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340:山塞コンクリート・偽造コンクリート

 炭化水素燃料の重量エネルギー密度(12.7kWh/kg)は電池(1.0~1.2kWh/kg)の10倍。効率が半分とはいえ同じ重さで航続距離は5倍になる。電池は重い上に半導体の塊なので単価が高く、やたらと積むことは出来ない。

 電気自動車は20世紀初めには広く普及していたが、当時の電池性能の限界と内燃機関の発展により駆逐される。その後、性能(重量エネルギー密度)が今の半導体電池の半分程度とはいえ「それなり」の全固体リチウム電池が実用化されることで、短距離用に使用される。特に都市内で近距離使う用途には、排気ガスが出ないなど利点が大きく、公用車にも多い。



【第三層群屋上庭園】


 高さ100kmを越える宇宙へ届く塔。漆黒の空には昼でも星が見えるが、ダンジョンの機能により居住可能な環境が保たれている。

「ダンジョン影響圏内ならダンジョンの機能で砂を固めることで、ダムでも道路でも自由に作成可能ですが、影響圏外ではこれらは使用できません。」

「それで域外への道は砂利道にせざるを得ないと。」

「コンクリートがあれば良いのですが、この世界、どうやら天然の石灰石すら無さそうです。」

「ダンジョンにしか無いのでは。ということだったな。」

「コンクリートは砂利とモルタルで作られる。というのはマスターの専門領域とは思いますが。」

「砂利とセメント。だな。混和剤や水も使用するが。でも、マリーさん、コンクリートの使い方は知っているが、作ることは出来ないぞ。普通は生コンを買ってくるから。」

「セメントは結構複雑な組成の物質ですから、単純にダンジョン構造物として生成し、それを解除することでは得られません。もっと単純な物質である必要があります。」

「石灰石は炭酸カルシウムだけど、単純な組成では無いのか。それをセメントに加工するのは手に余るだろうが。」

「召喚したコンクリートのカルシウムから生成は可能です。効率は劣りますが。ですが、マスターが言うように石灰石からのセメント生産には1,450℃もの高温が必要で、普通の原子炉『あみだ(溶融塩冷却高速炉)』では冷却材(熔けた食塩と苦汁の混合物)が沸騰してしまいますから、特別な高温炉が必要になります。」

「そもそも原子炉自体が手に余るからな。」

「ダンジョンの備品にも分冊百科にも原子炉なんかありませんからね。」


「そこで、まず、硬化時間が長い、強度が低いという欠陥はあるものの、当面は入手が容易な山塞(ニセモノ)コンクリートを検討しました。」

山塞(ニセモノ)って……。」

「元々は、北京の中華帝国と南京の中華民国の国境あたりで量産されている模造品。という意味だったそうですが。それで、生石灰、酸化カルシウムは単純な組成の物質ですから、石灰石でも、効率は劣りますが召喚した図書館のコンクリートや大理石からでも、ダンジョンの機能で生産可能です。これに水を加えた消石灰、水酸化カルシウムや、火山灰や海水、ここでは岩塩水ですが、これらを混ぜて型枠に流し込み、砂利を投入することでコンクリートになります。いわば、ローマン・コンクリートのまがい物です。」

「それで、舗装道路を作ると。」

「いえ、文献によると年単位の養生が必要とのことで、レンガ造りの壁の内側に流し込んで強度を増す。という使い方には向いていますが、舗装道路には向きません。ローマでも街道は石畳でしたから、舗装道路には向かないのでしょう。」


「そのため、ダンジョンエネルギー的に無駄は多いですが、セメントの成分を個別に生産し混ぜ合わせた偽造コンクリートを使うのが良いでしょう。」

「偽造か。」

「セメントは、カルシウム・珪素・アウミニウム・鉄などの化合物が混合したものですから、成分を個別にダンジョンの機能で生成し、混ぜることで生産可能です。品質に関しては未知数ですが、想定される交通量程度なら大丈夫でしょう。」

「なにも東海道自動車道(フリーウェイ)みたいな交通量にはならないだろうからな。」

「将来的には、鍾乳洞ダンジョンから石灰岩を採掘して、原子炉の熱で焼いて生産したいと思います。何年必要になるか分かりませんが。幸い、この世界は基本の自然法則自体は異世界と同じと思われるので、異世界で上手く行った方法を微調整すれば良いでしょう。」

「試行錯誤は減らせると。」

「はい。原子炉の場合、いきなり実証炉の『あみだ』を作ればよく、原型炉の『ほうぞう』、断念された高速増殖炉や新型転換炉の原型炉は不要と思われます。ただ、燃料のトリウムが入手可能か。というのが最大の問題ですが。」

「錬金術は使えないから、この世界か異世界に元素自体は必要だからな。」

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