表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/550

040:騎士団? キシ団?

【丘の麓】


「書記長殿、岸団を連れてきたぞ。」

 代官、吉田西市佑よしだにしのいちのじょうの後ろに付き従うのは、いつもの配下達に加え、20人ほどの男達。馬は見当たらない。

「岸団、岸播磨介きしはりまのすけだ。」

 集団の代表と思われる初老の男が言う。

「全員徒歩ですが、騎士団?」

 マリーが聞く。

「岸団だ。」

「馬が1頭も居ませんが、騎士?」

「うむ。岸だ。」


「書記長殿、この岸団は腕は確かな武士団だが、いささか性格に難があるため、多摩たまでも入間いるまでも活躍の場を得られず浪人している。ここで召し抱えてくれないか。食い詰めて賊にでもなられたら困る。腕の良い賊なんて悪夢だからな。」

 体の良い厄介払い?

「え~と、播磨介はりまのすけ殿は馬には乗れますか。」

「むろん。騎馬身分は、岸田添下郡司きしだそえじもこおりのつかさ岸本会見郡司きしもとあいみこおりのつかさそれがしの息子2人の5騎。徒士かちが15人、あと霞ヶ関(かすみがせき)に家族や下男げなんなどが待機しておる。中間ちゅうげんは禄に合わせて雇う予定だ。」

 つまり、ラージャの馬を含め6頭居れば良い。


「人数から見て、必要な禄は2000俵くらいですか……。ですが、このダンジョン、この冬に水田を増やしても来年は2000石程度。当面は芋や燃料での現物払いになってしまいますが。」

「良いってことよ。そもそも、このあたりに米で禄を貰っている奴なんか居ない。普通は村を貰って芋や雑穀を年貢にする。いずれは村を1つ貰いたい。」


「あとは馬ですね。代官どの、やはり馬は難しいでしょうか。」

「難しいな。馬は馬食するから飼うだけで軽く年10両は必要だ。入間の南、多摩の府中ふちゅうは、比企なども含めこの国の中心となる町だが、そこまで行けば馬が居るとは思うが……居ると言い切ることも出来ない。」

 府中と言っても東京競馬場では無いので、普段は美浦みほに居る。なんてことも無い。

「何も千里の馬とは言いませんが。」

「千里? 書記長殿は馬に過大な期待を抱いておるようだが、現実には千里など不可能で10里か15里。この辺りのように道中に宿も無いなら、徒士かちを伴う行軍では1日5里だ。街道なら8里から10里は可能だが。」

「千里は名馬の例えで、わたしも実際に千里走るとは思っていません。常歩なみあしで1日50km程度ですから、10里か15里というのは予想通りです。さすがに馬も1日全力疾走する訳にもいきませんからね。とはいえ、海賊の駆逐には馬は有用……。」

「馬に乗ったまま戦闘するのは難しいぞ。武士団でも戦場では馬から降りる事が多い。むろん、数十騎とまで行かずとも十数騎も集めて突撃できれば強力だが、そういう訓練は至難だし有用な場合は少ない。」

「十数騎……この騎士団3つ分。目指す価値はありますね。富国強兵でも貧国弱兵でも、道路状況から見て自動車の運用は困難な以上、機動的な騎兵隊は有用です。」



【第四層群1階応接室】


「こちらが、このダンジョンの治安維持を担当するラージャ将軍。」

「ラージャだ。よろしく頼む。」

「こちらが、騎士団長の播磨介はりまのすけ殿だ。」

岸播磨介きしはりまのすけ。以降よろしく。」

「軍と警察は分離するのが古代ローマ以来文明社会の常識で、律令制時代の日本ですら兵部省と刑部省は別でしたが、このダンジョンでは、まだまだ規模が小さいこと、戦略が富国強兵か貧国弱兵か決まっていないこともあり、軍と警察は分離していません。」

「けいさつ? とは何であるか?」

「犯罪を予防し、取り締まります。つまり、町奉行みたいなものです。このあたりでは代官の仕事に含まれるようですが。」

「取り締まるにしても、法令はどうなっておる。」

「基本は、殺人は死刑、傷害は体罰、窃盗は罰金。ですが、きちんとした規則は策定中です。幸い殺人は起きたことはありません。」

「私が六法全書を元に作成中です。でも、法は知られていないと無意味ですから適用はまだ先です。」

「内容は必要最低限にしないと、特にダンジョンマスターが覚えられません。」

それがしは敵の首を獲ることはできるが、刑罰で苦痛無く首を落とす技量は無いぞ。海賊ならむしろそれで良いが。」

「それだと、死刑の方法も考えないといけませんね。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ