404:隣のダンジョンを覗き見する方法
【第三層群屋上展望台・世界樹】
「このダンジョンで越方向へ延びる転送陣は3本、まず、魔の山谷川の西を抜け渟足柵の東からサド方面、方位330ですから北北東ですね。ただ、異世界の佐渡と違ってサドの山々は3kmを越える高さがあり、サイタマイルタワーより高くなっていますから、その向こうを見ることは出来ません。」
「山が邪魔か。」
「2本目は、少し西の方位322、北東少し北方向ですね。こちらは穴地獄の東を通りますが、やはり三角草野まで距離があるため、越がある平地の端までは視界内ですが、その先、三角草野の内部を伺うことはできません。そして、最期の1本は北東、方位315。越国府・今池の方向ですが、さらに手前までで三角草野へは遠くなります。」
「ダンジョン構造物の単位が最大1マイルとしても、それを積み重ねることは出来ないのか。」
「このダンジョン本体の塔以外では積み上げるにも限界がありますから、あまり高い塔を作ることはできませんし、上空は普通に空気が薄くなりますから、仮に塔を作っても活用出来ません。あと、世界は丸いので、仮に新高山くらいの塔を作っても、さほど遠くまで見ることは出来ません。」
新高山は台湾にあり、異世界日本国内では最も高い山。ブルドーザーで登山する富士山と異なり徒歩登山のみのため登頂は大変。
「固有法則による環境保持は、この塔だけか。何かと使いづらい仕様だな。いっそ人工衛星でもあれば……。」
「さすがに宇宙は手が出ませんよ。地道に情報収集するしか無いでしょう。相手はダンジョンですから、影響圏に踏み込まなければ深刻な脅威では無いとは思われます。」
「でも、影響圏内だと何が起きるか分からないな。」
「安易に冒険者を送り込んで死なれても困りますからね。かといって名前付きモンスターは復活可能ですが大量にダンジョンエネルギーが必要ですし、死にたい人は居ないでしょう。」
「みな無駄に能力が高いからな。」
能力が数値化される世界では無いが、イメージ的にはマリーは知識AA、知能A、感覚D、器用B、敏捷C、筋力D、持久力A、精神力AA、魔法×、健康AA、運AAといった感じ。A=優秀・B=平均以上・C=平均的・D=平均以下・F=人間失格といったところか。
「名前付きは数が限られますから、仕方ありません。」
「で、どうする。」
「さぁ。越で派手にインフラ整備でもしたら、勝手に向こうから接触して来そうな気もしますが、ダンジョン影響圏外なので、あんまりやる気はありませんね。人工的に壁となるダンジョンを作って無秩序な拡張を止める。というのもダンジョンの作り方など分かりませんし。」
「ダンジョンコアをどこかで拾ってきて設置する。というのは無理か。」
「ダンジョンから取り出したら、ただの鉄ニッケル合金ですからね。商都梅田みたいにコアを多数持つのもダンジョンコア自体が攻略困難なら必要ありません。まぁ予備コアを塔の地下深くに埋めておくのも良いかも知れませんが。」
「万が一。ということもあるから、問題点が無いならやった方が良いのでは。」
「そもそも、かなりの大規模ダンジョンでないと複数のコアは保有できませんし、サブコアは世界の中心から取り寄せるわけで、かなりのダンジョンエネルギーが必要ですね。もちろん維持費も必要です。あと、電算機のマルチコアと違って、ダンジョンコアを増やしてもダンジョンの性能が上がる訳ではありません。商都梅田は、あんなに多数のダンジョンコアを抱え込んで、いったい何がしたのか全く分かりませんが。」