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345/552

345:穴地獄のダンジョンマスター?

【毛の国・穴地獄】


「あの……。」

「ぎょえ!」

 いきなり誰かに声を掛けられ、右馬太夫たちは奇声を発する。

 身長四尺半(140cm)程度の少し小さい(なお、この世界の人間は決して身長は高くは無いが、さすがに江戸時代よりは高い)少女。ただ、腰まである長い髪は鮮やかな蛍光色の緑色で、体格も人間より細い。服装は和服に袴という20世紀初めの女学生みたいなもので、右馬太夫たちにとって見慣れないが異様とまでは行かない。

「ここのダンジョンマスターか?」

 右馬太夫が聞く。

「男女ん升? いえ、私は入山(イリヤマ)クニ(六合)です。」

 少女? は答える。名前は六合だが、毎日酒を六合呑んでいるためか、他の理由か。ただ、口頭だったので右馬太夫たちには漢字は分からない。

「名字持ちかよ……。」

 ぼそっと左衛門太郎が言う。

「あ~、それで、俺達……いえ、手前どもは、この、ダンジョン、で良かったかな、石をいくつか持って帰るのが仕事だ……です。」

 ここへ来た理由を説明する右馬太夫。相手は偉い人か何かと思われ、緊張のせいか、かなり口調がおかしい。

「石ですかぁ。冒険者さんって、石で良いのですね。ずっと誰も来ないし、何か宝物を用意しないと寄ってこないのかと思っていました。でも、私に用意出来る物は何も無くて。」

「このあたりは危険な地域として知られているし、街道を外れて迷い込まない限りはあんまり人は来ないんじゃないか。俺達も、依頼があり、この近くまで転送陣があるから来たけど、安中や原町から30里も40里も山道を歩く気にはならないし。あと、冒険者はただの石には興味は無いけど、鉱石なら欲しがる人……修羅か。が居る。俺達は鉄が手に入らないか調べるために来た。」

 ポンコツ化した右馬太夫に代わり、左衛門太郎が続ける。

「鉄ですか。鉄は無いです。ここには水とコケと石だけ。水もほとんどの生き物には毒だから触れない方が良い。私は平気だけど。」

(鉄は無いか。毒水が平気なんて、明らかに普通では無いな。やはりダンジョンマスターか。え~と、この場合の最適解は……。)

 左衛門太郎は必死に考える。

「鉄が無いなら、図書頭(ずしょのかみ)様にそう報告するけど、冒険者を呼ぶ方は役に立てそうに無い。」

 と、右馬太夫。

「え~と、冒険者で無くても、誰かが居てくれるだけで良くて。ここには誰も居ないから。そして、最期に死んでくれたらもっと良い。かな?」

「死ぬのは勘弁してくれ。」

 期せずして3人の声が揃う。


「ダンジョンなら、というか、こういう場所をダンジョンと言うんだけど、別に寿命で誰かが死ねば良いはずで、もし必要なら図書頭(ずしょのかみ)様に話し相手になる暇で寿命が近いご老人でも居ないか頼んでみる。」

 もし図書頭(マリー)様に断られたら嘘つきになるから、二度とこの付近に近寄ったらダメかもな。と思いながら左衛門太郎は言う。

「あの、厨子の神様って、どなたでしょうか。」

図書頭(ずしょのかみ)。様。別に神様では無く、このあたり、関八州で最大のダンジョンの領主様だ。なんと俺達は図書頭(ずしょのかみ)様に御目見(おめみえ)できる。」

 自慢げに言う右馬太夫。冒険者なんて多くは無宿人同然の扱いで、領主御目見(おめみえ)は異例だが、ぶっちゃけると既得権で、図書館都市ダンジョンが小さい頃から出入りしていた。というだけ。

「何なら、お嬢さんも図書館都市ダンジョンに行ってみたら良い。」

 兵衞次郎が続ける。

「私は、ここから出ることは出来ません。」

「……そうか。俺達は図書頭(ずしょのかみ)様に指示を仰ぎに行く。あの方なら良いように取り計らってくれるはずだ。」

 そう言って、右馬太夫たちは帰路に就く。別に誰かに襲われたりもせず無事帰還。

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