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409:リーメス、あるいは百里の長城(参考地図あり)

【第三層群屋上展望台・世界樹】


「空飛ぶ草鞋(わらじ)はダンジョン影響圏を出ることは出来ないでしょうから、防空までは考えなくて良いと思いますね。つまり必要なのは、容易には破壊されない監視カメラ群と、迅速に外征軍を派遣できる道路でしょう。」

「ファリゴールさんが言ったように、影響圏の膨張を阻止するためには、どの程度の施設が必要か、だな。」

「それこそ茶屋であっても人が住んでいれば大丈夫でしょう。旅人もいないのに茶屋なんて経営が成り立ちませんから、監視塔を並べて兵士を数人づつ詰める。あるいは灯台を並べて侵入者を見かけたら照らす。」

「マリーさん、確か灯台草科というのがあったような。」

「表記としては燈台草ですね。別に照明に使う訳では無く、なんとなく見た目が燭台に似ている。ということですが。それで、監視塔は鉄筋コンクリートと行きたいところですが生コンは長距離輸送できませんから、鉄骨造に石壁をモルタル補強したものになるでしょう。」

 ダンジョン影響圏外なのでダンジョン構造物は使用できない。

「鉄骨程度なら、あまり無茶にダンジョンエネルギーも必要無いか。」

「冬は(こし)の農民は暇でしょうから、冬の間に人数を集めて一挙に鉄条網と監視塔を作ってしまいましょう。もし三角草野の者が雑草の種蒔きをしているのなら、柵を越えようとするはずです。」

「鉄条網なのか。万里の長城のようなものを考えていた。」

「さすがに1万里、中国なので5,000kmは必要無いと思いますが、500kmとしても石や煉瓦の壁を冬の間に作るのは無理でしょう。蛇腹鉄条網なら有刺鉄線を搬入して簡易な杭に固定するだけで済みます。世界大戦で多用された方法ですね。」


「それで、構造としては?」

「まず、柵は鉄条網。柵に沿って監視塔を並べ、カメラを有線及び無線でダンジョン影響圏と繋ぎます。三角草野から誰か来たら(こし)の兵士が急行し、侵入するようなら対応します。」

「塔に機関銃を設置して遠隔で操作はできないのか。」

「マスター、確かに機関銃なら、この世界では絶大な威力を発揮するでしょう。日露戦争で日本が政治的には勝ったものの戦闘ではひどく苦戦したのも機関銃のせいですね。最期は英仏の助けでバルチック艦隊を全滅させて決着が付きましたが。」

「イギリスは分かるが、フランス?」

「さんざんイギリスに嫌がらせされた上に、とどめとしてベトナムで味方のはずのフランスに、高級石炭(ホンゲイ炭)と偽ってクズ石炭を売りつけられたのが敗因ですね。フランスってわたしに似て、平気でそういうことしますから。」

 あまり煙の出ない無煙炭を積んだはずなのに、盛大に黒煙を上げていたという証言が残されている。

「さすがに、それはあまり褒められたことではない。」


「それで、村によるダンジョン影響圏の阻害は、だいたい半径1里くらいですね。つまり、2里以内で村や詰め所などをきちんと並べれば影響圏の膨張は阻止できます。村の前には有刺鉄線による鉄条網、鉄条網に沿って機関銃が届く程度の間隔で監視塔を並べます。監視カメラは備品として入手可能ですが機関銃は量産出来ないため後日となります。鉄条網の外側は、もし必要なら将来的には地雷原ですね。」

「地雷なんか埋めたら大変な事にならないか。」

「斜面ですから、何かあっても三角草野の方へ転がっていくだけです。もちろん、地雷原にするかは三角草野の出方次第ですが。」



挿絵(By みてみん)

「全体的な構造としてはローマのリーメスを真似して、最前線の鉄条網を中心とする長城に対し、後方から軍道を作ることで迅速な支援を可能とします。いわば、異世界で言うところの特番号の国道ですね。あれは国道と言いつつ片側1車線だったりしますが。」

「マリーさん、この世界、ローマ軍団は無いだろ。特に(こし)みたいな土着勢力には。」

「国同士の戦争は少なく、ダンジョンの怪物も大抵は外には出てきませんからね。(こし)の兵力は推定2万程度ですが、全体を組織化することは出来ません。」

「案外少ないな。筑波は3,000人くらい動員していたが。」

「だいたい武士と足軽は人口の5~7%で、半分は官僚で子供や老人も除外しないといけませんし、この世界、女性は基本的に籠城しかしませんから、戦力は人口の1%も行きません。筑波は冒険者を大量に中間(ちゅうげん)として雇っていましたし、異世界江戸時代の大名行列だって金銭で雇って水増ししていました。」

「そうなると、本格的に三角草野と衝突したら厳しいか。」

「年貢米とダンジョンエネルギーを盛大に浪費するなら手はいくらでもあるのですが……。やりたくありませんね。」

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