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399:今年の年貢収入

【第三層群屋上展望台・世界樹】


「40万町歩で600万石。反収1.5石。農業技術が未完成な上に開拓地という点を考慮すれば上々ですね。年貢は反収1石と設定する定免法(じょうめんほう)の四公六民ですから、160万石。水田以外の分もありますから、何のかんの言って50万石くらいは備蓄に廻せそうですが、凶作の危険を考えると心許ないですね。かといって、あまりにも生産を増やすと米が余って米価が暴落します。」

 村の全ての田畑や果樹園や屋敷地などを水田換算して村ごとに年貢を課す村請制度。ちなみに裏作は課税できないし、田畑で実際に何を栽培していようと規定の年貢が納入されれば問題は無い。このため、商品作物を栽培し、年貢用の米と食用の麦は買ってくる。という場合もある。

「金銭があれば農民から米を買い上げることも出来るが、火浣布(かかんぷ)の山が成長しないと金は産しない。」

「年貢率が高いと一揆が起きますから、年貢を引き上げて市場から米を回収するのは不可能です。ダンジョンが金銭で米を買い上げるのが確実ですが、その金銭が十分にありませんからね。」

「江戸時代の幕府や諸藩が困窮したのも同じ仕組みか。」

「あれは、年貢依存で収入が増やせないのに支出は増える、かといって政府が倹約すると不況になる。というものです。」

「米切手も紙幣では無いからな。」

「この世界、管理通貨制度を導入できる社会条件はありませんからね。兌換紙幣を発行できるだけの金備蓄はありませんから、米切手を流通させることになります。米切手はダンジョンで保管する特定年産の米と交換できますが、古米を何年も備蓄する訳にはいきませんから、ゲゼル貨幣のように毎年減価させていくことになります。」

「となると貯蓄には向かぬか。」

「そのままだと弊害が大きいですが、貯める方は小判の役目ですからね。いきなり中央銀行を導入しようとしても上手く行かないでしょう。ただ、米と小判の相場も変動しますが。」

「確か江戸時代と同じか。」

「この世界の水準自体が江戸時代ですからね。金銀銅と米はそれぞれ変動相場で変化します。金貨1枚が銀貨何枚なんて固定相場は維持出来ません。」

「予算を組むのが大変だな。米相場が下がると武士が困窮する。とか、いろいろ問題がありそうだ。」

「ありそうだ、ではなく、米相場が崩れるとそうなりますし、相場を固定できる権力はどこにもありません。」

「いろいろと難しいな。」


「ダンジョンが住民の感情をエネルギー源としている。という制約がある以上、無理は出来ません。とはいえ、住民が人間牧場の家畜に甘んじてしまう。というのも長期的、それこそ人々がダンジョン影響圏から離れて宇宙へ行く、となると問題は出てくるでしょうが。」

「マリーさん、さすがに家畜は言い過ぎだろう。」

「でも、社会が江戸時代ですからね。意図はどうであれ『お上』がそれなりに善政を敷くなら、住民はそれに甘んじる傾向がありますね。だからといってどうこうする。という訳にもいきません。社会の安定を損なうとダンジョンには致命傷です。」

「まさか民主主義なんて導入する訳にも行かないからな。ダンジョンの運営とは相性が悪い。」

「異世界日本も民主主義ではなく君主制ですね。イギリスは君主制の民主主義で、国王は『君臨すれども統治せず』という原則ですが。」

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