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422:第二段階

【三角草野ダンジョン・太陽神殿】


「猊下、さすがに越山(えつざん)まではさせられませんが、(こし)は動揺しています。また、(こし)国内への『行商人』滞在人数は2,000を越えました。」

 禿頭の神官、カレクス・セスピトーサ、谷地坊主(やちぼうず)を並べる者が現状を報告する。

「なら、(こし)救済計画は第二段階に移行。次は(こし)に疑惑の黒い霧を流す。あと、第三段階に移る前に、紫蘇の手が届く範囲から商人を引き揚げる。」

「賢明かと思われます。通常、ダンジョンは侵入者が居る場所に直接罠を生成することは出来ませんが、記録を見る限り紫蘇ダンジョンは敵の足元に落とし穴を作る戦術を常用しています。最初からそこら中に落とし穴が仕込んであるのか、何らかの固有法則かは不明ですが。」

「厄介だな。しかも紫蘇ダンジョンの中枢を守る怪物も未だ正体不明と来た。」

「修羅ダンジョンだから怪物も修羅とは限らないのが問題です。少なくともダンジョンの主題と関係するのは間違いありませんが。」

「主題か……図書館……だが……まるで想像が付かぬ。しかも怪物は自然法則を超越した強さを持っていたりする。ダンジョン間戦争など不毛なので、やらないに超したことは無いが。」

 三角草野で草鞋(わらじ)が浮かぶのも物理法則ではあり得ない。


「猊下、正体を掴めないのは、実は今は存在せず、必要になったら相手に合わせ生成する。なんてことは無いでしょうか。」

「確かに後出しは有用にも思えるが、それは無い。使い捨ての一般怪物ならともかく、名前付き(ネームド)の怪物は経験を積むと強くなる。手の内を知られないよう隠しているだけだろう。」

「大きすぎてダンジョンの外では行動できないため知られていない。という可能性もあります。」

「自重で潰れる。か。潰れないまでも、例えば西の(かが)の国の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)は重すぎるので、ダンジョンの外では腹が傷ついて血を流すことになる。ただ、ダンジョンの影響圏内なら重さで潰れることも無いので、やはり意図的に隠しているに違いない。」



【第34層群・生涯学習棟・小研修室】


 図書館都市ダンジョンの最下層、地表にある第34層群に(こし)の両替商、越後屋がやって来た。サド産の小判を届ける。という。

図書頭(ずしょのかみ)様、三角草野の蚊帳吊草(ファミリー)修羅だが、各所で賄賂を持ちかけている。稲をやめて変な草を植えるよう依頼しているが、百姓に作物を変えさせるなんて無謀では無いか。」

 越後屋は巻いてある紙を広げた。ごわごわの(かんな)屑のような紙に、下手な絵と変な文字が書かれている。

「わたしもこれは読めませんね。三角草野は文化的に古代エジプトかと思っていましたが、文字が違いますね。」

「古代エジ?」

「異世界の文化です。このダンジョンもそうですが、一部のダンジョンは異世界の特定の文化と強く結びついています。ですが、三角草野の文字は、その『古代エジプト』とは異なりますね。」

 異世界の古代エジプトでも、一般の文書には有名なヒエログリフはあまり使われない。

「坊主は三千世界とか言う。」

「はい。1つの仏国土、三千世界には概ね10億程度の世界が含まれ、さらに仏国土は無数にあるそうです。宗教学では『マルチバース』と言いますが。」

「なんとも壮大な話だ。」


「それで、稲に切り替えるのはとても簡単ですが、稲を辞めさせるのは無理でしょうね。米は『地位が高い作物』と信じられていますから。実際には米を食べるのは人間と獣人のごく一部だけですが。」

 人間だって(こし)ならともかく武蔵(むさし)では主食は麦などの雑穀や芋。米は冠婚葬祭でしか縁は無い。

「つまり徒労という訳か。」

「利害で動くはずの修羅にしては、何かずれている気がするんですよね。三角草野。何か黒幕でもいるのかもしれません。越後屋さん、何か気付いたことがあったら何でも知らせてくださいね。」

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