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367:商都梅田、図書館都市、そして濃尾

【商都梅田・第一層群・箕有百貨店8階】


「商都梅田は()の国府に隣接するダンジョンで、その第一層群『梅田』の駅の多くは地上にあって、ダンジョンの端まで線路が延びとる。それは誰でも知っとる話や。」

 箕有百貨店8階大食堂、商人の1人が地図を指しながら説明する。

「でも、第二層群以下は硬い壁にぶち当たってどこにも行けない。」

 巨大な地下空間なので、ダンジョン構造物で支えないと天井が落ちる。

「ダンジョンから123里まではダンジョンの機能で線路を引くことが出来、そっから先は召喚したレールや枕木で線路を作らなあかん。ちゅうのも有名や。ダンジョンの力は123里までしか届かへん。なんで123里かは分からへんが。」

 100リーグ=300マイル≒482.8km≒122.9里。という事情は知られていない。

「石の神殿と互いに手が届かないので、泥沼の全面戦争にならずに済む。というのは利点だ。」

 どちらもダンジョン影響圏外に力を及ぼす固有法則を持つが、距離制限は482.8km。そして互いに500km余り離れている。なお、ダンジョン影響圏を広げている訳では無いため、町や他のダンジョンなどの障害物に影響されず、生贄の必要数も増えない。もっとも商都梅田は人口が多いため寿命で亡くなる者も多く、石の神殿は元から盛んに生贄を捧げているため、仮に毎年数百人の生贄が必要になっても問題は無い。

「そんで、召喚出来る電車は大阪市電と、阪姫・箕有・阪亀・阪津・阪奈・大軌などの在阪私鉄で、省線の機関車や客車は召喚できへん。」

「駅自体は省線どころか、何なのか見当も付かない物もあるんだが。」

 いわゆる「大大阪の時代」より後の駅も存在する。



【第三層群屋上展望台・世界樹】


「♪吹き~抜ける風は~空の~頂、降り~注ぐ光に~輝く湖、見渡す~大地は~緑に染まり~。」

 相変わらず歌は下手くそなマリー。ついでに、40万町歩の水田があるといっても塔から見下ろす地面は大部分が砂漠のまま。もちろん歌を勝手に歌ったところで異世界まで著作権を徴収しに来る団体は存在しない。

「マリーさん、影響圏は結局どうなった。」

「現在、ダンジョン本体の高さは142kmですから、計算上の地平線距離は1,376km、赤道上では無いのでわずかに広くなるはずです。システムによる影響圏の限界は相変わらず1,231km、つまり255リーグ。ダンジョンシステムは英語でヤード・ポンド法ですが、ヤード・ポンド法は悪い度量衡法ですね。そして、現在の手動での拡張限界は、おおよそ1,371kmです。地平線よりわずかに手前ですが、影響圏の広さが地平線距離そのものではないだけか、これが今の地球科学、というか『地球』では無いので惑星科学上の限界なのかは分かりません。」

「これ以上の拡張は試みずに、1,371kmだったか、そこから舗装道路を作るか。」

「既に工事中の奥州方面の道路は地形と那須塩原(なすえんげん)の関係で影響圏の外側端からでは無いので、影響圏を手動で広げても起点は同じですが、(こし)身終(みのおわり)方面は広げた影響圏の端から道路を作ります。とはいえ、拡張影響圏、とでも言いましょうか、手動で広げた部分は手動でしか管理出来ないのが困りものです。」

「手動って現地へ行ってか。」

「さすがにそこまで不便ではありません。世界樹に触れながらコアに直接念じて操作できます。でも、建物の一軒一軒まで個別に設定し複製召喚しなければなりません。……よく考えたら、ダンジョンマスターはわたしでは無くマスターですよね。」

「適当に公民館図書館でも複製召喚して並べればヨシ!」

「……やっぱり、わたしが設定します。」



【身終・山本】


 身終(みのおわり)国府、山本。松修羅が君臨するため松下とも言うが。

「我が比類なき濃尾の国は、東西・南北とも250里(1,000km)に及び……。」

「方百里が諸侯の領地、方千里が天子の領地、天下は万里四方だぎゃ。もっと国を富まさないと、所詮は大きい諸侯、(きび)あたりと同格では偉そうなことは言えないぎゃぁ。」

 側近の胡瓜(きゅうり)修羅、桐生六郎の言葉を遮る松修羅、身終(みのおわり)国主、長田左馬頭(さまのかみ)(自称)。裸子植物だからか裸だが、修羅なので外見では別にR18にはならない。なお、一般に黒松修羅の人間体は男、赤松修羅の人間体は女に見えるが、生物学的には雌雄同体であり繁殖は花粉により基本的に黒松同士・赤松同士で行われ、雑種のアイグロマツは少ない。

「西の不破関まで変態(キンキィ)の商都梅田から鉄道、東の(しな)の国・飯田まで迷迭香(マンネンロウ)の転送陣が来ています。」

「確か変態(キンキィ)には『完全変態館(昆虫館)』ってダンジョンが少なくとも3つはあったはずだぎゃぁ。」

「殿、我が一族は、かつて()の国・山田郡・桐生に居ましたが、養蚕、蚕を巡る争いが元で、隣の勢多郡・鶴ヶ谷の『完全変態の森』というダンジョンに領主の座を逐われ濃尾へ逃げる羽目になりました。」

「そんなことがあったか。蚕に解雇されたかや。」

「完全変態は虫の一部です。幸い、危険なほど大きな虫は蛇などを除き潰れるためダンジョンを出ることが出来ません。しかし、ダンジョンの怪物とは違う、生きた虫を増やしてから大量にダンジョン周辺に放し、周辺の町や村に大損害を与えることが出来ます。」

 この世界の概念として「虫」は蛇が代表で、基本的に「陸棲の小型変温動物」を指す。

「蝗害みたいなものかや。」

「似たようなものです。種類は違いますが。」

 蜂蟻・蝶蛾・甲虫・蠅蚤などが完全変態。バッタやゴキブリは不完全変態なので、完全変態ダンジョンで大発生することは無い。

「虫だけに無視とはいかないだぎゃぁ。」

 方言はでたらめです。

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