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379:その頃、商都梅田

【商都梅田・第一層群・箕有百貨店8階】


 ダンジョンの構造上の制約は、ダンジョンマスター及び全ての名前付き(ネームド)モンスターがコアまで到達可能なこと。商都梅田は「駅長室」というコアルームが各層群に複数あり、全て制圧しなければ攻略できないが、第五層群「渋谷」地下5階より下は誰も踏破していない。

「現時点では海豚池からの送電は事実上失敗や。工事中に、もうちっと人参ぶら下げて利益供与を仄めかさなあかんな。死刑囚かて常に居る訳やあらへんし、電気のためにいちいち生贄用意する。ちゅうのは無理が多い。それにしても、身終(みのおわり)の連中は変化を嫌うちゅうか、野心が無いっちゅうか。強欲な図書館都市でも見習ったらええのに。」

 商都梅田に戻った播磨屋久兵衛が報告する。

「でも、身終(みのおわり)を横断する線路を引く許可は得られた。」

「そやけど、電気が届かへんかったら、電車はただの粗大ゴミや。全線で蒸気機関車を薪で動かすっちゅうのは悪夢や。」

 石炭を産するダンジョンはこの付近では知られておらず、砂漠なので薪と水の供給は制約される。ちなみに海豚池は塩水なので使い物にならない。

「砂利はどこにでもあるから問題あらへん。そんで、レールは海豚池ダンジョンでも入手可能や。でも図書館都市には無いんちゃうかな。」

「工事の間持てば良いなら、角材に鉄板を載せたレールもどきが使えないか。そういう物なら鍛冶屋が居れば用意出来そうな気はするが。」

「図書館都市との情報交換が必要やな。幸い図書館都市は無線電話を使うとるから、最低限の情報交換は可能や。無線は通話品質が良くあらへんから、さっさと有線に切り替えなあかんけど。」

「建設部隊を海豚池に送り込み、図書館都市からも線路を作れば、4倍の速さで工事は進む計算になる。少なくとも不破関から海豚池まではトンネルも必要無い。250里を4で割ると62.5里。1年に10里進めば6年、20里なら3年だ。」

 異世界日本の東海道本線が17年、年35km。東北本線が9年、年80km。なお、アメリカは技術力・生産力も人材の質も高いため、大陸横断鉄道の東側はオマハからオグデンまで1,750kmをわずか4年、年400km以上という恐ろしい速さで建設している。さすがに西側は山越えのため1,100kmに6年かかったが、それでも日本の倍以上。


「早ければ早いほど交易にはええんやけど、3年か。作業拠点を増やすことはできへんやろか。」

「レールが容易には入手出来ないから難しいだろう。図書館都市側に鉄板張り角材を使うならば耐久性が皆無だから、速やかにレールに交換しなければならないが。あと、電線も海豚池の物は路面電車規格に過ぎないから、本格運用までに交換が必要になる。」

「大餓鬼や(たじひ)はそれなりに大きい町やから、鍛冶屋にレールもどきを作らせることはできへんやろか。」

「鉄製品が高騰するだけじゃないか。」

 製鉄所が無いため、鉄製品はダンジョンから拾ってきた物をそのまま使うか、古金(ふるがね)として使用する。

「えーと、たしか、レールは長さ4丈くらいで重さは160貫くらいあったはずや。250里に……そりゃ無理やな。」

 商都梅田では1ヤード100ポンドのアメリカ製レールを複製召喚出来る。概ね1m50kg程度なので、1000kmの複線だと20万tにもなる。もちろん涸れ川の鉄橋なども必要であり、ダンジョン産品に頼らないなら鉄の供給問題が生じる。

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