表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
420/462

420:雑草たちと植物検疫

【越の国・頸城郡・谷底】


 (こし)国府・今池の西から三角草野へ向かう谷は(こし)北端では深い谷になっている。急斜面をよじ登るより谷沿いに侵攻するほうが容易なので、図書館都市は(こし)に谷を塞ぐように要塞を作らせている。要塞は今池から180km、図書館都市ダンジョン転送陣の端から240kmの場所。

「で、やっぱり頸城(くびき)に来るのね。」

 愚痴る頸城(くびき)郡司(ぐんじ)。丘の上の見張り台から谷に向けて進んでくる草鞋(わらじ)が見つかったため、郡司達は急遽砦に駆けつけた。

郡司(ぐんじ)様、ここが三角草野の中心から一番近いと思われます。なお、草鞋(わらじ)1つに乗ることができる蚊帳吊草(カヤツリグサ)修羅は多くても5人程度で、ダンジョン外では固有法則は使えませんから、軍事的脅威は無いと思われます。」

「また使者でしょうか。」

「おそらく。」

「なら、面倒事は図書館都市にお任せね。」



【第三層群屋上展望台・世界樹】


「何度来ても同じです。稲を雑草に切り替えることは出来ません。」

 砦に通信を繋いだマリーは言う。来訪者は蚊帳吊草(カヤツリグサ)修羅3人。いずれも大荷物を背負っている。

「フィンブリスティリス・セリアケア、砂浜で遊ぶ者。今回は(むしろ)(みの)(かさ)を売りに来た。後ろの2人は、フィンブリスティリス・ウェラータ、沼で布を織る者とフィンブリスティリス・フェルギネア、岩を積む者だ。」

 三角草野の住民は本名を秘匿し、種族名と通称を名乗る。名前から分かるように3人は同属。


(こし)は米所で、こういうものは稲藁や竹で作ることが出来ますから、あまり売れないとは思いますが。」

「いや、別に売れなくても大丈夫だ。目的は……あ、いや、全く売れない訳は無いし、三角草野には材料は無尽蔵にある。」



【越の国・頸城郡・谷底】


 (こし)国府・今池まで歩いて5日もかかるのに、商人達は続々とやってきた。

「種は没収。生きた植物の持ち込みは禁止だ。」

 砦には常時侍数人、足軽10余人、武家奉公人約10人が詰める立派な関所が設置され、大荷物を背負った蚊帳吊草(カヤツリグサ)修羅達が列を作っている。



【第三層群屋上展望台・世界樹】


「三角草野って、こんなに行商人が多いダンジョンとは思わなかったな。」

 ダンジョンマスターが関所を映した空中の仮想窓を見ながら言う。

「人口が分からないから何とも言えませんが、異世界江戸時代の越中なら人口約60万人に5,000人の薬売りがいたそうです。この世界、ほとんど砂漠ですから、三角草野に行商人がたくさん居たとしても1万人を越えるとは思えませんね。ただ、1/4が(こし)へ来たとして、多ければ2~3千人になる可能性はあります。」

「もし、食料生産ダンジョンだったら、かなりの人口が居たりしないか。」

「マスター、食料生産はダンジョンエネルギーよりも太陽エネルギーを使う方が得ですから、そうでないダンジョンはそこまで大規模になるのは難しいと思います。おそらく三角草野の本質は草原で、草原の草を絞ったものが食料だと思われます。その場合、人口が百万を超えることは無いと思われます。」

 修羅用なので、色は汚らしい緑色、味は夏場の藻が湧いたドブの水。異世界でもそこらへんの草をミキサーにかけたら似たような物が出来るが、人間への安全性は保証できないし、そもそも修羅と人間は必要な栄養素が異なる。


「それにしても、行商人達は今池で何をしているんだろうか。」

「ダンジョン影響圏の外はカメラを設置した場所だけが見えますから、分かりませんね。今池に監視カメラを置くのも政治的な問題がありますし。ただ、たいした需要も無いはずなのに何百人も商人が来るというのも妙な話です。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ