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424:弛緩する関所

【越の国・頸城郡・谷底】


 三角草野から草鞋(わらじ)が列を作ってやってきて、ひっきりなしに大荷物を担いだ商人達が関所を通り抜ける。一方、(こし)方面からは荷物が少ない身軽な商人達が三角草野へ帰って行く。

「商人が通過した数は確認している?」

 頸城(くびき)郡司(ぐんじ)は関所の役人に聞く。

「はい。図書館都市へ『亀等(かめら)』というカラクリで記録が送られるそうです。」

「亀等ねぇ。亀の首に見えなくも無いけど……。」

 郡司は監視カメラを見上げる。

「植物の持ち込禁止は徹底しています。ただ、(むしろ)(みの)(かさ)は開封して検査すると再梱包が面倒なので、開封までは求めていません。」



【三角草野ダンジョン・太陽神殿】


「猊下、(こし)への浸透は順調です。また、交通量の多さに関所の役人は手を抜き始めています。ですが、紫蘇どもには相当怪しまれていますから、彼らの手が届く(こし)南東部へは深入りしない方が良いでしょう。」

「うむ、よきに計らえ。」

 カレクス・セスピトーサ、谷地坊主(やちぼうず)を並べる者の報告に、シペルス・パピルス、太陽に愛されし者が答える。


「沼を渡る者、葦舟の量産は順調か。」

「猊下、大型、小型とも順調です。しかしながら、ダンジョン外の移動手段がありません。」

 葦舟使いのスキルプス・カリフォルニクス、沼を渡る者が答える。

「あまりに船に頼りすぎているな。」

「ダンジョン内ならどこでも船で十分ですから、仕方ありません。ただ、船もダンジョンの端までとなると時間が掛かりますが。」

 浮遊する草鞋(わらじ)は高くは飛べないとはいえ、草原や道路の上を飛行することでどこでも行く事が出来る。

「とはいえ、長距離・大量の輸送に船にまさる物は無い。紫蘇ダンジョンみたいに転送陣を無理矢理使うのはバカだ。」

「猊下、いかにも紫蘇どもは定石を外れております。しかしながら、わずか数年で規格外規模のダンジョンに成長したという事実は、それが殺戮の結果とは言え十分に警戒すべきと思います。」

「記録を見る限り、修羅にしては殺しすぎている。『鳴かぬなら、殺殺殺殺殺殺殺、ホトトギス』だったか。何か黒幕がいるのかも知れない。沼を渡る者、注意が必要だ。あと、筵を編む者を呼べ。」

「御意。」

 織田信長どころか張献忠みたいに言われているが。


「猊下、筵を編む者、参りました。」

 レピロニア・アルティキュラータ、筵を編む者がやってくる。

「筵を編む者、さらに『行商人』の数を増やし関所を飽和させ、種子を持ち込むことは可能か。」

「可能とは思われますが、知られた場合に報復の危険があります。なにしろ相手はあの殺人狂です。人員だけ送り込み、(こし)南東部からの引き揚げと合わせて一挙に関所を突破して種子を運び込むと良いでしょう。」

「ただ、関所からの輸送手段が問題だ。ダンジョンの外では船は使えぬ。商都梅田の『鉄道』だったか。それならダンジョンの外でも使えるそうだが。」

「猊下、あのような絡繰りは『電気』という、限られたダンジョンが持つ特殊な力が無いと動かないそうです。歩くしかありません。」

 もちろん電気はダンジョンの機能では無く物理現象なので、発電機と燃料があれば電力は入手可能だが、この世界では知られていない。

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