360:強襲、塚原
【塚原の町の前】
図書館都市ダンジョン影響圏の端、塚原は、転送陣から積み下ろした荷物をトラックに積み替えるために存在する。その塚原の前に、日本駄右衛門と手下達が集合する。
「親分、ここがダンジョンから1町です。」
「迷迭香が端ぎりぎりに町を作る馬鹿で助かったな。ダンジョンの端ってのは今ひとつ分かりづらい。」
「でも、ダンジョンをここまで広げてきたりはしませんか。」
「地図を見たら分かるが、ここは那須塩原の陰になるから、ダンジョンを広げることは出来ない。それに、簡易とは言え砦を作ってしまえばダンジョンに呑み込まれる心配は無い。」
「親分、地図は不正確ですから、相手が位置を偽っていたら分からないでしょう。」
「それは大丈夫だ。奴は一尺でも一寸でも距離を節約したいからな。」
「よし、穴を掘ってダンジョン側に積み上げろ。いくら相手の火縄銃『じゃない』鉄砲が強力無比でも堤を破ることは出来ない。もし、作業途中で敵が出てきたら竹束で身を隠せ。」
「ウサギが戻ってきて背後を突かれませんか。」
「ウサギはすぐには来ない。迷迭香だって、まさか総攻撃とは思うまい。別働隊を警戒し、鈍重な重機を放っておく訳には行かないはずだ。ウサギが何日もかけてゆっくり戻ってくるまでの間、ノコノコやってくる間抜けな商人どもや、ダンジョンから出てくる二線級部隊を血祭りに上げてやれば良い。」
【第三層群屋上展望台・世界樹】
「マスター、塚原の目の前に日本駄右衛門が居座っていますね。人間・畜生・餓鬼の混成部隊ですが、熊や犀などは居ない模様です。あと、いくら下等種族ばかりと言えども、さすがにダンジョン影響圏内に踏む込まない知能はあるようです。」
「マリーさん、至急ウサギを呼び戻そう。」
「いえ、呼び戻しなんかしたら、道路工事中の横瀬組(プリムラ・レイニー・横瀬さくら)が無防備になってしまいます。猫啼温泉の留守番部隊は多くは無さそうですが、少数といっても危険です。それに、時間では呼び戻すよりも転送陣で別の部隊を送り込む方が圧倒的に早くなります。ただ、予備部隊は居ません……軍の訓練所、現状では軍を『作るための』訓練所から学徒出陣します。」
「大丈夫なのか。」
「外には出ず、ダンジョン影響圏内なら大丈夫です。それに、何とかして日本駄右衛門をダンジョン内に引きずり込まないと、倒してもせっかくの生命エネルギーが無駄になります。」
「影響圏の下の土を取り除いて、彼らがいる場所を崩すのはどうか。」
「それなりにしっかりした土地ですから、砂漠の砂みたいに簡単に崩れてはくれないでしょう。」
「それで、出陣させる畜生は?」
「団体行動が苦手な動物は軍隊には向きません。また、馬脚は強力ですが数が少なく、部隊を組むだけの人数が居ません。今回は、突撃を行う犬獣人の狂犬隊、火力支援を行う豚獣人の火豚隊を出陣させます。ダンジョン影響圏から離れないので、輜重隊は影響圏内の輸送に従事し前線には出しません。また、後方に鶏人を配します。」
狂犬隊・火豚隊とも、二足歩行できる犬・豚。もちろん四足歩行も可能。




