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417:図書館都市が地雷まきゃ三角草野がほじくる

【第三層群屋上庭園】


「機関銃を製造して遠隔操作。やはり難しいですね。機関銃の量産は手に余ります。」

「マリーさん、鉄条網だけという訳には行かないし、(こし)の大軍を常時貼り付けるのも難しいな。なにしろ500kmもある。」

「効果的に足止めするために大量破壊兵器が必要ですね。とはいえ、化学兵器も生物兵器も問題があります。」

「確かに。ムック本の付属には無いから作らないといけないが、作るのは無茶だ。」

「相手は蚊帳吊草(ファミリー)の修羅なので、カヤツリグサ科専用の除草剤が必要ですが、異世界の水田用除草剤を正確に生産することは、このダンジョンの工業力の限界を超えます。間違えてわたし達にも被害が出たら困ります。」


「いっそ、ラジウム爆弾で先制攻撃を仕掛けて吹き飛ばすか。」

「マスター、それこそ到底手に負えませんね。トリウム原発は燃料のトリウムをウランに変換し核分裂を起こしますが、爆弾としての利用には向きません。ウランのうち核分裂を起こすものはごく少量ですから、ウラン原発では『濃縮』を行いますが、商業利用される海水からの化学濃縮法では濃度20~30%に達すると臨界事故を起こすため、ラジウム爆弾には向きません。そもそも論として、この世界には海がありませんからウランの入手は困難です。」「装置どころか原料も無いか。」

「それに、ラジウム爆弾は土地を汚染します。アメリカがアラスカで港を作ろうとして無様な失敗に終わった『チャリオット計画』というのがありますが、使い物にならない汚れた入り江が出来ただけでした。貯水池(チャガン湖)を作ろうとした労農ロシアよりはマシですが。ただ、この点は、三角草野の土地をもう使わないなら問題ありません。」


「要するに、このダンジョンの技術力で安全に生産でき、金銭的にもダンジョンエネルギー的にも低コストな大量破壊兵器が必要と。」

「はい。確実性には欠けますが、地雷くらいでしょうね。これも後始末が大変ですが。」

「なら地雷で良いのではないか。」

「その方向で検討しますか。ならば、地雷の『雷』は、トネール()なのかフードゥル()なのか。コードネームはトネール(tonnerre) (de) (la) テール(terre)にしましょうか。」

「いや、コードネームが必要な物でもないと思うが。この世界にも地雷くらいあるだろ。」

「忍びが使う埋火(うずめび)は火縄を使用するため、実際には短時間しか使用できません。この世界の娯楽小説では相当に脚色されていますが。」

 物価の換算方式で異なるが、木版印刷のため本1冊は数千~数万円程度。当然ながらダンジョン内で出版された書籍は全てダンジョンに提出する義務があり、ダンジョン外でも関八州付近に関しても概ね収集されているが、別にマリーが全部読んでいる訳では無い。

「不発弾が残るんだよな。」

「手作業で埋めるのは事故の危険がありますから、地雷散布装置を考えています。このため地雷の位置は正確には分かりません。さらに、三角草野方面は異世界の大陸斜面に相当する斜面なので、埋設した地雷が移動する危険性が高く、余計に位置は不正確になります。」

「つまり、一度地雷原を作ってしまうと、取り返しが付かないか。」


「三角草野が『善意の押し売り』を止めるなら、それで解決ですが、もし鉄条網を越えようとするなら、地雷で『区画わけ』する必要が出てくるでしょう。とはいえ、相手の出方を伺っていては間に合わなくなります。」

「なら、常に最悪の事態に備える。か。」

「それも現実的ではありません。脅威になる『かもしれない』ダンジョン全てを破壊するというのも無茶苦茶です。」

「可能性で言い出したら、他の全てのダンジョンを破壊し、冒険者を殲滅しないといけなくなるな。」

「影響圏外では固有法則を使えないダンジョンよりも冒険者の方が危険性が高くなります。そして冒険者が出てこないよう六道・外道問わず知的生命体を根絶なんかしたら、ダンジョンはエネルギーを得られず死滅します。」

「飼っている冒険者に手を噛まれて滅びた人間牧場もありそうだな。」

「それは多いでしょうね。全員を満足させるのは不可能ですし、突発的な気の迷いというのもあり得ますから。幸い、このダンジョンには『魔法』などはありませんから、コアを守るのは比較的容易ですが。」


「三角草野が種蒔きを始めるとして、春かな?」

「春を待たずに新年早々ということもあり得ますね。雑草は、品種改良された異世界の野菜みたいに、種を播いたらすぐ発芽するというものでもありませんから、今撒いても発芽は暖かくなってからです。そして、このダンジョンで推奨している、田植えの両正条植えと道具を使った除草でも、稲のすぐ横に生えた雑草は手作業で抜かないといけません。」

「ただ、(こし)の水田は四角くないから、正条植えも難しいか。」

「既存の田畑の圃場整備は難しいですからね。確かに、余計に面倒なことになります。しかもダンジョン外ではダンジョン構造物は使用できませんからね。水路だって何だって全て補修が必要になってきます。」

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