359:猫を殺せば七代祟る……はず(日本駄右衛門)
【猫啼温泉】
「なんてことを……。」
使者の首を前に怒る日本駄右衛門。不殺の義賊では無いので言う資格は全く無いが。
「まったく交渉の余地が無いニャ。このままでは我輩も命が1つ減ってしまうニャ。」
「命が1つ?」
「ダンジョンの『固有法則』といって、命が9つあり、殺された場合は相手の子孫に七代祟る。というものニャ。」
「それなら、今から命を1つ犠牲にして、迷迭香の塔を祟ってやれば良い。」
「相手を直接祟る事は出来なくて、相手の死後に子孫を祟る。というものニャ。相手が死んでくれないと祟りは発動しないニャ。」
マリーは繁殖能力自体が無いのでクローンを作ることは出来ても子孫など居ない。なんてことまでは捨猫も知らない。
「捨猫がふっかけすぎたのでは?」
「返信を見る限り、どうやら元から交渉の余地は皆無ニャ。ならばウサギが居ない間に左遷城を強襲して占領、松永隠岐守を人質にして……無理ニャ。平気で人質ごと皆殺しにするに決まっているニャ。」
「ならば、奥州全土を糾合し奥州連合として迷迭香の塔に当たるのは?」
「奥州は広いから、兵を集めるにも時間が必要で、兵糧も足りないニャ。それ以前の問題として、海賊が奥州諸侯の盟主になるのは困難ニャ。」
「馬鹿にしやがって、死ね!」
思わず捨猫を斬りつける日本駄右衛門。避け損ねた捨猫は真っ二つになり、光の粒子になって消えた。
「あ、やってしまった……。」
七代祟られることになってしまった日本駄右衛門。
【猫啼温泉】
「親分、捨猫斬ってしまったんですかい。」
「つい、カッとしてやっちまった。ダンジョンだから核を破壊すれば呪われはしないだろうが、核はどこだ。」
「そんなの、捨猫しか知らないでしょう。」
「よし、手分けしてダンジョンの核を探せ。見つけ次第破壊しろ。」
猫啼温泉ダンジョンには、異世界のような立派な温泉旅館では無く、掘っ立て小屋のようなボロ屋が数軒並んでいる。手下達は床を剥がし、屋根に穴を開け、庭まで掘り返し、せっかく奪った米俵の中身まで地面にぶちまけるが、コアは見つからない。挙げ句建物の1棟は完全に倒壊、残りも床は無く屋根は穴だらけと言う状態。
「どこに隠していやがる。」
「……親分、住むところが無くなってしまいましたが……。」
「おのれ、迷迭香め。そこまでするか。」
「あのダンジョンは、やり方がえげつないことで有名ですから、それくらい平気でするでしょう。」
「野郎ども、捨猫の敵討ちだ。俺達の家を奪った迷迭香の塔を許すな!」
「おー!」




