415:求む、さらなる影響圏拡張(参考地図あり)
【第三層群屋上展望台・世界樹】
「マリーさん、ダンジョン影響圏の外だから、ダンジョン構造物が使用できず、敵を倒してもダンジョンエネルギーは得られない訳だな。」
「はい。ダンジョンの仕様の制約ですね。」
「そして、このダンジョンの影響圏は三角草野に届かない。」
「現在、影響圏半径は1,373.45km、うちダンジョンシステムで管理可能なのは1,231.15km、255リーグですね。もちろん、村や他のダンジョンの周囲は影響圏には組み込めません。一方、三角草野までは1,500~1,600kmほどあります。」
「なら、何らかの方法で影響圏自体を無理矢理拡張するか、それが無理なら、その辺のダンジョンを手懐けて拡張させる。というのはどうだろうか。システムでは半径255リーグ、765マイルだけど、ダンジョン自体の影響圏の限界は別にヤードポンド法で決まっている訳では無いと思うが。」
「確かに、マイルは自然に基づく単位ではありませんからね。おそらく、システムに寄らない最終的な限界は何らかの単位には依存しない定数に基づくとは思われますが、どこにも情報はありませんね。」
「さらなる拡張は可能だろうか。」
「出来れば良いのですが。例えば商都梅田までダンジョン影響圏を拡張できれば、苦労して道路を作る必要は無くなります。でも、方法は見当も付きませんね。小塚原刑場ダンジョンみたいに多量のエネルギーを溜め込んだダンジョンコアを吸収する。というのも過負荷の危険があり、別に虫に変身したりはしないでしょうが、脳が焼ききれる可能性があります。そして、それで影響圏を拡張できるかは不明です。」
「ならば、小さいダンジョンコアを少しづつ取り込む。とか?」
「確かに、管理者も居なくて地域の役にも立っていない、旅人が疲れるだけの有害無益な峠ダンジョンなどは無い方が世のためでしょう。さすがに魔の山谷川となると駆除は困難でしょうが。」
「箱根八里とか。邪魔な峠道として悪名名高いが。」
「ダンジョンが関所を運用しているということは、おそらく管理者が居ると思われます。丹沢ヒルズみたいにダンジョンと直接関係ない種族が棲み着いているだけの可能性もありますが。そして、ダンジョン間戦争なんて、守る方が圧倒的に有利な上に、攻める方は何も利益がありません。」
「なら、一番手っ取り早いのはダンジョン内での大量殺戮となるのか。」
「はい。生贄を大量に捧げればダンジョンは多量のエネルギーを獲得します。とはいえ、もはや、このダンジョンに戦争を仕掛ける者は居ないでしょうね。」
「こちらから仕掛けないといけないか。」
「仕掛けた上で、こちらの影響圏内で倒さないといけません。あるいは、奴隷狩りをして奴隷を大量に生贄に捧げるのは有効ですが、どちらも立場上できませんね。アステカでは無いですから。」
「まぁ、関八州の『秩序の守護者』を演じているからなぁ。」
「修羅というのは、本来もっと自己中心的で好き放題するものです。ですが、関八州の安定は、このダンジョンの存続に直結しますからね。わたし自身は好き放題しても、ダンジョンの『組織』としての運営理念は『物心共に健康で豊かな生活を実現する』であり、そのために運営しないといけません。」
「マリーさんが好き放題すると言っても、贅沢の程度は、たかが知れているとは思うが。せいぜい世界樹の下で本を読んでいるか、屋上庭園で植物を育てるくらいだろ。」
「晴耕雨読。と言えばなにか文化人、読書階級っぽく見えますが……選挙で菊池寛に投票しないといけませんか。わたしが? これが『スローライフ』なのでしょうか。」
「いや、さすがに人口100万の巨大ダンジョン都市を統治するスローライフなんて無いと思う。」
図書館都市ダンジョンの影響圏は半径1,373.45km。
ダンジョンシステムで管理できるのは、メインコアから255リーグ以内またはメインコアから255リーグ以内かつサブコアから100リーグで、間に村等が無い場所のみ。つまり255リーグ以内でも、他のダンジョンの向こうはシステムでは管理出来ない。
また、サブコアから100リーグ以内であってもメインコアから255リーグを超えていたら、ダンジョン影響圏内であってもシステムでは管理出来ない。
枠は1200km四方。点がコア。青線は影響圏限界。赤線の範囲がシステムで管理可能な領域。村や他のダンジョンの向こうはシステムでは管理出来ない。