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370:電気が届かない

【第三層群屋上展望台・世界樹】


「とにかく、商都梅田まで、正確には不破関(ふわのせき)まで道路を作ります。そのために身終(みのおわり)まで使者を送る必要がありますが、問題は山積です。身終(みのおわり)は駅馬車が使える程度の道路はありますが、それでも750kmの未舗装道路は車で片道3日(夜は寝るとして)。かなりの荷物が必要です。自動車道(フリーウェイ)を作れば1日ですが。」

「宿場があるとは言え、大荷物が必要だな。」

「さらに、電池は重さ1kgで1.2kWh。アメリカ製半トン積みピックアップトラックの消費電力が200Wh/kmとすると、往復で電池が250個も必要です。荷台は電池で埋まってしまうでしょう。途中、中津まで電池を運び込めば、ある程度は緩和できるでしょうが。」

「元々中津までは舗装道路を作る予定だったな。」

「今の街道は山越えの急傾斜で車は使用できませんから、涸れ川沿いに平坦な道路を作ります。中津なら充電無しで到達可能で、予備の電池を別途運べば帰ることも出来ます。」

「電池は途中で充電するわけに行かないからな。」

「なお悪いことに、電波が届かず自動運転は出来ませんので、手動運転となります。マニュアル車(手動運転)免許を持っているのは、わたしと医者のサピエン先生(セージ)と新聞記者のファリゴール(タイム)だけ。ですが、道中の安全を考えると車は複数、出来れば4台必要です。しかし、わたしは世界樹と一体化しているためダンジョンを離れる訳にはいきません。そうなると残り2台をどうするか問題になりますね。」

ウサギ(USA G.I.)を護衛兼運転手で連れて行けば、使者は名前付き(ネームド)誰か1人でも良いのでは。」

「車4台なら十分な数のウサギ(USA G.I.)を連れて行けますね。使者の車の問題は解決しました。次は現地との通信手段が問題ですね。」

「無線機は使えないか。」

「地平線を越えると普通の無線機は使えませんからね。それこそ現地で長さ40mのアンテナを設置し出力を上げれば無線での送受信が可能ですが、それも安定しません。さらに、その周波数では伝えられる情報量が制約されるため、映像無しで音声だけになりますね。」

身終(みのおわり)の松下まで電線を引きながら進むか。」

「さすがに政治的に無理でしょう。最初の交渉は無線機を使うことにします。」


「それで、使者は良いとして、本格的な道路を作るにしても、自動車の充電の問題はどうする。」

「電力の問題は、高圧直流送電(HVDC)または太陽電池を備えた充電施設を作ることを検討にします。どっちみち道路を作るときに一定間隔でコンクリート工場が必要ですからね。海賊などが湧いたらいけませんから、治安維持に関しては身終(みのおわり)の協力が不可欠です。」

「非協力的な場合は?」

「……さすがに身終(みのおわり)の征服は手に余りますね。さらに影響圏を広げるにしてもダンジョンエネルギーが足りませんし、そもそも図書館が足りません。それに、今の広さは現時点の限界と思われます。」



【商都梅田・第一層群・箕有百貨店8階】


「電車はどないしても身終(みのおわり)まで行く事は出来へん。」

「電気は50~60里くらいしか届かないからな。」

「なら蒸気機関車……石炭を薪で代用するにしても、薪も水も莫大な量が必要やな。」

 鉄道省の機関車等は国の物で大阪に所属しないため、商都梅田では召喚出来ないという制約がある。図書館都市ダンジョンは前世紀の図書館も複製召喚可能だが、商都梅田は大大阪時代以前(1925年以前)の電車や機関車は入手出来ない。1920年代には既に大阪の私鉄・公営鉄道は大部分が電化されていたため、入手出来る蒸気機関車は少ない。

「どちらも砂漠では貴重品だから、大量に使うのは難しい。」

「不破関から図書館都市の影響圏までは250里くらいや。図書館都市から50里は電気を引くとして、残りの200里くらいが蒸気機関車が必要な範囲や。薪や水を積んだら貨物が運ばれへん。現地調達いうても限界あるさかいに、どないすればええやろ。最悪、牛で曳くしかあらへんやろか。牛車よりは効率的やと思うんやけど速さは全く期待できへんな。」

「そもそも、水はともかく、商都梅田も薪の入手は大変だ。駅備品の家具を壊しては複製召喚なんてことをやったら、ダンジョンが枯渇する。」


「理想は他にも電気が得られるダンジョンがあることや。」

「電気があるということは、ある程度は技術的に進んだダンジョンということか。他にあるかな。」

「まだ、木材や水を産するダンジョンの方がありそうや。」



【身終・山本】


「電車は、不破関(ふわのせき)からこちらへ来られないかや。」

「殿、デンキテーコーだったか伝記皇帝だったか何かで制限があるそうです。一里や二里はともかく、大餓鬼(おおがき)までは不可能と聞きました。」

 濃尾の海豚池ダンジョンは前々世紀(19世紀後半)の産物なら入手可能だが、長田左馬頭(さまのかみ)も桐生六郎も近代文明の理論は何も知らないので、電気抵抗という概念自体知らない。

「転送陣は当然ダンジョンでしか使えないだぎゃ。そうなると、間の250里は我が濃尾が何か方法を見いださなければならないぎゃぁ。電車と言っても海豚池にあるような物では馬より遅いし無理だぎゃぁ。」

「牛より速く、馬より速く……。う~ん、何かあるか。龍という訳にも行かないし。でも、やはり無理を承知で龍か?」

「今は待つのみ(松の実)だぎゃぁ。」

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