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342:左遷城ヘの舗装道路

【ダンジョン影響圏北東・左遷城近く】


 転圧した砂利道の上にコンクリートが厚さ30cm余り流し込まれてゆく。ダンジョン影響圏の縁、つまり那須塩原の影になり影響圏が拡張できない部分から左遷城の西門まで、長さ26kmの舗装工事が始まる。

挿絵(By みてみん)

「いよいよ、ニポン・ダーモンが来るか。」

 ウサギ(USA G.I.)のアンディーが担いだ小銃を触りながら言う。今回用意された装甲トラクターはこの世界の火縄銃では破壊できないため、移動要塞として期待されている。ただし、速度・航続距離とも劣る豆戦車であり、戦車としての活躍は困難。逃げる海賊には自爆ドローンを叩き込むしか無い。

「日本駄右衛門が来ない方が良いのですが。とはいえ、今回か、今後の延伸工事か、いずれは衝突は避けられないでしょう。」

 舗装工事を指揮しながら答えるプリムラ・レイニー・横瀬さくら。名前は桜だが桜修羅では無いので、どこぞから苦情が来そうだ。

「まだまだ延ばす予定か。」

「左遷城から北の石川郡方面へ将来的には20里くらいは延ばす予定です。あまり遠方だとサイタマイルタワーからの電波が届かなくなり、自動車の自動運転が出来なくなるので、計画はそこまでです。」

 異世界の運転免許には、手動運転も可能なマニュアル(手動運転)免許と自動運転しか出来ないオートマ(自動運転)免許がある。また、タクシーのように管制室に二種免許を持った運転手が居て異常時は遠隔操作する場合、乗客に運転免許は要らない。オートマ(自動運転)免許ならお金さえ払えば誰でも取得できるが、マニュアル(手動運転)免許には教習や試験があり一定の能力が必要。

 この世界で無免許運転をしても異世界から警察は来ないが、危険なことには違いは無いので、手動運転は前提としていない。

「50マイルか。」

「北には捨猫和泉(すてねこいずみ)という温泉ダンジョンがあるとの噂なので、橋梁用の鉄筋を作るだけの鉄が手に入れば、次はその付近までの予定です。」

 猫の名前が和泉では無く、捨てた飼い主が和泉式部。



【第三層群屋上庭園】


「まずは、最低限のセメントは確保。ダンジョンエネルギーを無駄に使うのは困りものですが。」

 ロスマリヌス・オフィキナリス・紫蘇図書頭(ずしょのかみ)・マリーは、カメラから電波塔経由で中継される映像を見ながら言う。ダンジョン影響圏外なので、ダンジョンの機能で見ることは出来ない。

「次は鉄かな。」

「マスター、砂鉄の回収ではダンジョンエネルギーの消費量が多く、『岩山の廃墟』のような崩壊した施設型ダンジョンからの回収は量が乏しく、鉱山は見つかっていません。」

「鉄骨造りの学校体育館を召喚して解体。というのも無駄が多いからな。」

「小学校の体育館だけ解体して再度召喚。というのは、かなり無駄なことをしていますからね。まだ砂鉄を集める方がましです。なお、日本で鉄鉱山といえば釜石ですが、この世界に存在するとしても、遠方で遠すぎます。」

「鉄は、まだ力業で砂鉄という方法があるけど、金だと鉱石の含有量も少ないから、ダンジョンエネルギー的に砂金集めは難しいな。」

「鉱石1tに数gですからね。この世界のサド金山は異世界の佐渡金山とは金の入手方法が全く違いますが。」

 佐渡金山の産出量は累計80t程度。一方、犠牲になった奴隷や囚人や労働者の数が『人を食う山』ポトシ銀山と同数ならば800万人。つまり生産効率は1人10gと、この世界のサド金山以下(奴隷の半分、報酬として小判1枚を貰う一般人と同程度)。しかもダンジョンのサド金山は命までは取らない。


「まずは、大量に使う石灰石と鉄から確保するか。」

「ただ、鉄などはおそらく希少でしょうし、存在するならダンジョンを飼い慣らしたいとは思いますが……。この付近で可能性があるとすれば、(こし)の赤谷か、()の群馬か。でも鉱山は餓鬼の領分というのが難問です。」

「餓鬼ではなぁ。マリーさんと上手くやれそうに無い。」

「マスター不在のダンジョンならば、餓鬼では無い交渉可能な誰かをダンジョンマスターにする。なんて可能なのでしょうか。一般的な洞窟型ダンジョンって、最初はコアも何も無い洞窟なのですよね。それに何らかの原因でコアが生成され、そのうちダンジョンマスターが発生する。という経緯のようですが。」

「このダンジョンとは違うな。」

「施設型ダンジョンは違うようですね。例えば商都梅田は、200年か300年ほど昔、()の国の国府に近い場所に、突然木造レンガ張りの2階建て建物が発生したと伝えられています。その後、30~40年ごとに建物が移動したり変形したりして大きくなり、いつのまにか地下に数層群増えたそうです。ただ、人間牧場には寿命があるので300年は経っていないと思いますが。」

「層群を増やしていくだけでは無く、層群自体が成長しているのか。」

「そのようですね。このダンジョンでは、異世界で図書館自体が建て替えられた場合、前の建物と新しい建物は別々の層群として複製召喚されます。おそらく図書館の組織では無く『建物』が基本単位なのでしょう。一方、商都梅田は『駅』が単位で、駅舎が建て替わっても別の鉄道会社の駅が出来ても、同じ層群なのでしょうね。」

「建物が単位で、運営組織を考慮していないので職員は複製召喚されないのか。」

「でも、図書館を職員ごと複製召喚していたら、たぶん初期に食料用のダンジョンエネルギーが足りずに崩壊していました。……そのようにして滅びた工場ダンジョンでもあるなら機械が入手できるかもしれませんね。」

 人間とは倫理観が異なるためか、死体漁りにまったく抵抗のないマリー。植物にとっては死体など肥料に過ぎない。


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