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034:富国強兵では破綻し、貧国弱兵には目立ちすぎる

【コアルーム】


「生物の生存戦略は3つに分類されます。それが、競争戦略(Competition)・撹乱依存戦略(Ruderal)・ストレス耐性戦略(Stress)です。このバランスをC-S-R三角形と言います。」

 マリーが言う。

「ふむふむ。」

「競争戦略は、生産力を強化し、国力を増強させ、守るべきものが増えるため軍備を増強、強大な帝国を作る。

 撹乱依存戦略は、移り変わる時代や社会環境に応じ生業を変え、国家を持たず定住せずに生きる。

 ストレス耐性戦略は、環境が厳しい極地・砂漠・大洋島などで、過酷な生活に耐える。

 で、このダンジョン、砂漠で競争戦略、つまり富国強兵を行っている訳ですね。ラージャを呼んだのも、他のダンジョンを見つけたら征服するためです。」

「もし、富国強兵をしないなら?」

「逆に、貧国弱兵スローライフというのは、貧しさを受け入れ共に生きることで土地自体の価値を下げ、侵略を受けないようにする戦略で、地下資源などが無いなら有効な手です。不味いヒトデがそこらの海岸にウジャウジャ居ても、食べる動物はそんなには居ません。これ……、この世界の人には通じませんね。海がありませんし。」

「海賊より貧しい村は海賊に襲われない訳か。」

「細かい政治的な戦略となると、わたしよりラージャの方が詳しいでしょう。」

「私は、C-S-R三角形という言葉は知りませんが……『企業の社会的責任(CSR)』とは関係無さそうな……。それに、私も政治学を完璧に身につけている訳では無いです。ただ、土地が無尽蔵に余っていて人間も過剰なこの世界では、貧国弱兵は確かに有用な戦略となり得ると思います。」

「ラージャさん、戦争の原因が無ければ軍備も要らないのか。」

「戦争はだいたいが民族問題ですが、このダンジョンは周囲と民族は同じ。広大な砂漠なので領土に価値は無く、資源もダンジョン産の燃料程度。ただ、電気の価値はこの世界の人には理解不能でしょうが、水の供給能力が多ことが知られると狙われるリスクがあります。」

「つまり、基本的には貧国弱兵が正解と?」

「富国強兵の問題は、軍備が国力を食い潰すことと、他国の警戒感を生み、際限なき軍拡競争を引き越す危険があること。逆に貧国弱兵は立地によっては困難なこと。」

「立地によって?」

「非武装中立国は、小さな島国や欧州の小国など、侵略される危険性の低い国でしか維持出来ません。仮に大国の保護国であっても、もし資源があったり交通の要衝に位置するなら、自前の軍備も無いと大国すら守り切るのは困難です。」

「立地は隣町からでも砂漠を3日、知られている資源は紙程度か。」

「それに、見つかってもいないダンジョンを征服する計画を立てるのは『捕らぬ狸の皮算用』です。」


「仮に、貧国弱兵の非武装中立で行くとしても、海賊対策は必要だな。」

「『人間牧場』の特性による制約で、仮に貧国弱兵と言っても海賊も来ないほど貧しくする訳には行きませんからね。」

「マリーさん、人間牧場の制約って?」

「人間牧場は人間の強い感情をダンジョンのエネルギー源にしているため、ある程度豊かな生活をさせて、たまには祭りでもやって散財させて……と運営する方が効率的です。」

「確かに、つまらない人生では感情も乏しくなるか。」

「難民キャンプみたいな飼育小屋に押し込んで最低限の餌だけ与えていたら、得られる感情エネルギーが大幅に減ってしまいます。一方、アフリカなどの飢えた国々と飽食の日本を比べても、食事の量はせいぜい1.3倍程度しか違いません。」

「案外差は無いんだな。倍は違うと思っていた。」

「倍も食べたら住民の半分が豚になってしまいます。それはさておき、肥料と水の供給が同じ、つまり消費するダンジョンエネルギーが同じでも、意欲の無い奴隷より、自作農の方が作物をたくさん収穫出来ると思われます。この差が1.3倍以上なら、食糧の点でも住民の生活を切り詰める意味は全くありません。」


「住民にある程度の生活をさせるなら、貧国弱兵にも無理が出てくるか。」

「満足に食べさせるなら、砂漠では最重要資源である『水』を十分に供給する必要がありますし、水が有る限り狙われます。既にこのダンジョン、限定的とは言え水田を作っていますから、誰から見ても水があることは明白でしょう。」

「このダンジョン、私が思うに既に守るもの多すぎて貧国弱兵戦略を採るには手遅れかも。」

「富国強兵は際限ない軍拡で破綻する、貧国弱兵は人間牧場には向かない。マスター、詰んでいますか、これ。」

名前付き(ネームド)の最後の1枠でチンギス・カンの召喚でも試みて、いっそ入間も比企も何もかも征服してしまうか。」

「モンゴルとなると、コガネバナ(タツナミソウ属)が有名で、カキドオシ(カキドオシ属)もモンゴルに分布、ダンギク属やイブキジャコウソウ属にもモンゴル産は居ますが、召喚して征服者ではなく、関取が来たら困ります。」

「名前付きダンジョンモンスターの食事はダンジョンで召喚できるとはいえ、関取並に食べられたらその分エネルギーが必要だからな。」

海賊達は「海賊」と自称していますが海は無いので山賊です。単に「海賊はかっこよさそうだけど山賊って臭そう」みたいな単純な理由か、あるいは歴意志的意味が有るのか。海賊の他には略奪を働く武士団が脅威。

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