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348:群馬鉄山ダンジョン(実習編)

【毛の国・穴地獄】


 騎士団は元山の町でゆっくり休養中。併せて、信用できる図書館都市ダンジョンの住民達が鉄鉱石の採掘準備を始めている。

「それでは今日はクニさんに、ダンジョンコア防衛のための層群、第六層群を作ってもらいます。最初ですし、しばらくは騎士団も居ますから、失敗を恐れず作ってみて下さい。ただ、遠隔操作と違って直接ダンジョンに手を加えるため、ダンジョンエネルギー、つまりダンジョンの持つ余裕の力の枯渇には十分注意して下さいね。ダンジョンの感覚として余裕がある範囲で進めて下さい。」

「はい。え~と、外から容易に侵入されたら困るから、完全に地下に埋めて……。」

「良い発想ですね。逆に成層圏より高い場所なら飛行生物も到達出来ませんが、このダンジョンでは無理ですからね。」

「入り口を思いっきり狭くして……確か通路は『通行可能』でないといけないけど、私が通ることが出来れば大丈夫ですね。」

「ダンジョンマスター及び全ての名前付き(ネームド)モンスターがコアまで到達可能なこと。ですから、モンスターが居ない以上、クニさんが通ることができれば大丈夫です。」

 つまり、部外者立ち入り禁止の固有法則は有り。施錠して名前付き(ネームド)モンスターに合鍵を持たせても良い。ちなみに、コアに触れることが出来る必要は無いので、コアを世界樹に埋めてしまうのも可。なお、名前有り一般(ネームドモブ)モンスターは別に中枢部に入る資格が無くても良い。

「それなら、入り口の幅を1尺ほどにして、酸で満たします。」

 人間のみならず、ほとんどの知的生命体は通ることが出来ない。

「そうすると侵入可能なのは蛇と一部の餓鬼くらいでしょうか。イタチ獣人も細いですし猫獣人は狭い場所でも頭が通れば入ることができますが酸には耐えられないでしょう。」


「内部は洞窟にして、火山の空気を充填し、床には高温の酸を流します。私が通行できるので問題は無いはずです。もちろん明かりは付けません。さらに落とし穴を設置します。」

「現時点では、ほぼ鉄壁ですね。クニさんの特長を生かした、良いダンジョンと思います。酸に強く小柄な餓鬼がこっそり侵入するか、多人数の攻略部隊が外から新鮮な空気を送り込みつつ攻略するなら別ですが、後者の場合は騎士団が対処します。」


「そして、一番奥に鉄の塊を置き、本物のコアは元山の神社の中に隠して鍵を掛け、私が巫女に化けて(仮装)社務所に住んで見張ります。」

「……え?」

 想定外の発想に一瞬固まるマリー。

「怪物を召喚出来ないので、もし酸も暗闇も平気な相手に侵入されたら対処できません。神社なら、マリーさ……んの騎士団の人がすぐに駆けつけることが出来ます。また、私がコアに到達可能なら問題無いので、コアは物理的に元山から切り離した独立の小さな『層群』に置き『層群間エレベーター』を設置し、その入り口は鍵を掛けておきます。」

「あ~、その発想はありませんでした。つまり、侵入者は散々洞窟を這い回った挙げ句に徒労という訳ですね。さらに『部外者立ち入り禁止』の固有法則が無くても、通路を層群間エレベーターで物理的に塞いでおけばエレベーターを動かさない限り出入り出来ないということですか。」

 異世界の法律では非常階段も必要だが、ダンジョンに建築基準法は適用されない。

「あの、マリーさ……ん、エレベーターの大きさって制限はあるのですか。」

「エネルギーが多く必要なだけで、特に無いとは思います。異世界には船を運搬可能なエレベーターもあります。」

「いえ、小さい方で。」

「一般には電気椅子(車椅子)対応の1m四方ですが、家庭用の最小は65cm角で高さ2mの1人乗り、あ~2尺四方で高さ6尺半くらいですね。その大きさですから、冒険者の一団を分断可能になります。また、人が乗らない物なら、図書館都市ダンジョンでは一番上の第三層群から一番下の第34層群まで自動搬送施設を設置し本を運んでいます。」

 クニ(六合)がメートル法を知っているはずも無いので、慌てて尺に換算するマリー。

「なら、いっそ大きさを1尺5寸(45cm)四方くらいにして、武器も持ち込めないようにするとか。」

「それ、棺桶ですか……。」

「あ~、コアまで行くことはありませんから、極端な話、それこそ棺桶でも良いですよね。いずれダンジョンが崩壊するときには、そのまま私のお墓に出来ます。」

 マリーは21世紀の火葬用の棺桶、クニはこの世界の土葬用の棺桶、木材が貴重なため直径50cm・高さ60cm程度しか無い物を連想しており、話は噛み合っていない。

寿陵(じゅりょう)なんて考えていませんでした。確かにダンジョンは永遠に続く訳ではありませんね。修羅が直接極楽往生出来るのかは分かりませんが。ただ、わたしは、まだ死ぬつもりはありません。」

 僧侶が動植物を供養したとき、それらが直接極楽往生するのか、一度人間に輪廻転生するのかは不明。


「第六層群の酸の湯は、高さの低い元山まで引いてきて温泉にすれば有効活用できます。私は穴地獄、第一層群ですか、そこをお風呂にしていますが、鉱山の人達には危険ですから。確か瓦斯とか言いましたか。」

 動物が入ると死ぬから穴地獄。異世界ではそんな温泉を源泉掛け流しにしたら下流の川が死ぬどころか護岸や橋脚の鉄やコンクリートまで溶けるため石灰で中和しているが、ここでは周辺は砂漠なので影響は無視出来る。なお、普通の修羅には入浴の習慣は無いが、それで不潔ということも無い。

「鉱山に温泉があると役に立ちますね。わたしは良いと思います。」

「ありがとうございます。ただ、やっぱり、洞窟の奥にコアを置かないのなら、入り口をもっと大きくして、ぎりぎり普通の人間の冒険者が通ることができる大きさにしたいと思います。物理的に無理なら冒険者は最初から諦めてしまいますが、可能なら入ってみる人が出るでしょう。」

「確かに、入ること自体が出来ないのなら挑戦もしませんね。」

「内部にも何カ所か狭い場所を作ったり、斜め下方向へ行き止まりの穴を用意したり……。偽のコアの秘密を知られていないなら、十分に感情を採集してから生還させるのも良いでしょう。」

(わたし、最初からコアルームが固有法則で部外者立入禁止でしたから、そんなことは考えたこともありませんでした。)

 大規模人間牧場で何十万人も住んでいる図書館都市ダンジョンならともかく、規模が限られ収入も多くは無い穴地獄にとって、少数の冒険者と言えども疎かには出来ない。


 なお、この世界には通路が狭いなど様々な理由で一般の冒険者は物理的にコアまで到達できないダンジョンはいくつかある。そういうダンジョンは正攻法では攻略困難となるが、別に攻略自体が不可能というわけでは無い。

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