038:軍用通信システムの模索
【コアルーム】
「ミントさん自爆ドローンも、一応偵察には使えそうだな。損耗率が高そうだが。」
「自爆ドローンというか自爆してしまうドローンというか。」
「その次に、迎撃部隊が出動したら必要になるのが『通信システム』だな。自爆ドローンの飽和攻撃が出来るならその必要は無いが。」
「館長、生産力が追いつきません。さすがに本格的な工作機械はこのダンジョンでは入手出来ませんし、仮にあったとしても機械工学科では無いので手に余ります。」
「我輩が建築でミントさんは電子工学だから、機械とか化学とか金属とか土木とかの専門は居ないんだよな。あと最低4人必要か。」
「マスター、ラージャが武将と行政官を兼ねていると言っても、次は農業の専門家が必要ですし……。」
「農業はマリーさんが上手くやってくれているじゃ無いか。」
「わたしは農学部ではありませんし、専門ではありませんが、マスターがそう言うなら任せてください。」
修羅なんて、ちょっと煽てればすぐに天狗になる。
「マスター、このダンジョンにドローンを常時飛行させる余裕はありませんから、塔からの監視を基本とするとして、ミント、現状の監視能力は?」
「側近書記殿、カメラと望遠鏡で監視できるのは距離20km程度ですね。」
「それで、ラージャさん、20kmまで確認できるとして?」
「20kmで発見して、準備して迎撃するなら、防衛可能範囲は7~8km。でも、賊が2部隊居て時間差で反対側から侵入した場合、引き返して撃退できる距離は6km。だから深追いせず6km以内で迎え撃つべきです。」
「なるほど。ミントさん、6km範囲との通信手段は?」
「携帯電話は多数の基地局が必要なので、手っ取り早いのは無線機です。もちろん免許が必要で、こちらから発信は出来ますが現地からの返信は違法です。」
「ミントはハムだけど、マスター、これ迎撃部隊側にも無線免許持っている紫蘇(修羅)を追加召喚しないといけませんか。」
このハムはアマチュア無線であって、ハーブ風味のハム(食材)ではない。
「館長、割り切って、受信機には電波発射機能を持たせず、ダンジョン側から指示するのに徹する。という手もあります。これなら法律に違反しません。有用性はだいぶ劣りますが。」
「でもこれ、電波法に違反したとき、誰が取り締まるのでしょうね。異世界から警察が来るのでしょうか。そもそも、わたし達、修羅ですよね……。ラージャの六法全書にも修羅なんて規定無いでしょうし。畜生は法律上動物、餓鬼は鉱物と見なすとしても。」
「法律上、畜生を殺したら動物愛護法違反、餓鬼を殺したら器物損壊となります。」
それだと修羅は植物と見なされることになるが。
「いわゆるトランシーバーは書庫の奥の職員と連絡を取るために使われることがあるためか、召喚は可能ですが、使用には『デジタル簡易無線局』の登録手続が必要です。一般には業務用携帯電話が使われますが、携帯電話は使うには基地局と交換局が必要になります。」
「どこかの図書館の屋根に載っていたりしないか?」
「館長殿、基地局はあっても交換局が無いと使えないから、現時点では手に余る。」
「産業基盤が無いから、こういうときに困るんですよね。いっそ、手先の器用な餓鬼でも……やっぱ餓鬼なんか見たくありません。」
「ミントさん、法律はさておき、現時点で『技術的に』可能な通信システムは?」
「すぐに準備可能なのは、ラジオを使用した一方向システムです。ラジオ受信機なら学習教材の付録にもあるので入手可能ですが、放送局の免許を申請する方法が無いので合法な放送は不可能です。この図書館都市ダンジョンは事実上独立国みたいなものですから、議会が認めれば構わないでしょうが、まだ議会がありません。」
「双方向は無理なのか。」
「トランシーバー含めて無線機を持ち歩けば可能ですが、完全に違法ですね。無線機自体は屋外の数km程度で使うのなら、他に電波源がありませんしトランシーバー程度の小出力で十分です。」
「議会が無いと法律が制定出来ないんだよな。で、議会を開設するには選挙が必要……今の入植者に選挙なんか出来るか?」
「館長、どう考えても無理ですね。」
「そういえば、仮に議会を開設して法案を議決しても、法律を公布できない。いや、それ以前に選挙の公示も議会の招集も出来ないか。ラージャに確認しよう。」
国事行為なので、当然ながらダンジョンマスターやマリーには権限が無い。




