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389:名前をフランス風にしてもフランス人にはなれない

【第三層群屋上展望台・世界樹】


「それにしても、必要な生贄は毎年万か。住民がほぼ100万人居るから寿命を待てば大丈夫ではあるが、何かの原因で人口流出が起きたら危ないか。」

「砂漠で行く所はありませんし、そちらの心配は必要無いでしょう。むしろ土地は有限なので、いずれ人口過剰により生活の質が落ち、ダンジョンが獲得する感情エネルギーが不足する。という事態が問題です。記録によると人間牧場の崩壊は基本的に人口過剰が原因になります。」

「確か寿命300年だったか。」

「マルサスによると人口は25年で倍増、つまり100年で16倍、300年で4,000倍になりますから、仮に初期に人間が1万人居れば300年で4,000万人に増えます。これを放置していたら、いかなるダンジョンでも耐えられずに崩壊するでしょう。」

「最初から人間を閉め出す。くらいか。」

「そうやって長く続いているダンジョンもありますが、このダンジョンは既に近隣から大々的に人間の移民を入れていますからね。そして、潜在生産力が高いゆえに、崩壊したら大変な惨事になりかねません。」

「土地が広いからか。」

「なにしろ影響圏半径1,371kmですからね。村や他のダンジョンの背後は影響圏ではありませんが。」

「どうしても影響圏が放射状に広がり、間に組み込めない土地が出来てしまうんだよな。」

「影響圏が『回り込む』ような固有法則を入手するか、マルチコア化するしかないでしょうね。」

「マルチコア? 商都梅田みたいに?」

「商都梅田は『駅長室』が多数ありますが、全てダンジョン本体の中ですね。理論上はこれを影響圏内に配置することが可能ですが、わたしは予備コアを持っていません。もっとも、コアを増やしてもダンジョンの能力が直線的に増えたりはしませんが。」

「現状では出来ないことはさておき。だ。」

「地形的にこのダンジョンより低くないと灌漑は困難ですから、今後利用可能な土地はこの塔の付近が25万k㎡程度、筑波の東が15万k㎡程度、(ふさ)より東が20万k㎡程度ですね。土地が70万k㎡。仮に水田が2,000万町歩で反収1.5石なら、裏作含め人口支持力は3億人。億の難民が放出されたら地域社会全体が崩壊しかねません。」

「人間が50万人くらい居るから、崩壊までの猶予は200年余りか。」

「いえ、そう単純でもありません。まず増える方の要素ですが、道路の完成で西方や奥州との行き来が容易になりますから、人間は200万人くらいになるでしょう。さらに周辺への食糧輸出により、近隣でも人口が増えます。」

「それで、急いで人口を押さえ込む必要があると。」

「異世界の歴代王朝も無策ではありませんでしたから、ある程度は人口爆発を遅らせています。昔の中国だと王朝成立期に1,000万人だった人口が200年あまりで6,000万人に増えて崩壊し1,000万人に戻る。というのを繰り返していました。異世界日本も明治維新から200年で人口は6倍ですから、200年で256倍では無く6倍というのが目標となるでしょう。さすがに異世界フランスみたいな人口抑制は難しいでしょうね。」

 異世界では第二次世界大戦が無かったため、19世紀末以来フランスの人口は4,000万で安定している。同程度の面積の日本は約5倍と過剰。

「この世界にフランス人は居ないからなぁ。そういう文化を持つ種族は居そうだが。」

「昔の森林太郎という軍医総監が子供にオットーとかルイとか山オランダ語やフランス語の名前を付けましたが、名前をジャンヌやカトリーヌやアンヌに変えたってフランス人にはなりませんね。」

「マリーさんが名前をマリーヌにしてもフランス人にはならないか。」

「わたしは別に変える必要はありませんね。語源と綴りが違いますが。」

 rosemaryなので綴りはMaryで英語のメアリーと同じ。フランス語のMarieとは異なる。


「住民の人間をフランス人に置き換える以外の、現実的な人口抑制が必要だな。」

「人口抑制に手っ取り早いのは貧困と疫病ですが、民主主義の国だと選挙で負けますし、君主制の国だと革命が起きますし、ダンジョンだと感情エネルギーが減って破滅します。スパルタみたいに子供を殺して人口抑制できる社会は例外ですね。」

「さすがに、それは真似できない。」

「ダンジョンが十分にエネルギーを獲得しつつ人口を抑制するには、逆に徹底的に生活水準を上げるしかありません。因果関係は不明ですが、豊かで文明化・都市化され、治安の良い社会では人口爆発は収まってきます。それでも世界全体を都市化するのは無理難題で、結局、人口が増え続けるのは不可避ですから、なんとか宇宙に手を出すまで引き延ばすしかありません。」

「軌道エレベータか。」

「このダンジョンは赤道から外れていますし、いくらダンジョン構造物に強度があると言っても地上から積み上げるのは無理でしょう。まずは、小笠原ペトゥレル(ウミツバメ)宇宙機を作ることを目標にします。」

「宇宙機どころか飛行機自体難題だけどな。」

「ダンジョン以外で飛ぶのは難しいですからね。ケツァルコアトルス、大型全翼機ではなく、翼竜の方ならば、ダンジョン以外でも飛行可能ですが、翼竜を産するダンジョンなんてあるのでしょうか。」

「龍が居るなら恐竜も居そうな気はするが……。」

「『恐竜』自体は今でもそこらを飛んでいますし、このダンジョンの五位鷺も恐竜畜生ですが、ここで問題になるのは鳥では無く中生代の恐竜ですよね。今のところ、絶滅生物を産するダンジョンは知りませんが、どこかに居るのでしょうか。」

 生物学的には鳥は恐竜に含まれ、翼竜は恐竜では無い。つまり恐竜博物館の「恐竜の唐揚げ」は本当に恐竜肉。

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