「マリーさん、異なる異世界からとはいえ、同じ建物が2つ並んでいるのは奇妙だな。」

 仮想窓には2棟並んだ祖国地雷工場が映し出されている。

「ダンジョン中心の塔以外では、いくらかでも仕様が異なれば異なる異世界から複製召喚できますから、『頼朝公ご幼少のみぎりのしゃれこうべ』が可能です。なお、図書館が3階か4階かの他に、外壁の色やエレベーターホール上の看板の有無など、細かい所はいろいろ違いますから、全く同じではありません。」


「それで、対人地雷とは……。」

「タイ人地雷だけに、サラネーとかホラパーとかガパオとか……名前有り一般(ネームドモブ)モンスターの召喚枠が足りませんね。」

「この世界に無い技術をどんどん導入するには、技術者用の召喚枠があまりに足りないからな。で、サラネーとか何だ。」

「マスター、解説なんて無粋なことはさせないでください。『対人』地雷と東南アジアの『タイ人』をかけて、タイのシソ科ハーブです。」

「タイ属性の修羅を召喚したとして、タイの主要な産物となると……。」

「輸出品は自動車・電算機・化学製品・鉄鋼などですね。自動車は日本でもいくらか輸入されていますが、わたしは、やはり工業製品は何でもアメリカ製が一番だと断言します。タイは基本的には工業国ですね。農作物も有名ですが割合としては少しです。ただ、このダンジョンは今のところ異世界日本の図書館にある本しか複製召喚できませんから、今後タイの工科大学を卒業した設定の技術者を召喚できても、あまり産業の発展には生かせないでしょう。」

「ああ、技術者にしたって知識は全部頭で覚えている訳では無いか。日本語が読めないとせっかくの蔵書が役に立たないな。」

「このダンジョンの仕様上、現在は外国由来の名前有り一般(ネームドモブ)修羅も、全て設定上の経歴は第三層群、日本の大学・大学院を卒業していることになっています。司書課程が無い大学が経歴設定の基準なので、図書館ダンジョンなのに司書が居ないという事態に陥っている訳ですが。」

「実際の異世界人なら大学に2回通った人も居るだろうが、『設定』だから、そういう特殊例には対応していないか。」

「だから、某私学は医学部が無かった時代に医者などの同窓会が先に出来ていました。大学を卒業してから他の大学の医学部に編入する。というのも異世界ではたまにありますから。」


「話を元に戻して、対人地雷の話だが、マリーさん、地雷を撒いて大丈夫なのか。」

「いえ、大丈夫ではありません。地雷は何十年も残り、除去はきわめて困難です。今回地雷を埋める場所は斜面ですから、地雷が転がり落ち、(こし)と三角草野の間の斜面全域が危険になると思われます。」

「地雷原は作らないといけないものなのか。」

「マスター、三角草野の意図が不合理で行動が不可解である以上、衝突の危険は否定できません。後々のことを考えるとあまり好ましくありませんが、衝突が起きてから泥縄で何とかなるものでもありません。」

「事実上、撤去出来ないのがな。」

「何らかの方法でダンジョン影響圏の限界を広げることが出来れば、即座に処理できますが……。限界を超える方法は思いつきませんね。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ