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352:どうやって敵をおびき出そうか

【第三層群屋上展望台・世界樹】


「日本駄右衛門は左遷城より60kmほど北にある『猫啼温泉』というダンジョンに潜んでいます。」

「マリーさん、猫が温泉に入るか? 猿とか馬とかは有名だが。」

「そういう伝説。というだけでしょう。猫啼温泉の猫だって自身は入浴しないと思います。猫ですから。猫ですからね。」

「確か、このダンジョンには温泉は無かったな。」

「第903層群、第1,769層群、第1,849層群、第3,367層群と複製元には温泉のある図書館はいくつもありますが、コアから供給されるのは、ただの水ですね。入手出来るのは図書館とその備品、モンスターと眷属の食料や衣類などの生活用品、水と電力だけです。」

 実は空気もコアから供給されているが、通常意識されることは無い。

「併設とは言っても温泉は図書館では無いからな。それが可能なら、駅と併設の図書館で電車が召喚出来るはずだ。」

「第58層群で大型路線バスが入手出来れば良かったのですが。あの県立図書館は床下がバスターミナルですが、バスは召喚出来ません。今後ダンジョンがさらに発展したら入手可能になるのかもしれませんが。」

「前回は30km、10万フィートだから、次は100万フィートか。現状確か……。」

「114km、37.4万フィート。あと3倍くらいですね。システム上の高さの上限が、おそらく通常の影響圏の範囲と同じく100リーグ、300マイル、158万フィートと推測されますから、100万フィートで何かあるかと思われます。」

「遠いな。高さ以外の条件で何か無いか。」

「徐々に『できること』は増えていますから、他にもいろいろ条件はあると思われます。以前にはダンジョンの同時滞在冒険者数。というのもありましたし。」

「ふむ。」


「それで、『猫啼温泉』の攻略方法ですが、情報が不足しているため相手の人数も不明です。海賊は1匹見たら10匹居ると言いますから、少なくとも数百人は居ると想定すべきでしょう。ですが、食料生産ダンジョンでも無い限り数千人ということは無いでしょう。」

「このダンジョンも、ある意味では食料生産ダンジョンだな。」

「日光を使っているので、そこらの食料生産ダンジョンと比べ、だいぶ効率は良くなりますけどね。ダンジョンエネルギーで食料を生産しているダンジョン、例えば(ふさ)の東端にある飯沼(いいぬま)の場合、かなりの頻度で遭難者が出ていますし、千人前後の犠牲者が出たことが、約450年前と約150年前、少なくとも2回はあります。」

「死者の数だけなら、このダンジョンの方が多くないか。」

「規模が全然違いますからね。ただ、あまりに大規模な食料生産ダンジョンは、万が一崩壊したときに飢餓を引き起こしますから、責任重大です。」

「このダンジョンがコケたら数十万人が路頭に迷い、関八州で飢饉が起こるか。」


「話を戻しますが、ダンジョンと言うのは本質的に守りに特化しており、外征は苦手ですが制圧は困難となります。」

「特に軍勢による力押しは極めて困難。だろ。」

「その辺はダンジョンによりますね。そもそも知性の無いダンジョンはワンパターン……王八蛋(ワンバダン)では無いですよ。一定の本能的行動しか出来ませんが、ダンジョンマスターが居ると攻略難易度は跳ね上がります。とはいえ、通常はダンジョンによって出来ることはかなり制約されますから、そこをきちんと理解し対策することで糸口が見えてきます。」

「このダンジョンは、ほとんど『何でも有り』だが。」

「図書館であって図書館では無い。という特殊例ですからね。マスターが英語きちんと読んでチュートリアルを進めていれば、たぶん普通の図書館だったと思います。ただ、本物の図書館が、本を燃料にして冒険者を呼ぶ。なんてことは出来なかったと思います。司書では無いわたしには『図書館の自由に関する宣言』など関係ありませんし、秘書というのも設定上の経歴が『政策担当秘書』の資格があると言うだけですから。」


「それで、温泉ダンジョンと言っても、入山(イリヤマ)クニ(六合)さんの穴地獄なら、高温の酸や有毒ガスがありますが、異世界の猫啼温泉はラドン鉱泉ですから、この世界でも同様でしょう。もちろんラドンは肺癌の最大の原因ですが(異世界は電化が進み大気汚染は少ない)、ラドンは元からそこら中にあり、ラドン鉱泉程度では危険性に有意な差はありません。温泉そのものに危険性は無いと思われます。」

「なら、ウサギ(USA G.I.)で制圧できないか。」

「ダンジョンの中で日本駄右衛門一味を倒すと、ダンジョンを強化してしまいます。つまり影響圏から引きずり出して捕まえないといけません。その上で手練れの冒険者を送り込み、ダンジョンコアを破壊します。ダンジョンモンスターを倒すのなら、ダンジョンのエネルギーは減る一方ですから。」

「つまり、ダンジョンがモンスター以外の防衛戦力を持つという厄介な相手だな。どうやっておびき出すか。」

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