412:マルチコア・ダンジョン(参考地図あり)
【第三層群屋上展望台・世界樹】
「今後、三角草野がどう出るか、ですね。服装は、おそらく古代エジプト。統治者がパピルスという証言とも合致します。技術水準は不明ですが、産業革命以降の可能性は低いと思われます。それにしても、サブコアにあんな使い方があったのですね。」
「このダンジョンを研究したそうだが、サブコアを使うというのは、さすがのマリーさんも気付かなかったか。」
「『ダンジョン・ワンノーワン』どころか大百科にも見当たりませんでしたから。ありがたく採用させてもらいますね。え~と、真北と南西南東。360・120・240の3方位。100リーグなので482.8kmと。北は毛の国の山の中、南東は総の国、南西は……丹沢ヒルズの中ですね。なら丹沢ヒルズは除いて2カ所ですか。」
「マリーさん、先日は商都梅田の複数コアを否定していたじゃないか。ダンジョンエネルギーが無駄って。」
「既存の町の裏側へ影響圏が拡張できる、しかもダンジョン全体の半径は変わらないので必要な生贄も増えない。それなら、やるしかないでしょう。え~と、北は機能し、南東は……ダメですね。なぜでしょうか。」
「カヤツリグサ科は三角でシソ科は四角なので、三方向というのは単に三角草野の特性とか。」
「つまり、東西南北に。ですか。……正解のようです。あとはサブコアを起点に影響圏を広げるだけです。つまり、ダンジョンによっては、5方向とか7方とかあるのでしょうね。」
「マリーさん、サブコアの影響圏限界はどれくらいだろう。」
「100リーグ、482.8kmですね。」
「どんどん外側にサブコアを設置していったら、世界の裏側まで影響圏を広げられるんだろうか。」
「いえ、システムによる管理ですから、ダンジョン影響圏の限界は255リーグ、1,231kmと思われます。それ以上に拡張できるのなら、直接ダンジョンで三角草野を止めるのですが。ともかく、準備が出来次第、どこまで外側へ追加できるか確認ですね。」
「まだ、当初の影響圏すら使い切っていないのに、気が早いのでは。」
「可能なら早めに確保しておいた方が良いでしょう。変な場所に誰かが村を作ったり、ダンジョンが誕生したりしたら困ります。」
平然と二重規範を決め込むマリー。
「まず、北側が毛の国の山の中で、標高はこのダンジョンを規準に1,300m。このコアでは水の入手はタダ同然ですが、サブコア、特に北のサブコアは余分にエネルギーが必要なようです。数値化できないので、なんとなくですが。」
「きちんと位置エネルギーが計算されるのかな。」
「標高が高い場所のサブコアで水を召喚して水力発電すれば永久機関。とはいかないようですね。ちなみに見沼の水面が-150mです。」
「海面が無いからな。」
「標高は任意に決めるしかありませんね。東側が東の国、土浦城の近くで、標高は-150m。あまり影響圏は広がっていません。南側が武蔵の国南端の丘陵地帯で、標高200m。こちらはかなり影響圏が広がります。最期に、西側が秩父の山奥で標高0mとなります。」
「こうして地図を見ると、このダンジョン付近の地形は特異だな。比較的平坦で細かい標高差がある。」
「西の入間川・吉野川と、東の太日川の間は無人地帯で他のダンジョンも見当たりませんし、過去に何か大惨事があったのかもしれませんね。南にある廃ダンジョンは200年前に滅びたそうですが、地形まで変わったという記録はありませんし、おそらく相当古い出来事なのでしょう。」




