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403:見えないダンジョン内部

【第三層群屋上庭園】


「もし三角草野が、このダンジョンと同じく、ダンジョン影響圏半径が1,371km、地表面に沿ってなら1,373kmまで広がった場合、三角草野のコアがどこにあるのかは分かりませんが、場合によっては(こし)どころか()の国まで呑み込まれる可能性があります。」

 マリーは地図を示しながら説明する。

「やっていることは、このダンジョンと同じでは無いのか。」

「わたしは、空飛ぶ草鞋(わらじ)から旅人を襲ったり、村に雑草を蔓延らせて住民を追い出したりはしません。ただでさえ砂漠で食料が不足気味のこの世界で、流通を阻害し村を次々滅ぼしたりしたら深刻な飢饉が発生しかねません。そうなったら、このダンジョンが得られる感情エネルギーが減って致命傷になりかねません。」

 元が図書館だからか、空腹感のエネルギー変換効率は悪い。

「ただ、情報が不足しすぎているな。使者を送るにしても交渉が通じる相手とは限らない。マリーさんも使者は処刑しただろ。」

「猫啼温泉の日本駄右衛門は海賊でしたからね。いっそロボットを送り込むとか。生きていないなら壊されても勿体ないだけです。AGV(無人搬送車)、第三層群の図書運搬システムあたりでしょうか。草原で使用できるかは分かりませんが。」

「車輪を大きくするとか。あるいは飛行型ドローンを使うとか。ゴーレムでも使えれば良いが。」

「ゴーレムも特定のダンジョンの機能ですから、このダンジョンでは使えません。額に『しんり』と書いてあり2文字消すと止まる。というのは有名ですが。」

「ヘブライ語と日本語のゴーレムは存在するが、他にも対応した言語があるんだろうか。」

「いずれにせよ、サイタマイルタワーの高さは1.6kmなので視界半径は140kmですから、相手のダンジョンの奥までは電波が届きません。電離層は信頼性に欠けます。ここは、本格的な自律型の無人偵察機が欲しいですが、飛行機工場はありません。」

「図書館ダンジョンであって工場ダンジョンではないからなぁ。本しか無い。」

「多すぎる本は燃料にしかなりませんね。ダンジョンの中では火は使えませんが、逆にダンジョン影響圏外では電気を使いこなすことは出来ませんから、燃料は必要です。」

 異世界で数十億冊発行された本は召喚コストが極端に安いため燃料にしても採算は合う。

「図書館の備品を改造は出来ても、何かをゼロから作ることは出来ない。」

「工場が無い。というのはこのダンジョンの欠点ですからね。工業製品には工作機械が必要なのに、工作機械が無い。いわゆる『服を買いに行くための服が無い』状況です。」

「現代文明って言うのは複雑だからな。」

「少数の修羅や眷属だけでは専門分野を網羅できませんからね。かといって技術者や熟練職人を何万人も召喚するなんて無理です。到底ダンジョンの召喚枠が足りません。」

「知性のあるモンスターは人数が限られるからな。」

「定型文を元に応対する。なら、名前無しのダンジョンモンスターでも出来ますが、そんな前世紀末あたりの原始的な人工知能程度では役に立ちません。それ以前の問題として、このダンジョンは一般モンスターの『職員』を召喚出来ませんが。」


「相手の意図と能力、特に能力の確認が必要だな。」

「潜在的なダンジョン影響圏の拡張限界、ダンジョンエネルギーの獲得状況、特にダンジョンを大規模化する場合、生贄の継続的な供給能力。あたりですね。広大なダンジョンは毎年数百人の生贄を確保しないといけません。そういう視点だと今後那須塩原(なすえんげん)は危ないでしょうね。」

「わざわざ生贄用意して船を使わなくても迂回すれば済むから、商人の通行が激減するか。」

「あのダンジョンは半径300km程度なので、必要な生贄は質にも寄りますが年100人程度でしょう。わたしの提案を断って、船便の数にかかわらず1隻1人の生贄を要求するからこうなるのです。」

那須塩原(なすえんげん)の茄子(ファミリー)修羅には寿命があるから、即座に破綻はしないだろうが。」

「このダンジョンでも住民の修羅には基本的に寿命はありますよ。一方、ダンジョンモンスターは寿命があっても無くても生贄の効果はありませんね。モンスターを呼び出して死なせて生贄の代わりにする。なんてことは出来ません。」

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