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418:三角草野、懸念する

【三角草野ダンジョン】


「カレクス達よ、春に向けた種蒔きの準備は良いか。」

 玉座に座る偉そうな修羅、シペルス・パピルス、太陽に愛されし者が、千人を軽く超える家臣達に問う。

「猊下、準備は万端です。春が来ると共に、不遜な下等植物どもを叩きのめして見せましょう。」

 代表してカレクス・モロウィイ、冬を越える者が叫ぶ。

「いや、直接衝突しても何も利は無い。動物どもがイネでは無くカヤツリグサを食べるようになれば良い。」

「猊下、しかしながら、南の紫蘇どもが、(こし)の端に刃物の付いた針金を敷き詰めて通行を妨げています。」

 草鞋(わらじ)ではなく葦舟使いのスキルプス・カリフォルニクス、沼を渡る者が言う。

(こし)の人間どもは、タイガーナッツやウォーターチェスナッツでも食べれば良いのに、わざわざイネ科を栽培するという、あまり好ましく無い行為に手を染めているため、正しい道へ導いてやらねばならぬが……。紫蘇が稲に手を貸すか。うむ、沼を渡る者よ。後で報告を聞く。」

「御意。」

「長きにわたった日陰者の時代は終わる。我ら蚊帳吊草(ファミリー)こそが草原の覇者と万人が認めるであろう。」

「おー!」



【三角草野ダンジョン・太陽神殿】


「沼を渡る者よ、確か(こし)は高い場所にあったな。」

「はい。大和堆(やまたい)国と同様、この三角草野より高い場所にあり、こちら側は急な斜面となっています。その上に、通行を阻む針金が張られ、紫蘇ダンジョンが見張りを置いています。」

「ダンジョン間戦争など、迷惑をまき散らすだけで誰も得をしないが、紫蘇どもはいったい何を考えているのか。」

「猊下、あのダンジョンは稲を大量に栽培し、人間に食べさせることでダンジョン内で飼っています。(こし)も稲の産地なので、人間を食べさせるために必要なのでしょう。」

「殖やしやすい人間を大量に飼うことで、お手軽に力を得るか。修羅としては無能すぎないか。人間が殖えすぎて破綻するのは分かりきっているのに。」

「修羅は傲慢ですから、彼らは、住民に人間が多くても、縄文王国諏訪湖みたいに長く存続できると思っているのでしょう。」

「縄文王国は意図的に社会を停滞させることで破綻を防いでいるが、紫蘇は明らかに進歩志向でダンジョンを運営している。300年どころか100年かそこらで破綻し、数百万の難民をまき散らすことになるだろう。」

「猊下、三角草野にも悪影響が出ますか。」

「うむ。大量の侵入者を駆逐することで一時的に過剰な力を得る。ここで政策を誤ると、浪費した挙げ句に維持出来ず破綻、後には不毛の砂漠が残るという、過去に滅びたあまたのダンジョンの轍を踏むことになる。」

「……。手に負えなくなる前に、なんとかした方が良いだろうか。」

「そもそも、どうやって攻略する? 半径100イテルゥ(1,050km)を越える特大ダンジョンだぞ。」

「……それは……。」


「ダンジョンの固有法則は、ダンジョン内でしか機能しない。ダンジョンは圧倒的に守る方が有利。紫蘇の固有法則は不明だが、あまりにも成長が急なので、おそらくダンジョン拡張に関わる物と思われる。ただ、(こし)の端を影響圏に組み込んでいないということは、おそらく距離の限界だろう。」

「猊下、つまり、ここまで手を出してくる心配はしなくて良いと。」

「ダンジョンは他のダンジョンの影響圏を侵蝕することは出来ないから、紫蘇ダンジョンが三角草野の隣にあってもその心配は無い。それに、浮上する葦舟が使えるのは三角草野の強みだ。紫蘇と言えども飛び道具は使うようだが、こちらの影響圏で空を飛ぶことまでは出来ない。」

「確かに、紫蘇が空を飛ぶための何らかの固有法則を持っていても、三角草野の影響圏では使えないか。」

「逆に、あの規模のダンジョンをこちらから攻略するのは難しい。かといって放置して良いものでもないが。」


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