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398:餓鬼の養殖に意味は無い

【第三層群屋上展望台・世界樹】


「マリーさん、火浣布(かかんぷ)の山だが、火鼠にはサツマイモを食べさせるとして、ダンジョンそのものの強化、金の採掘に必要な生贄の餓鬼はどうしようか。」

「もはや、このダンジョンへ攻めてくる者は餓鬼でも人間でも居ませんし、餓鬼狩りは対外的な問題多すぎますからね。餓鬼がどうやって生じるか分かれば養殖も可能な気はしますが、養殖では意味は無いでしょう。」

「確か餓鬼は生き物とは違ったな。」

「餓鬼は石から生じるそうですが、よく分かりませんね。孫悟空は伝説では石から生じたそうですが、中山(ちゅうざん)競馬場ダンジョンの猿は普通の獣人でした。」

「やっぱり生物では無いのか。」

「餓鬼道は鉱物界ですから、植物界の修羅、動物界の畜生と違って、異世界の生物学的には生き物ではありません。ですが、餓鬼は六道輪廻の対象ですから、餓鬼は宗教的には生物、普通の石は無生物なのでしょうね。」

「地獄か天が菌類だったりするんだろうか。」

「さぁ。人間は生物学的には動物ですし、そのあたりは必ずしも一対一対応では無いのでしょう。ともかく、もし餓鬼が本当に石から自然発生するのなら、条件さえ分かれば餓鬼を発生させて生贄にすることも理論的には可能です。単に、蛆みたいに自然発生すると思われているだけで実際には違うのなら出来ませんが。」

 この世界では蛆は自然発生すると一般に思われているだけで自然発生はしない。魔法とかダンジョンとかがある世界では普通は自然発生するが。

「ダンジョン内なら本当に自然発生するが。」

「マスター、ダンジョンモンスターとしてなら生成できますが、名無しのダンジョンモンスターは生きていませんからね。もちろん、ダンジョンモンスターの蛆虫を名前付き(ネームド)にすれば生物になりますが、蛆虫に名前を付けるのはどうかと思いますし、昆虫である以上制約がありますね。」

「ああ、大きさとか知能とか。」

「昆虫は外骨格で気門呼吸ですから、大きくなるとダンジョン外では潰れます。また、脳が小さいので、よほど巨大化しない限り知能はありません。世の中には固有法則が対応しているため、()の国の『完全変態の森』や『真社会塔』のように巨大昆虫が蔓延っているダンジョンもありますが。」

「ただ、餓鬼は養殖では意味が無いんだったな。」

「はい。生贄というのは、技能が高く経験を積んでいる方が得られるダンジョンエネルギーが多くなります。ですから、好ましいのは武将や高僧となります。若くても有能なら得られるダンジョンエネルギーは多くなりますが。もちろん『死に方』というのも影響しますから、このダンジョンでは敵を本で焼き殺すのが効率的となりますが、そちらは別に寿命で亡くなったのと極端な違いはありません。」

「だから、養殖した餓鬼では赤ん坊を犠牲にするのと同じくらい無意味ということか。」

「スパルタとかカルタゴとか、それで国力消耗して破滅しましたからね。確かに人口抑制には有効ではありますが。ただ、餓鬼は人間ほどどんどん殖えるものでもありませんから、殖えすぎる心配は要らないでしょうね。」


「奴隷狩りが出来ない、養殖に意味は無い、もちろん攻めてくることもない、ついでにダンジョンは外征が苦手だから攻め込むわけにも行かない。マリーさん、まさか交通不便な火浣布(かかんぷ)の山に養老院を作るなんて姥捨山みたいなことをする訳にも行かないし。」

「それだって、日々栄養状態や医療水準の改善を進めている以上、寿命が延びていく訳で、かなり大規模にして確率論的に寿命による死者が出るようにする必要がありますね。さすがにそれは難しいでしょう。」

「確率論か。」

「この世界、人間の『平均』寿命は概ね30歳過ぎですが、子供の死亡と飢餓や疫病を除けば60~70歳くらいです。ですが、お年寄りが10人居たとしても確率としては全員があと10年生きる可能性はあります。でも千人も居れば、よっぽど確率が偏っても死者は出ます。しかし、そんな数の老人をまとめて生活させるのは難しいでしょう。このダンジョンではそれぞれの村に分散しているからなんとかなっているだけです。」

「となると死刑だが、犯罪は少なかったな。」

「ダンジョンの機能で監視できますからね。事前の計画無く衝動的に、なんてのは対応しきれませんから避けられませんが、このダンジョンで死刑の対象となる意図的な、いわゆる『第1級殺人』は、まだ起きていません。近隣並みに死刑の対象を増やせば別でしょうが。」

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