表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
408/462

408:影響圏外は金食い虫

【第三層群屋上展望台・世界樹】


「と、ファリゴールさんからの提案が上がっている。(こし)の北側に何らかの施設を並べることで三角草野の拡大を阻止するということだ。」

「マスター、はっきり言って、ダンジョン影響圏外に長城のたぐいを作るのは気に入りません。仕方ないこととは言え。」

「規模としては、転送陣などと比べたら、そこまで大きくも無いと思うが。」

「ダンジョン影響圏内のダンジョン構造物による施設は、ダンジョンエネルギー、つまり多数の住民に『物心共に健康で豊かな生活を実現する』ことで自然と手に入る力で維持出来ます。一方、ダンジョン影響圏外の施設というのは、作るのにも維持するにもお金が必要です。武士みたいに知行あるいは蔵米で現物払いするにしても同じ事ですね。」

「米は通貨だからな。」

「米を入手するには年貢を徴収する必要があります。ダンジョンエネルギーで動く転送陣であえて運賃を取るなど補ってはいますが、このダンジョンの収入の柱は年貢です。ですが、年貢を過度に増やすと確実に一揆が起きます。せっかく物理的インフラはダンジョンの機能で賄っているのに、必然的に肥大化する官僚機構、怠ることは許されない技術開発、不可欠な影響圏外の道路に加え、それを守るためのウサギ(USA G.I.)などの外征用軍事力、その上国境の壁まで必要になると、そのうち財政が破綻しかねません。」

「武士は、たとえ無職でも家禄は必要だからな。」

「かといって、全て官僚で賄って武士を召し抱えないと、これまた謀反が起きます。この世界、知行を貰う。というのがある種ステータスですからね。特に武士団の惣領には村単位の知行を与えないと納得しませんし、有力な武将は知行1万石以上が必須となります。」

「つまり、藩主という訳か。」

「はい。ただ、この世界では『藩』という用語はあまり使われませんね。播磨介(はりまのすけ)殿なら岸家中(かちゅう)左馬允(さまのじょう)殿なら仙波家中、入間(いるま)の仙波本家と区別したいなら自称官位を付け仙波左馬允家中と。岸村は今となっては、ここから10kmと近すぎますが、国人領主は土地に根付いているので、今更転封させる訳にも行きません。」

「社会を引っかき回すのが目的では無いからな。そこは仕方ない。なにか江戸幕府より権力が弱い気がするが。」


「そして、このダンジョンが影響圏内の施設には資金では無くダンジョンエネルギーを使っている。ということは住民はみんな知っていますから、年貢を四公六民から上げる訳にもいきません。もちろん商品作物を大々的に導入したり、交易の拠点となった村など、住民が納得する条件があれば別ですが。」

「異世界江戸時代の能登だったかな。九公一民とかいう。」

「貿易の拠点でしたからね。これに対し、純農村で九公一民なんかやらかしたら一揆が起きて領主は打ち首ですよ。革命が起きてマスターは9回ギロチンにかけられることになります。」

「それは断固お断りだ。それに、命が9つある保証も無い。」


「ともかく、(こし)は人口300万の大国なので、三角草野を止める費用は(こし)自身に負担して貰うしかありません。」

「もし断られたら。」

「困りますね。300万もの難民は手に余りますが、まさか転送陣を止めて見捨てる訳にもいきません。それ以前に転送陣の輸送能力では300万人とその荷物を運ぶのは困難です。」

「ああ、荷物があるか。いくらこの世界は家財道具が少ないとは言っても、農村だと相当農具があるからな。」

「異世界で、どこの郷土資料館にも唐箕が転がっているのは、高価な農具だったため捨てるに捨てられなかったためです。そんなものを十万二十万と運ぶなんて悪夢です。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ