383:地図(参考地図あり)
【第三層群屋上展望台・世界樹】
「マスター、身終が地図を届けてきて、蓑鴨・井口に加え大餓鬼も迂回して欲しいと要望してきています。」
「大餓鬼って西の端に近いあたりだな。異世界だと漢字が違ったはず。」
「はい。海豚池より西はルートは決まっていませんから、地形次第では何とでもなると思います。」
「先日説明したように、読書村から、中津の北を抜け大井まではルートは既に決まっており、工事用軌道の設置が始まっています。」
「新幹線を使うんだったか。」
「ミントはそのつもりですね。確かに道路を作るには何年も必要ですから、工事中に何らかの方法で不破関付近まで材料などを運ばないといけません。」
新幹線では無く、新幹線の車体に電気自動車の超伝導モーターを積んだ改造車。
「ただ、新幹線対応の本格的な軌道となると、端から順番に作っていたら何十年も必要ですから、工事に手間のかかる場所は、まずは地面を雑に均して、レールと鉄枕木を一体化した梯子状の軌匡という物を並べます。この軌道を使って本格的な工事用軌道を複数地点から同時に作り、大量の材料を運び込んで自動車道を作っていきます。」
「つまり部分的には三段階ということか。」
「異世界日本で1,000km程度の東京から下関までの鉄道が1870年着工・1901年開通ですから、およそ30年ですね。しかも資材を船で途中からも運び込んでこれです。そんなにかけるわけにはいきませんから。一方、トンネルも何も要らない平坦な場所なら、最初から新幹線対応の工事軌道を作ります。」
「どう違うんだ。」
「地面を均すところは同じですが、自動車道と同じ曲線半径4,000m以上、勾配は自動車道の2%に対し可能な限り1%以下とし、その上に砂利を敷き詰め、軌匡ではなく、ダンジョンで作った梯子型枕木一体型の線路(長さ23.77m・重さ約10t)を並べていきます。さらに、電柱と電線が必要です。つまり、より大がかりになりますね。」
「1%か。」
「勾配が1.14%を越えると貨物列車はまともに使用できないそうです。一方、転送陣なら4%まで対応出来ます。なお、自動車道は3%を越えると登坂車線が推奨されます。」
「それで、ルートはどうなるんだ。」
「まず、使節団のドローンによる撮影データに、身終から届いた地図を元に地名を当てはめると、大井から朱鷺まで160kmなので、中間に筅木……? 地図が読めませんが、とにかく、工事拠点を配置します。」
「さざらき」である。
「そして、朱鷺から海豚池は200kmあるため、蝮の北東、固形山にも工事拠点を置く予定です。朱鷺と別の朱鷺口付近が朱鷺地域を名乗っているのでややこしくなっていますが、朱鷺村と朱鷺地域は別になります。」
「蝮には寄らないということか。」
「かなり大きな町ですから、後でやっぱり外してくれ。といわれても困ります。それに、最終的に作るのは自動車道なので、鉄道と違って必ずしも既存の町に駅を置く必要もありません。」
「そして、海豚池の西だな。」
「その前に、地形から見る限りは海豚池以東にはトンネルが10ほど必要になりますが、どれもさほど長くないため、肥料で爆破して切り崩す予定です。その方が時間短縮になります。」
硝安肥料に少量の油あるいは水などを混ぜた爆薬で、異世界でも採石場などで使用されている。なお、ダンジョン内では火が使用できず、爆薬も爆発しないため安全に製造可能。
「確定では無いのか。」
「空中写真だけでは確定できませんね。地質に問題がある可能性も否定できませんから。」
「あくまでも予定か。」
「海豚池から不破関までは、測量によって変更はあるでしょうが、推定400kmあるので、比嘉氏野、付和意識、蛇餅……へびもち? と、3つの拠点を考えています。」
「じゃもち」なのであるが、貰った地図に読み方は書いていない。
「地形はどうなんだろうな。」
「比嘉氏野は山本から海豚池への移動中に近くを通過したため、この付近までは地形は分かっていますが、概ね平坦ですね。また、地図によると海豚池より西の地形は平坦とのことです。」
「なら工事も早いか?」
「早いでしょうね。砂漠なので湿地帯などは無いでしょうし。なお、付和意識の次、蛇餅は大餓鬼の近くですが、地図が正しいとは限りませんので、確定はしていません。そこからは不破関ですね。」